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赤い雫の誘惑  作者: 朝比奈 黎兎
第Ⅰ章
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腹ペコなんだよ

普通の高校生のお話……にしたかったはずが


気付けばファンタジータグが……

最初はちょっとわけわからないかもしれません。

 この現代、日本にいてこんなにも飢えた高校生はきっと、他にはいないだろう。


 もう何十年も俺、玖月優里は空腹に堪えながら生きてきた。

 別に拒食症でもないし、食欲がないわけでもない。大体、何十年も食欲がないのはもはや異常だろう。

 それでも、俺は他から普通に過ごしてるように見られるだろう。食べてないけど、倒れたり痩せたりはしてない。


 そういう体質なんだ。

 今日の昼ご飯のあんパンを食べながら、この堪えがたい空腹と密かに戦っている。









 おかしい。そう思われた人が多いはずだ。パンを食べているのに、なぜ空腹なのかと。

 言っておくけど、俺は底無しの胃袋は持ってない。食欲は平均だろう。では、何故か。


 答えは簡単。


「おい、パン屑零すなよ」

「ちびっとだから、大丈夫」

「ここ、俺の机だけど?」


 俺の後ろの席。そこは親友の席で、俺は椅子の背もたれをお腹の方にして昼ご飯を食べる。

 

 今日も元気そうだな。


「何見てんの?」

「ん〜、啓太の美味しそうだなって」

「今日は時間なかったから、冷食しか入ってないけど?」


 親友こと、速水啓太は一人暮らしをしてて昼ご飯は毎回自分で弁当を作ってきてる。運動できて勉強も平均以上だ。


「欲しいの?」

「くれるの?」

「パンあるだろ。これは俺の」


 ケチって言って口を尖らせたら、頭をガシガシ撫でられた。まぁ、本当はお弁当なんかいらないんだけど。欲しいものはもっと別のもの。欲しくて、それこそ本当にのどから手が出そうになるほど欲しいのに、俺は手に入れられてない。手に入れるのは多分それほど大変じゃないとは思うけど、俺が嫌なんだ。

 啓太に迷惑をかけるわけにも、巻き込むわけにもいかない。そんなことしたくない。


「おいおい!聞いたか!?」

「どうかした?文也」


 同じクラスの井上文也が何やら大声を出して、こっちに来た。まぁ、大きい声なのはこいつの通常装備だから仕方がない。きっとひそひそ話なんか無理だな。


「化学の日向先生産休だって!!」

「あ、やっぱりそうなんだ」


 あの先生、おなか大きかったもんな。そろそろかなって思ってた。そうか、化学はそんなにまじめに聞いてなくて、毎回耳を引っ張られたけど、それもなくなるのか。ちょっとさびしい。


「んじゃ、誰か変わりでくるのか?」


 弁当を食べて、机にふせってた啓太がきいた。珍しい。啓太は結構無関心なことが多くて、自分から何かを聞くとか、知りたいとか、関わりたいっていうのはないに等しいのに。俺も口をきけるようになるまで、本当に頑張った。

 日向先生以外にも化学の先生はいたから、そのうちの誰かが来るのかな。


「それがさ、新しく来るみたいだぜ?」

「え?うそ」

「何で嘘吐くんだよ。さっきその先生らしき人が職員室で話してるの見たし」

「客じゃねーの?」

「えー、でも白衣持ってたぞ?」

「じゃあ、その人の可能性高いかも。どんな人?」

「男だった。あと……優里ほどじゃないけど、きれいな髪の色してたな」


 きれいな、というよりは日本人離れした、だろう。もう何回も服装検査でひっかかり、そのたびに自毛だと言うのが嫌になる。そんな髪の色を俺もしてる。色は薄い金髪。自毛と言うのも嘘じゃない。


 嘘ばかりなのは、学園に出した書類。あれすべて偽りの情報で埋め尽くされてたりする。

 じゃなきゃ、この学校に入れなかったから。


「外人?」

「わかんね。染めてたのかも」

「……」

「優里?どうかしたのか?」

「……え?あ、ううん、先生次第じゃ聞く気になれないかもなーって」

「お前、それいつもだろ」

「そんなことないー」


 危ない。考えに耽ってたら周りが見えなくなった。


 その時、俺は気づくべきだった。少しでも気にするべきだった。


 新たな化学の先生が、この平穏な毎日を崩壊させる元凶なのだと。



「あ……数学の宿題忘れた。啓太〜」

「こってり叱られろ」

「ケチ」



 こってりどころか、みっちり叱られたよ。あー、お腹すいた!!!

今度のお話もよろしくお願いします。


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