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6日目 スライム

表示の仕方とか忘れてるから何回も前の部分を見ながらっていうのはなかなかきつい。


俺は今、非常に自分の軽率さに後悔している。

兎に角、情報が必要だ! とばかりに、新月町目指して、《鈴のなる木》を飛び出したは良いものの、新月町までの道程を全く考えていなかった。

《GOD HEAVEN》での、《クラインヴァルト》の首都から《月の帝国》との国境までの距離は廃人プレイヤーだった俺がモンスターを瞬殺しつつ走ってだいたい六時間。国境から新月町まで一時間。ゲームの世界と考えたらなかなかの距離である。それだって、主要な町には転移ポータルがあり、転移石なんていうちょっとお高い便利品もあったので、数時間掛けて突っ走るなんて事は余程の馬鹿でない限りしないが。

しかし、今の俺はなんてったってLv.2。道行く魔物を前のようにばっさばっさ倒しながら、突っ走るなんて到底無理。その上、足の速さだってLv.2相当である。

そして、ゲーム時代と距離関係が同じだなんて誰が言った? 現実の国として考えた場合、国のど真ん中にある首都から隣国の一番近い町まで、走って数時間の距離しか離れていない訳がなかった。


朝に出れば、歩きでも夜には着くだろ。


そういう風に考えていた時期が俺にもありました。


「着かねえええええ!」


つか、此処何処だよ!


途方に暮れる俺の頭上では、確かにこの世界が異世界である事を証明するかのように二つの月が瞬いていた。



初めに可笑しいと感じたのは出発して、僅か一時間半の事。


幸か不幸か、魔物には未だ遭遇していない。

俺のゲーム知識的には、そろそろ湖が見えてくる頃……の筈だった。その湖で一回目の休憩を取るつもりだったのだ。

しかし、歩いても歩いても何故か湖は見えない。道を間違えたかとも考えたが、間違えたら間違えたなりに何かしら見えてくる筈だった。ゲーム世界と同じならばだが。

本来ならば、マップ機能というものが《GOD HEAVEN》にはある。フレンドリストやヘルプと同じ様にメニュー欄にあり、自分の所在地を赤点で表示してくれるという便利(迷子防止)機能である。だが、当然の如く『表示出来ません』となっており、使えなかった。この世界が現実ならば当然といえば当然である。一体何で居場所を特定するというのか。まさか人工衛星で捕捉するという訳にも、この剣と魔法のファンタジー世界じゃ、いかないだろうし。


長々と話していたが、結局何が言いたいかというと……


迷った。


いや、まだ迷ってはいない。湖まで距離がまだあるだけだ、きっとそうだ! そうに決まってる! 

……人はそれを迷ったという……。


仕方が無いのでそこらの木の下に座り込んで、一度休憩ということにした。

迷って途方に暮れたという訳ではない、断じてない。ただ少し休憩を取るべきだから取るだけである!


「はぁー、疲れたー……」


予想以上に体力を使う。歩いただけでコレか。

ゲーム世界では一応スタミナという隠しステータスがあったが、バーチャルであるが為に身体的疲労は余りなかった。《GOD HEAVEN》においてのスタミナは、数値的に疲労が溜まっていき、溜まりきると動けなくなるというものだ。スタミナポーションや食事を取ったり、座ることによって、回復出来た。

しかし、此処は現実。ゲームの世界と同じ様に、数値で疲労が溜まりこそすれ、自身は全く疲れずに動き続けれる、なんて事はない。

しかし、疲れた。最近はレベルが高過ぎてスタミナが切れるなんて事はなかったし、そもそも生産活動も多かったから常時動き続けるということもあまり無かったから分からないのだ。Lv.2のスタミナ量だとこんなものかもしれない。スタミナポーションもレイナから貰ってくれば良かった。何故、普通のポーションとMPポーションしか貰ってこなかったし!


因みに今の手持ちはこんな感じ。


―――――


アイテムボックス


緑のポーション×10

緑のMPポーション×10

弁当

新鮮な水

転移石

鉄の鍋

鉄の包丁

石の矢×100


―――――


荷物は、全てアイテムボックスに放り込みました。

守護石だけは身に付けてるけどな。レイナにペンダントにして貰って首から下げてるんだ。

……え? 荷物が少なすぎる?

……レイナがこれしかくれなかったんだよおおおお!

後は、自分で何とかしろってさ。

それでも、ポーションやら料理道具やらはレイナのお手製だし。ちょっとお高い転移石くれたし。感謝はしているんだぜ。

因みに、転移石は自分で行ったことのある町にしかいけないので、転移石で新月町までひとっ飛びという訳にはいかない。ゲーム時代には新月町にも行った筈なんだけど、使えなかった。だから、一度は自力で行くしかない訳だ。

そして、装備は俺のレベルが低すぎて、作ってもらえなかった。流石に矢は作って貰ったけど! 一番弱い木の矢よりは強いけど、一般的な鉄の矢よりは弱いという石の矢だけど! 今の俺の弓じゃ鉄の矢だと耐えられないからだけど! 弱すぎるだろ、初期装備! 弱すぎるだろ、初期装備! 大事な事なので――



「ぷるぷる」


ひょこっと顔を出したのは青みがかった緑色のジュレ状のナニカ。だらしない恰好で座ってる俺を取り込もうとしているナニカ。


どう見ても、初心者御用達モンスターのスライムですね!


「うわっちょっ」


慌てて立ち上がって振り払う。


俺を食おうとするな!


そして、《GOD HEAVEN》のスライムは、どっかの有名RPGのような可愛らしい見た目ではない奴だから、かなり気色が悪い。


こんな至近距離まで近付かれて、気が付かないとか大丈夫か俺!

長距離武器の弓とかこの距離が使えなすぎるだろ!

仕方無いので、灰色狼と戦った時と同じ様に短剣を構える。魔法のレベルも上げなくてはだけど、取り敢えず今は短剣だ。


「さあ、来い!」


スライムはぷるぷる揺れている。

動く気配がない。


って、来ないのかよ!

なら、こちらから行くまで!


近付いて、スライムの急所である核に短剣を突き刺そうとした瞬間、スライムが右にズレた。


スライムが避けた!?スライムって、避けんの!?


どうでもいい事に気を取られていた俺に、体当たりを食らわそうとするスライム。明らかに、当たったらべちゃあってくっつかれて取り込まれるような攻撃である。下手したらR18のような格好になってしまうような危険性のある攻撃である。それは困る。それ以前に、スライム相手に死ぬとか嫌すぎる。


という訳で、体当たりが当たる前に今度こそ急所である核を短剣でサクッと突き刺す事によって、一撃死させる。そのせいで、俺の代わりに地面がべちゃあとなったが。


灰色狼に襲われた時よりも、かなり冷静に倒すことが出来た。怖さよりも気持ち悪さが上回っただけかもしれない。


――スライムゼリーを取得しました――


機械的なアナウンスが流れた。

今回はレベルは上がらなかったか……って、いやいや、だからどうやってアイテム取得してんだよ!


コレが現実とは、やっぱりふざけてる。


スライム回でした。スライム要素なんてちょっとしかないけれどスライム回でした。


次の回で町に着かねえ!って言っているとこまで行きたいね。


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