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第四ヤンデレ タイプ(ツンデレ) 後編

 あれ…おかしいな…早く書くって言ったのが何でこんなに遅くなってんの?何で…前編より長くなってんの…そしとコレR-15で大丈夫?


 まぁ、始まります。

 俺は、考える。脱出するのにまず、問題点は三つ、まず手足の自由がきかない事、先程、試しにゆっくりと這うように部屋の中を歩いて見たのだが、部屋の中央あたりで鎖の限界が来て行動不能。扉やチェストからは今だに1m以上離れている。つまりは何とかして鎖や手錠を解除しないかぎり脱出は確実に不可能。

 次に、第二の問題はドアには鍵がかけられており、その鍵を志波が持っている事だ。しかも見た所、こちら側のドアノブには鍵穴が無い。つまりは志波が鍵を開けないかぎり、たとえ鎖の解除が出来たとしても脱出不能。徒労に終わってしまう。

 そして、最大の問題がどうやって、助けを求めるかだ。

奇跡的な事が起きて志波から鍵を奪う事が出来たとしても果たして、そのまま脱出する事が出来るかどうかも分からない。あらかじめ俺が脱出する事を志波が想定して病院内にトラップを仕掛けている可能性も十二分にあるし、そもそも、この病院が何処にあるのかも良く分からないのだ。最悪の場合。外が山中で、脱出に成功したのにもかかわらず、そのまま遭難してしまう事も考えられるのだ。この事から考えて、無策でどうなっているかは全くの理解不能な外に出るのは危険な賭けに他ならない。と、言ってもこれと言った解決策も無い。


 ……ああ、まずいまた完全に八方塞がりだ。



 俺は数時間前から幾度と無く様々な脱出方法を練っていたが、先程、俺が言った三つの問題がどうしても解決する事が出来ず、俺の脳内シュミレートではもうすでに20回は志波に捕まっていた。

「クソッいくら何でも状況が俺に不利すぎる……。まるで有効な対策法が浮かんで来ないとは……。」

 俺はそう毒づき、コンクリートの床で横になる。

 やはり俺の考え方では、さっきから自分自身にトドメを刺すような暗い考えしか浮かんで来ない。ああ、今となると田上の能天気で奇抜な考えが(田上本人が聞いたら激怒しそうだが)欲しい物だ。あと、牡丹ちゃんにも相談して柔らかで、ほんのりとしたアイディアを聞いて見たい。

 あぁ、とにかくあの二人に会いたいな。

 俺が、そう考えていた時だった。


「お待たせ渡。食事の時間よ。」


 ドアが開かれ、鍋や食器をカートに乗せた志波が現れた。

「ごめんね遅くなっちゃって、でも沢山作ったから全部残さずたべるのよ?」

 志波は、そう言いながら鍋の中身、おそらくはホワイトシチューを皿によそう。そして、そのシチューを木のスプーンですくい、息を吹き掛けて軽く冷まして俺の口元に持ってくる。

「はい、渡、あ~ん。」

「………あ~ん……。」

 俺はコンマ一秒だけ悩み、志波に大人しく従う事にした。シチューは非常にまろやかな味わいで、口あたりがさっぱりとしており、それでいて深みがあり市販のルーなどを使っていない事が分かった。

「ねぇ、渡。美味しい?」

「ああ…うまいよ。点数は付けられないな。何か隠し味があるのか?」

 しかし、しかし、やはりと言うべきかシチューからも『例の味。』水道水とはまた違う鉄錆び臭さがした。俺は半分分かっているのだが、あえて言葉を濁して聞いてみた。すると志波は薄く笑い、得意そうに

「あ、分かるの?そのホワイトシチューにはね。私の血とね、あとね、少し薬を混ぜてあるの。」

「薬って何の薬だ?」

 俺が、志波にそう尋ねると何故か志波は恥ずかしそうに頬を赤らめて

「ん、男の人が元気になる薬よ……だから渡。」



 もっと食べなさい。



 志波は、そう言って何かを言おうとして開いた口に再び木のスプーンを突っ込む。

「おい、待てし……。」

「うふふふ、ねぇ渡。美味しい?オイシイ?オイシイ?」

 志波は強制的に俺の口の中にホワイトシチューを突っ込んで来る。

 俺が、食べなければシチューで呼吸困難になりそうな勢いだったので、何とか志波が口にシチューを流し込んで来る度に急いで殆ど口で咀嚼せずに飲み込む。そうして口が空になった瞬間に再び志波がスプーンで俺の口にシチューを流し込む。と、気が付けばそんな悪循環を繰り返さぜるをえないようになっていた。

「ウフフフフフフ……、さすが渡ね…。私の料理をどんどん食べていってくれる…さぁ渡!もっと!もっと食べて…!食べなさい!」

 志波は、暗い目で叫ぶようにそう言うと、木のスプーンが焦れったくなったのか、鍋からダイレクトにシチューをプラスチックのお玉ですくい、そのまま俺の口に流し込んだ。

「グッ、カババババッ!」

 大量の液体が口の中に入り込み、ますます呼吸困難になり俺はむせ変える。しかし、それでも志波は手を止めようとはせず、ひたすらに俺の口の中にシチューを流し込み続ける。

「どうしたの渡、ペースが遅いわよ?ほら、鍋いっぱいに作ったんだから全部食べなさいよ!」

 そう言って、俺に鍋を見せる志波。鍋の中には、軽めに見ても七、八人前はありそうな大量のシチューが存在していた。

 俺は思わず額から、たらりと脂汗を流した。







 そして、それから数十分が過ぎて。

「うっ……ぐっ、あぁぁ…。」

 志波は一滴も残さず大量のシチューを俺の口の中に流し込み、俺はどうにかそれを食べきった。腹部が重い、胃袋が破裂するのかと思う程痛む。

 志波は、そうして激痛に喘ぐ俺を見て嬉しそうに、そして呟くように俺に言う。

「うん、ちゃんと全部食べてくれてありがとう、渡。ご褒美…あげなくちゃね……。」

 そして志波は俺に顔近づける。志波の暗い瞳がぐんぐん俺に迫り、生暖かい吐息が顔にかかる。


 そして


「ん……ちゅ……。」


「…ん……あっ……?。」


 志波は俺の唇にねちゃつくようなキスをしてきた。突然の事に思わず俺も小さく声を出してしまう。志波はそれが気に入ったのか目を細めて、腰を屈めてさらに深くキスをしてくる。そうやって完全に支配権を奪われた俺は何も抵抗する事が出来ず、気が付けば志波の舌が口内に侵入してきた。

「んんん……あぁっ……。」

 志波は一心不乱に俺の舌に自分の舌を絡み付かせ口内をかき回し、自分の唾液を俺に飲ませようとし、それと同時に音を立てて俺の唾液を全て飲み干そうとんとばらりに飲み込んでいた。


 そんな絡みが数十分程続き、満足したらしい志波はようやく俺から唇を離した。志波と俺の口からは唾液がツーっと糸を引き、一本の線を作っていた。志波は満足そうにそれを啜り取り。俺に微笑みかける

「あはっ……とっても良かったよ……渡。」

 そんな志波が俺はとてもいやらしく見え。それと同時に志波の言っていた薬の影響か、それとも自然になのか志波のキスをとても心地よく感じてしまい、脳が溶け出してしまったかのように身動き一つする事が出来なかった。

「ふふっ…私を助けてくれた時みたいにカッコイイ渡も素敵だけど…こんな渡も可愛くていいわね…。」

 志波は怪しげに笑い、指先でそっと俺の口元に残った唾液を拭き取った。


  その瞬間、

 

今まで静かだった部屋の中に一定のリズムを刻んだ音楽が流れ出した。


「チッ!」


 すると急に志波の表情が、さも鬱陶しそうな表情になり、若干イライラした様子で携帯をポケットから取り出し、乱暴に開いて電源を切った。そして再び急に表情を変え、今度は申し訳なそうな顔を俺に見せる。

「ごめんね渡。私、そろそろ家に帰らなくちゃいけないの。ほら、あんまり遅くなると両親に怪しまれちゃうじゃない?」 志波は、苦笑いのような微笑みをし、そして非常に名残惜しそうな顔をして立ち上がり、何回も振り返りながらドアへと歩いてゆき、ドアノブを回す。

 と、そこで何かを思い出したかのように立ち止まった。

「あ、そうそう渡。私が明日、来るまで退屈でしょう?」

 志波は、静かに俺を見ながら歩く向きを変えて部屋の隅のチェストへと歩いてゆき、一番上の引き出しを開いて、何かを取り出した。思わずその瞬間、俺の目が志波の手元に釘付けになる。何故なら今、志波がチェストから取り出して手に持っているのは。




 紛れもなく、俺の鞄だった。




「ほら、渡の鞄に入っていたこの本を読んで暇を紛らわしていればいいわよ。」

 志波は、どうやら俺の視線に気づいていないようで、微笑みかけながら俺の鞄のチャックを開き、中に入っていた文庫本(星 新一の『宇宙のネロ』)を取り出して、そのまま鞄を片手に持ったまま俺に近づき、そっと本を目の前の床に置いた。俺は、絶対に心の中の動揺を志波に見透かされ無いように、平静より僅かに沈んだ表情を装う。

「……………………。」

 そのまま、死んだような目で本を見つめていると見せかけて一瞬、ほんの一瞬だけ鞄の中を覗き込んだ。


 そして、その一瞬で俺は鞄の中に目当ての物を見つける。



 ―その瞬間―


 今まで手詰まっていた俺の頭の中に、ここからの脱出成功までのビジョンが見えてきた。



「……………………。」

 俺は、静かに手錠をされた手で床に這いつくばり、両手で本を開いて読書を始めた。志波は満足したようでドアを開けて部屋から出ていく。

 作戦はまとまった、決行は明日の夜だ。


 俺は天井の蛍光灯の光で読書をしつつ、静かに明日の脱出計画の確認をしていた。










「おはよ、渡。」


 コンクリートの床で眠っていた俺は学校の制服姿の志波に揺さぶられて目を覚ました。この部屋はコンクリート作りなのだが、部屋に暖房が良く効いているのか、今の季節は真冬だと言うのに殆ど寒さを感じない。そのせいか、読書をしているうちに眠ってしまったようだ。 俺が、起きたばかりで、はっきりしない頭の中を整理していると。


 ちゅっ


「あんたねぇ、私の前で、そんなにボーっとしていたらキスするわよ?」

「…もうしてるだろ。」

 志波にキスをされた。俺が静かにツッコミを入れると志波は、あははっと笑って。

「油断していた渡が悪いのよ。」

  と、人差し指で俺の頬を突ついてきた。

 それしから少しして、志波は俺の朝食のトーストを二枚ハムエッグ、トマトサラダ、牛乳を持ってきた。幸いな事に食事の量は、多すぎでも少なすぎでも無い一般的な量で、志波にあーんをされながら食べきった(牛乳は口移しだったが)

「んふふふ…じゃあ渡…さっそ、ん!」

 朝食を終えた後、志波はにやにやした笑いをしながら俺に近づく志波、俺はそんな志波の唇を俺はいきなり奪う。

「んっ……あああ……。」

 志波は一瞬驚愕して固まるが、すぐに蕩けた表情に変わり、俺に身を任せる。俺は、そんな志波にさらに深くキスをして、数秒程して唇を離した。

「……ふぁ……渡、短い…。」

「まだ、朝だからな。あっさりしていた方が良いだろう?」

 志波が若干、不満そうな顔をしていたが俺は、軽く志波に微笑んで説得をした。

「それは分かるけどさぁ……。」

 それでも納得していないようなのでさらに一言、囁くように耳元で付け加える。

「…激しいのは、夜、だろ…?。」

「っ…よっ、夜まで待っててあげてもいいわよ…!」

 俺が言った瞬間に志波は期待に満ちた顔をして俺を強く抱きしめて、弾けんばかりの笑顔のまま俺の昼食用の弁当を置いてスキップしながらドアを開いて部屋から出て行く。と、ドアが閉じる直前に志波が顔を除かせる。

「じゃあ私は学校に行ってくるから…帰ったら…楽しみにしてるわ…。」

 志波はそう言いながら再び獲物を狙う爬虫類のような目して、俺を見つめ、顔を引っ込めて静かにドアを閉めた。

 それからは特に何も変わった事は無く、読書をしつつ、空腹を感じたら志波が作った弁当(肉たっぷりの牛肉弁当。志波の血は入っていないようだが、明らかに牛肉とは違う肉や、志波のものとおぼしき髪の毛が入っていた。)を食べ、食べ終わると再び、静かに読書をする。そんな事を繰り返していると、いつの間にか時間が過ぎ、そして

「ふふ、渡。た・だ・いま。」

 気が付けば再びドアが開き、志波が入って来た。

「まったく今日は大変だったわよ。学校でやたらに田上の奴が聞いてくるのよ、『渡がどこにいったか知っているか。』、『何か心当たりが無いか。』ってね。私も最初は誤魔化していたんだけど、しつっこくてね。放課後まで粘られて帰るのが遅くなっちゃったわ。」

 志波は俺に近よりながら実に面倒臭そうに話す。気のせいか額には軽く青筋が浮き出ているように見えた。

「あいつ完全に私を疑ってるわよ、ったくぅ…。私と渡の事なんて分かっていないくせに生意気なのよ。腹立つ…。」

 志波は、そっと俺の手を握って俺を見つめた。その目には正気が宿っていないように見えた。

「私に意見しても良いのは渡だけなの。だから私は渡の言うことを何でも聞くわ。まぁ、その変わりに渡は私の言うことを聞いてもらうけどね…。」

 半ば脅迫するような志波の口調に俺は何も言わず、いや言う事が出来なかった。

 その後も志波は延々と俺に脳髄が溶けてしまいそう程、甘い言葉を俺に囁き続け、俺はひたすらに、その言葉に俺はただひたすら正確に相づちを打っていた。

 数十分程すると志波は満足気な顔をして、俺の頬に軽くキスをし夕食を作ると言って部屋から出ていく。そして小一時間が過ぎた頃、

「はーい渡、お待たせ。今日は中華料理だよ。」

 志波は、酢豚、八宝菜、青椒肉絲、天津飯、蟹玉、水餃子、山盛りの唐揚げ、麻婆豆腐、炒飯、中華春雨、焼豚、醤油ラーメン、杏仁豆腐と言った計12品もの中華料理をカートに乗せて持ってきた。(果たして、いかなる方法でこれだけの料理を小一時間程で作り上げたのだろうか?)

「はい渡。あ~ん♪」

 志波は蓮華で天津飯をすくい、当然のように俺の口元に持ってきた。

 俺も逆らっていても何の解決にもならないので大人しく口を開く。その瞬間、志波は躊躇なく俺の口に蓮華を俺の口に突っ込んだ。

「あはっ…やっぱり渡は最高ね。ほら、もっと食べて!」

 大人しく従う俺に志波は心から満たされた様子の笑顔を見せ、次々と蓮華で料理を救って俺の口に突っ込んで来た。

 その速度も初めは通常程度だったのだが途中から、志波が歓喜の奇声と共にテンションを上げると俺が食べなければ窒息死をしかねない程のスピードに変わった。

「グッ……ゴボッ…!…し、志波…す、全て…食べると誓おう……だから…蓮華を口に入れる速度をッ……。」

「あははははっ!渡ッ!まだだよ!まだまだまだまだまだあるよ!!全部残さずに食べて、食べろよ、食べなさい!!」

 俺は軽く窒息状態になりながら志波に懇願する。が、志波は全くスピードを緩めない。いや、そろどころか更にスピードが増した気がする。


 結局、俺は軽い火傷や呼吸困難に悩まされながら夕食を強制的に食べさせられる事になった。

 そうして俺は昨日と同じく胃袋が破裂しそうになりながらも(胃ガンの原因になるかもしれないな)夕飯を食べきると、志波が消化を楽にするため横たわっている俺に顔をグッと近づけた。その顔は期待で、にやけていた。

「うふふ、じゃあ渡……約束の激しいの…頼むわよ…。」

 そんな志波に対して俺は、

「……本当にしてほしいのなら手錠を外してくれ。大丈夫、今は外しても逃げはしない。」

 と、だけ告げる。すると志波は若干わざとらしく迷った表情をした。

「え~どうしようかな~?本当に逃げたり暴れたりしない?まぁ、そりゃあ、私は渡を信じて手錠を解いてあげたいけどねぇ。」

「俺は、お前に誓って決してお前が俺の手錠を外しても暴れたりはしない。だから、頼む志波。」

 俺が、だめ押しで志波の瞳を見つめながら言った。

「もう、仕方無いわねぇ。いいわよ、外してあげるわよ、手錠。でもね……でも、もしも渡が約束破ったりしたら…。」

 その瞬間、今まで身をくねらせて、ニヘラ~っとした笑みをしていた志波の顔が急激に変化する。

「コレで、渡を斬るから……。」

 睨み付けるように俺を見て、身体に隠し持っていたのであろう芝刈鎌を取り出して俺の首筋に添えた。

「…これ以上に無く、理解したよ。」

 志波の迫力に俺は多少、背筋に寒気が走りながらも志波に肯定の返事をした。

「んふふ~。じゃ・あ・♪」

 志波は、俺の返事を聞いた瞬間、再び表情を蕩けるような笑顔に変えて鎌を引っ込め、代わりにスカートのポケットから小さな鍵を取り出して、俺の手錠の鍵を取り外した。

「さぁ渡、約束通り手錠は外したわよ。いったい私に何をしてくれるの?」

 手錠を床に置き、スカートのポケットに鍵をしまって、志波は俺に微笑みかけた。

「こういうのは…どうだ?」

 俺は、解放された右手で志波の頬をそっと撫で、左腕で志波を抱き寄せた。

「わ、渡ぅ……♪」

 俺の行動に興奮したか、歓喜に満ちた表情をする志波。俺は、迷わずに志波の唇を奪い取り、強く抱きしめながら、さらに深くキスをした。

「ふわあぁっ……!わ、わたりゅ…いいよぉ…もっと、もっと激しく…♪」

 身を悶えて俺に懇願する志波。俺はそんな、志波の願いを聞いてやり、志波の口内に舌を侵入させた。

 と、それと同時に我慢が出来なくなったのか志波の舌が俺の舌に絡み付いて来た。俺はそれを受け入れ、志波と舌を絡ませあいつつ、志波の歯や歯茎を丁寧に舐め取っていった。

「んんっうっ!……あっ…あーっ♪」

 志波が堪らず蕩けきった表情になり、両足を小さく痙攣させ、完全に、完全にその体を俺に預けた。

 俺は、それを見て、舌を絡ませたまま、志波を静かに床に押し倒して、舌を引っ込め、キスを止めた。

「はぁ…はぁ…わ、渡?」

  荒く呼吸をして、不思議そうに見つめる志波。俺は、何も言わずに再び志波に顔を寄せ、色白なその顔をゆっくりと舐めとった。

「ひゃあああっ!わ、渡!渡!渡!最っ高っ!」

 志波は、もはや白目を剥きつつ軽く涙と涎を垂れ流していた。俺は、それを丁寧に指で拭き取り、再び志波を舐め始めた……










「わ、わ、わ、渡ぅ…最高だったよぅ… 。」

「それは光栄だな。」

 数分後、俺が志波の服の上半身から露出している肌を殆ど舐めとった頃に俺は『今日はここまで』で、志波を説得し自ら行動を止めた。

 今日の俺の行動に志波は十二分に満足したらしく、大人しく俺に従い、再び俺に手錠を付け、体に付いた唾液も拭き取らずに俺に垂れかかっていた。

 そのまま志波は数十分はブツブツと俺に愛の言葉を囁いていたが、多少ふらつきながらも、立ち上がり

「あ、明日もお願いするわ……。」

 と、かすれ声で呟き部屋から出ていった。それを確認した俺は五分程床に寝転び、志波が戻ってこない事を確認すると




 一本のヘアピンを口から吐き出した。



 俺は唾液にまみれたヘアピンを服で拭き取り、利き手を使い、早速手錠の解錠を始めた。

 既に察しているかもしれないがこのヘアピンは先程、俺が志波を舐め回していた時、志波の髪に顔を埋め、臭いを嗅ぐと同時に咄嗟に口で奪い取った物だ。

 俺は、そうして手に入れたヘアピンで苦戦しながら手錠を取り、続いて自由になった両手とヘアピンで足に絡み付く鎖を外した。この二つを取るのに三時間は消費してしまっただろう。

「…急がなければ…出来るだけスムーズに、素早くッ…!」

 俺は、自分にそう言い聞かせながら立ち上がる。一日ぶりに自力で立ったためか足がふらつき、立ちくらみが酷い、小さな地震でも発生しているかのように視界が揺れる。無理矢理それを精神で押さえつけて歩いて部屋の端、チェストの前までたどり着いた。

 俺は、おぼつかない手で引き出しの取っ手を握り、力いっぱい引っ張る。そして引き出しの中にある俺の鞄を取り出し、さらに鞄の中から昨日、志波が俺に本を渡す為に俺に鞄を近付けた時に偶然、運良く発見したものを取り出した。




 そう、それは



 俺の携帯電話だった。




 俺が昨日、志波が鞄を近付けた時に見えたのは薄暗い鞄の中で小さく光る数字。そう、閉じた俺の携帯電話の背に出ている時刻表示だった。


 その瞬間に俺は、俺の鞄の中に俺の携帯があること、携帯の電源が入ってる事。



 そして、昨日の志波の行動により、『この場所は携帯の電波が通じる』と、言う事が分かった。だからこそ、

 わざと志波の気を引く事で志波のヘアピンを拝借し、手錠と足の鎖を解除する、チェストから俺の携帯を取り戻す、そのまま携帯で助けを求める。

 と、言う作戦を思つき今、現在実行している。

 俺は出来るだけ焦らずに携帯電話を開いて、電力が十分に残っている事を確認してから記憶を頼りに一つの電話番号。今、俺の知る限りで最も頼りになって、自称、面倒事解決の天才。その人物から貰った名刺に書かれていた携帯の番号を入力した。


 番号は、合っていたようで相手は最初のベルが半分も鳴らない内に電話に出た。





『うーい。流 大和だ。』





 そう電話の相手は、牡丹ちゃんが起こした、あの事件の時、事件の一部始終を目撃していたのにもかかわらず、それを『面白い』と言ってのけ、直後、田上と牡丹ちゃんの望みを聞き、田上と俺、そして付き添いの牡丹ちゃんを病院に送る片手間にそれぞれの完全とも言えるアリバイを作りつつ、証拠の大半を破壊。本人曰く、よくある犯人不明の傷害事件にしたてあげた男、さらに本人曰く地球最強。そんな男、流大和に俺は電話をしていた。


 「時間がないので完結に用件だけ伝えます。」


『おうよ、おじさんに言ってみ?』









「監禁されてます。助けに来てください。」

『ん、分かった…。ちょっと待ってろ。』




 その瞬間に、流 大和は電話を切った。つまり、それは彼にとっては情報はそれで十二分なのだと言う事なのだろう。

 俺は携帯を閉じて上着の胸ポケットに突っ込んで、鞄をさらに探り、鞄の底敷きを取りだして床に投げる。


「出来れば使いたくは無いんだがな……。」

 やはり、そこには俺が仕込んでいたバタフライナイフが変わらず存在していた。異性に対して、こんな物騒な物を使用するのは心が痛むが、今の志波の様子は明らかに通常の精神状態では無いように思え、それと同時に俺自身の身の危険を感じる。ならば武装は避ける事は出来ない。と、言うことだ。

 俺が、そう脳内で考えをまとめ、利き手でバタフライナイフを取った瞬間、







 急激、余りにも急激な殺気と悪寒が俺の背中を駆け抜け、










「渡。どこにいくの?」






 全く、気配を感じさせずに部屋に侵入し、俺の背後に回っていた。志波が鎌を振りかざし俺に斬りかかって来た。





「…!…っ!!」

 俺は、その一撃を何とか掴んだバタフライナイフでガードした。鈍い音がコンクリートに響き、手の平に凄まじい衝撃がかかる。

「ねぇ渡、どこ行くの?

 ねぇ渡、何で鎖を外してるの?

 ねぇ渡、渡も私が好きじゃ無かったの?

 ねぇ渡、それならどうして私を裏切ったの?

 ねぇ渡、何で私の鎌を止めたの?

 ねぇ渡、答えてよ答えてよ答えてよ答えてよ答えてよ答えてよ答えなさいよ答えてよ答えてよ答えなさいよ答えろよ!」

 志波は脅迫するように俺に言いつつ、再び鎌を振りかざし第二撃を放つ。不味い、鎌のスピードが早すぎる。

 俺は半ば、直感でサイドステップをし、鎌を避ける。が、完全には避けきらなかったようで、首に小さな切り傷が出来た。不味いな、内心、俺は毒づく。今の志波は




 俺を殺しにかかっている




 俺は、そう理解した瞬間にバタフライナイフを鞘から抜いた。

「何で何で何で何で何で何で何でなの…!」

 志波がブツブツと呪詛の如く呟きながら、横払いの鎌の一撃を放つ。俺は、すかさず右手でナイフを構えて、ナイフの刃で鎌をガードした。


「くっ………!」


 右手に強い衝撃が走り、構えが僅かに崩れる。理由は簡単、志波の一撃が重すぎるのだ。まったく…本当にこれが女の子の力か?

「落ち着け志波!理性を取り戻すんだ!」

 俺は何とか志波を正気に取り戻そうと、しっかりと志波の目を見て言った。が、志波の瞳は俺を見てはいなかった。

「うあああああああああああああああっ!渡!渡っ!渡ぅっ!」

 志波は再度叫び、空いた片手で頭を掻きむしりながら降り下ろしと、振り上げの二回の斬撃を繰り出した。俺は再び擦り傷を負いながらも一度目の回避し、二度目の斬撃を再びナイフで受け止めた。受け止めた瞬間、またもや志波に押しきられ僅かに後ろに下がる。

(やはり、腕力とスタミナが異常な程に増大している…。と、なると長期戦は危険。短期戦で畳み掛ける!)

 俺はそう判断してナイフを両手で握り、再び迫ってきた志波の斬撃を最大限の力を込め弾き飛ばした。

「あ………?」

 鎌が検討違いの方向に行き志波は一瞬、呆然とする。その瞬間を狙って床を蹴り、志波の懐に飛び込んだ。志波は未だに呆然としている。よし、決まった。手は痺れているが、後は志波を取り押さえて武器を奪うだけだ。


 そう油断したのが不味かった。


 俺が、あと数cmで志波の腕を掴めそうな距離まで近づいた時、志波は静かに唇を吊り上げ、勢いよくバックステップし、俺の腕から逃れた。


 そして、志波は空中に飛び上がり、浮かんだまま両手で鎌を握りしめて大上段の斬撃を俺に繰り出した。

「うわっ!?ぐわあっ!」

 俺は咄嗟にナイフで鎌をガードしたが片手でガードしたために力負けし、ナイフが手から弾き飛ばされて床に落ちた。そのため俺は一瞬だけ視線をナイフに向けてしまった。

 当然、志波がそんなスキを見逃すはずも無く

「渡うぅーっ!」


「うわっ!しまっ…」

 志波は素早く足を絡ませ、そのまま力技で俺を床に押し倒す。俺は何とか床に付く前に受け身を取ろうとしたが、志波が手を絡ませて来たため失敗して結果、腰をしたたかに打ち付けた。 

 倒れる勢いが全く緩和されていない為に、コンクリートの固さが強烈な衝撃となって俺に襲いかかってきた。

 口から内蔵が飛び出しそうな程の強烈な痛みに俺は思わず小さく悲鳴を上げる。志波はそれを対して気にした様子も無く俺の手を解放し、俺に背を向けた状態で腹部にのしかかり、静かに体重を掛けて来た。

「…ホントに渡が悪いの?…いや、渡が悪いんじゃないだ…うん、そうだ渡は悪くない。だとしたら悪いのは…。」

 志波がそう小さく呟いた瞬間

 

 寒気、それも局地的に背中だけが氷点下に達したかと錯覚する程の寒気を感じ取り、俺は力で無理矢理、志波を振り払おうとした。


 

 しかし、それより先に俺の右足首に冷たい刃の感触がし、



 次の瞬間、足首に添えられた鎌が引かれ、鈍い音と共に俺の足の腱は切られた。



「がっ!……あっ…。」

 足に火箸をねじ込まれたような鋭い痛みが走り、気付いた時には悲鳴をあげていた。

「あははっ!そうだよ悪いのは渡の足!勝手に逃げようとする渡の足!だったら足が動かないようにしないと!」

 志波は心底嬉しそうに笑い、左足をも掴んだ。俺は力の限り左足を動かして志波の手を振り払おうと試みたが、鉄金具で止められたかのように全く動かない。そうこうしているうちに、左足首にも鎌が添えられた。

 不味いっ、左足首の腱まで切られたら自力で脱出するのは、ほぼ不可能になる!俺は、すぐさま訪れる痛みに耐えようと歯に力を入れた。


 その時だった。




「そこまでだ!」





 何者かが怒鳴り声と共に、ドアを蹴破るように開いて部屋に侵入した。




「えっ………?」





 予想外の出来事に一瞬固まる志波。侵入者はそのチャンスを逃さず、素早く手に持っていたエアガンで志波の手を撃った。



「痛ぅっ……!」



 生身の志波の手に加速されたBB弾が直撃し、志波は鎌を落とした。

 志波は直ぐ様落とした鎌を回収しようとしたが、相手がそれより早く、志波に近づき、その瞳にエアガンの狙いをつけた。





「…アンタはっ……!」



 志波は、相手の顔を見て怒りを込めてを睨み付けた。その額には、はっきりと青筋が浮き出ていて、怒りのあまり、歯からギリギリと音が鳴る程、歯を食い縛っていた。



「どうしたんだよ志波、予想もしてなかったって顔だな。そんなに以外だったかよ?俺がこの場所に来る事が。」




 そう言いながら、志波にエアガンを突き付け、いつでも引き金が引ける状態でチラッと後ろを向き、その男、田上太郎は俺に笑いかけた。


「田上……。」



 志波に拘束されて今だ一日しか過ぎていないのにも関わらず、田上の顔が、いつもと変わらない日常的なそれが、非常に懐かしく感じ、俺は思わず田上の名を呟いていた。


「よっ、渡。助けに来たぜ。お前と同じようにな。」



 田上は、それだけ言うと視線を再び志波に移した。



「…一体どうやって、ここに渡が居るのを知ったのよ…この事は、私と協力してくれた従姉妹しか知らないはずなのに……。」



 突如、エアガンを突き付けられた志波が、相変わらず田上を強い恨みの入った視線で睨み付けながら呻くように語る。


「この場所をお兄ちゃんに教えたのは私です。」



 再び聞き慣れた声がし、視線を向けて見ると、牡丹ちゃんが静かにドアを開いて部屋に入ってきた。その表情は、いつもの朗らかな顔では無く、何かを決意しているような表情をしていた。牡丹ちゃんは、志波を見ながら言葉を続ける。


「すみません志波さん。私、お兄ちゃんの力になれると思って勝手にあなたの部屋を調べさせてもらいました。」





「そしたら見つけたんですよ。渡さんを監禁する計画が緻密に書かれていた志波さんの日記を。」





「で、牡丹からその話を聞いた俺は、ネットで正確な場所を検索して、とっときのエアガンを持って早速駆けつけたって訳だ。」


「私は、そんなお兄ちゃんの後に付いてきた、と言う事ですよ。」


 危ないから止めとけって言うのに俺が許可するまで、めっちゃ食い下がったからな。と、田上は苦笑しながら俺だけに聞こえるような声で言い、再び志波に向き直ると、急に表情を変え、志波を睨み付けた。


「さて話はここまでだ、さっさと渡を解放しやがれ。二対いや、三対一だ、マトモにやっても結果は分かるよな?このエアガンがお前に命中しても死にはしねえが、そうとう痛いぜ?」

 脅迫するかのようにそう言うと、わざとらしくエアガンを鳴らしてみせた。


「…わかったわよ…。」


 志波は、少しだけ田上を睨むように見ると、意外な事にそれを了承した。

「よし、それじゃあ、まず渡から離れろ。」

「…………………。」


 志波は無言のまま、俺から静かに体を離し、数m程後退して、体育座りで床に腰かけた。


「よし、そのまま動くなよ……。」


 田上はエアガンを志波に向けたまま、横歩きで俺に近づいた。


「おい渡、大丈夫かよ?牡丹、俺が渡に肩を貸すから、ちょっと手伝ってくれ。」


 田上は、俺を少しだけ起こして、俺の腕に自分の肩を滑り込ませ、俺を起き上がらそうとし、駆け寄った牡丹ちゃんが俺を支えてそれをサポートする。


「よいしょっと!」


 田上が掛け声と共に力を込む、俺の体を持ち上げた。


 と、その時、田上は一瞬、一瞬だけエアガンの狙いを志波から反らしてしまった。そして、その一瞬は。






 志波にとっては絶好の反撃のチャンスだった。




「お兄ちゃん!」



 気付いた牡丹ちゃんが慌てて田上に叫ぶように言い。



「なっ………!?」



 その言葉に田上が慌てて志波にエアガンを向けた。が、その瞬間には志波は既にスタートしていた。


「死ねえええええええええええぇえええええええええっっ!!私から!渡を取ろうとする奴なんて!死ねばいいんだあああああああぁああああぁあああっっ!!」



「く、くそっ!」


 絶叫しながら凄まじい速さで襲いかかる志波に田上はエアガンの引き金を引いた。が、


 ガキッ


「うわあっ!」


 エアガンからBB弾が発射される直前、志波は田上のエアガンに強烈な飛び蹴りを決め、BB弾の軌道をずらすと共に、エアガンを田上の手から弾き飛ばした。

 そして着地した志波は、自身の鎌を素早く手に取って構え、




 咄嗟にガードしようとした田上の腕ごと、胸を切り裂いた。



「がっ!あ、ああああっ…!」


「お兄ちゃああああんっ!!」

 泣き叫ぶような牡丹ちゃんの悲鳴と共に、田上の胸から、勢いよく血が吹き出した。


「あっははははははははははは!さぁ、死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」


「ぐっうううっ…。」

 狂気のにかられたように笑う志波、一方の田上は、力尽きて地面に倒れてしまう。当然、田上に肩を貸して貰っていた俺も一緒にだ。


「あ、あああああ…。」

 そんな悲鳴にも似た声を上げながら牡丹ちゃんは、手の平で自身の顔を覆う。


「お、お兄ちゃんがまた大怪我しちゃった…なんで?何で?私ちゃんと良い子にしてたよ?お兄ちゃんにも渡さんにも他の人にも酷い事してないよ?小刀も使ってないよ?なのに、なのに、なんでお兄ちゃんが怪我するの?あああ、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん。」


 その牡丹ちゃんのあまりの気迫に押されたのか志波も動きを止め、呆然として牡丹ちゃんを見ていた。何とか顔を上げて牡丹ちゃんを見た俺には呟く度に牡丹ちゃんの瞳の色が変わっていくのが良く分かった。そう、まるで昔のように。


「や、止めろっ!ガハッ!牡丹ッ!」


 その変化に気付いた田上が怪我のせいか吐血し、咳き込みながらも叫ぶ。


「あああ、お兄ちゃんが血を吐いてる。いやだお兄ちゃん死んじゃいやだ。いやだいやだ。わ、私が守らないと。お兄ちゃんを殺そうとする。コイツを殺さないと。」

 その言葉と共に牡丹ちゃんの瞳は黒い色に染まりだし、牡丹ちゃんは背中に隠し持っていた小刀を抜いた。


 それを見ていた志波が無言で再び鎌を構えて戦闘体勢に入り、二人は互いに自分の武器を構えて睨み合う。二人から漂う気迫は凄まじく俺と田上は圧倒されて思わず沈黙してしまい、部屋の中は僅かな時間、不気味な程に静まりかえった。





 先に動いたのは牡丹ちゃんだった。


 床を蹴り飛ばして一気に志波に近づくと共に小刀で鋭い突きを繰り出した。


  「フン……!」


 迎え撃つ志波は、それを体を反らして軽く避け、反撃とばかりに牡丹ちゃんに鎌で横なぎの一撃を放つ。


  「遅いっ!」


 しかし牡丹ちゃんも、それを読んでいたらしく、体を低く屈めて回避し、直ぐ様立ち上がる勢いを利用して真上への切り上げを放った。


 志波は、それを鎌の刃で受け止める。そこに牡丹ちゃんが、さらに力を込めて小刀を押し込んだために刃と刃が押し合い、いわゆる鍔迫り合いになった。

「ぐぐぐぐぐぐぐぐっ…… !!」


「うううううううっ……!!」


 牡丹ちゃんと志波、互いが鬼のような顔で腕に全身の力を込め、相手を叩ききろうとしていた。


「死ねぇ…お兄ちゃんを傷つける奴なんて死ね!お兄ちゃんは…お兄ちゃんは、お兄ちゃんは私が守るんだ…。だから、だから!お兄ちゃんを傷つけた奴に生きてる価値なんて無いんだあああぁああああああぁっ!!」


「死ぬのはアンタよ…!何で私から渡を奪うんだ!渡は私だけの物なんだ!私と渡は互いに結ばれているんだ!渡は私と一緒に居るのが一番いいんだ!

 私に渡を返せええええええぇええええええっ!!」



 ガンッ!ガキィーン!

 そのまま、数分程押し合っていたが腕力の限界が来たのか互いに相手の刃に自分の刃を弾かれ、半強制的に鍔迫り合いは終わった。


「くうぅ…!」


「チッ…!」


 牡丹ちゃんと志波は互いに悔しがりながら、バックステップをして相手との距離を取り武器を構え直した。



 そして今度は二人が同時に動き、超スピードでの肉体と武器の攻撃ラッシュが始まった。

 俺も、最初は目で二人の動きを追っていたのだがそれが出来たのは最初の数十秒のみで、それから先はからは二人がどのように戦っているのか殆ど分からず、唯一認識出来たのは時たま一秒に満たない時間に行われる様々な体勢での鍔迫り合いのみだった。しかし、それだけでも分かる事はある。



「この勝負、完全に泥試合だ…」


 先程から行われる鍔迫り合いの度に牡丹ちゃんと志波の体を見てみたが、擦り傷こそあれど互いに目立った外傷は無い、つまりそれだけ二人の力が拮抗しあってるのだ。これは互いに体力が尽きるまで終わりそうに無い。



 この時間が続くのは今、現在、怪我をしている俺と田上にとってはかなり危険だ。

 俺の足の傷は、まだ軽く、多少は持ちこたえられると思うのだが、問題は田上だ。


「うっ、くぅっ、ぐっ……。」

 田上は先程、志波に切られた傷が深かったせいか、未だに血が止まらず、田上は痛みに喘いでいた。このままだと田上の命に関わる。一刻も専門の病院に連れていく必要がありそうだ。


「どうする?このまま大和さんの助けを待つか?

 いや、駄目だ。そもそも後どのくらいで大和さんが分からないのに無計画すぎる。悠長に大和さんを待ってる間に田上が命を落としかねない。

 志波の相手は牡丹ちゃんに任せて俺と田上だけで逃げるのはどうだ?

 俺らしくもない馬鹿げた答えだ。俺は足を怪我していて、田上は両足が無事だが血が止まらない程の大怪我。病院から脱出する前に二人とも命を落とす可能性が高い。」


 焦っているせいか正常な考えが出てこない。俺は必死に冷静に考えようと、争い続けている牡丹ちゃんと志波を見ながら思考を巡らせる。


 この部屋から出るのは二人では不可能。


 と、言うことは牡丹ちゃんの協力が必然。

 すると、あの二人の戦いを終わらせる必要がある。


 それも絶対条件として牡丹ちゃんの勝利で。


 しかし、あの状態の志波を接近戦で静めるのは不可能


 だとしたら一番有効な作は


「あれしか無いか…。」

 そこまで来て、ようやく一つの方法を思いついた。当然のごとく危険だが実行する価値はある。…だったら良いじゃないか。以前のように、自分以外の誰かの為に自分の命を賭けるだけの事だ。この作で守る対象は親友とその親友の愛しの相手。二人のためにもやれるだけやろうじゃないか。

 俺が、そう誓い匍匐前進を始めた時だった。

「へへへ…、ちょっと待てよ渡。」

 急に田上に肩を掴まれて、強制的に前進を止めさせられる。

「なっ、田上!何を…。」

「悪ぃな渡…お前がさっきから一人でブツブツ呟いてた作戦とやら…全部聞かせて貰ったぜ…その作戦を実行するべきは俺だ…。」


 田上は、息を荒めながらもそう言ってかなり無理をした笑顔を見せる、その顔は大量の血液を失った影響か赤みが薄れ、蒼白になりつつあった。そんな状態の田上を動かせる訳にはいかない。俺は田上を説得しようと試みた。

「止めろ田上、お前が今動いたら傷口が広がって出血多量で本当に死んでしまうかもしれないんだぞ!」

「どっちにしろ…このままじゃあ…二人とも御陀仏だ。だったら…やるしかねぇだろ。」


「それは分かっている。だから、ここは俺が……。





「頼む…俺にも戦わせてくれ…お前のように『親友』の為に…。」


 その瞬間、俺は田上に何も言えなくなった。ただ、


「おい、田上。」




「…何だ…?」




「絶対に死ぬなよ。」




 その一言を除いては。




「…分かってるって…牡丹を残して…死ねるか…。」




 田上は、俺に小さく苦笑しながら笑いかけ、匍匐前進を始めた。


 這うたびに田上の体から血が流れ、床に血の筋道が出来る。それでも田上は進むのを止めない。



「ううっ!ぐうっ!」

 傷口が痛むのか田上の口から悲痛な声が漏れる。やはり、それでも匍匐前進を止めず、目を擦りながらも前に進み続けた。



 そして、ついに田上が『それ』を手にする。




「牡丹っ!!」




 田上が、振り絞るような声で牡丹に向かって叫んだ。




 田上の声に一瞬、二人は動きを止める。そして、僅かに牡丹ちゃんの方が志波より早く田上のやらんとせん事を察して動いた。



ガキィーン!



 急に牡丹ちゃんは急に志波に襲いかかる。志波は多少、動揺したもの軽く鎌でガードする。が、それが狙いだった。



 パァンッ!



 その瞬間、乾いた音が響く。



「えっ、くうっ!?」


 志波は苦痛の声をあげ手にした鎌を地面に落とした。



 田上は、それを確認すると地面に崩れ落ちる。

 その手には、しっかりと田上が回収したもの、



 エアガンが握られていた。



「し、しまっ…!」

 志波が慌てて、床に落ちた鎌を回収しようとする。が、それは愚策だ。



「死ねええええぇっっ!!」


「あっ……………。」



 暴走している牡丹ちゃんから目を離してしまったのだから。




 牡丹ちゃんは、気合いの声と同時に志波の右手に小刀を持ち、正面から鋭い突きを繰り出した。

「くうっ……!」

 志波はギリギリで、それを回避する。が、その瞬間、牡丹ちゃんの左ストレートが志波の鳩尾に直撃した。


「グフッ…!オエッ…。」


 腹と口を押さえ、前屈みになる志波。そのため、首ががら空きになる。

「たああああああぁっ!!」

 その、がら空きになった首に牡丹ちゃんが空中回し蹴りを決めた。


「グッ、ぎゃああああああっ!!」


 志波の体は宙を舞い、悲鳴、そして鈍い音と共にコンクリートに叩きつけられて一瞬、停止し、壁と密着したままズルズルと床に崩れ落ちた。



「これで、とどめだああああぁぁっ!!」

 倒れた志波の心臓に向かって牡丹ちゃんがトドメの一撃を放とうとする。が、



「ぼ、牡丹……。」

「ああぁあああ…あっ!?お、お兄ちゃん!?」


 ボロボロの田上が牡丹ちゃんに呼びかける。その瞬間、牡丹ちゃんはピタリと動きを止める。それと共に表情が何時もの牡丹ちゃんに変わる。


「牡丹…寒くて…痛くて…仕方ないんだ…。」

「わ、分かったよお兄ちゃん!今、助けに行くから!」

 その瞬間、牡丹ちゃんは小刀を仕舞い、田上の元に駆け寄る。


「へへっ…へっ…。」


 田上は、牡丹ちゃんに傷の手当てをされながら俺にアイコンタクトをした。

「まったくお前は…。」

 俺は、田上に直接、礼を言おうと思い、這って近づこうとする。

 その時だった。




「ま、ま、待ちなさい…。」




 絞り出すようなその声がした瞬間、俺、田上、牡丹ちゃんの三人は一斉に声が聞こえた方向へと視線を向けた。



 やはり、そこには志波が立っていた。額からは血が流れ、目の焦点が合ってない、左腕がありえない方向に曲がり、足は生まれたての小鹿のようにふらついてる。

 それでも志波は立っていた。残った右手で鎌を持って立っていた。


「………………。」

 静かに牡丹ちゃんが身構える。が、それは杞憂だ。恐らく今の志波は立っている事がやっとの状態。牡丹ちゃんと戦っても結果は見えている。




 だとすれば俺の行動は一つだ。




 たとえ、そうたとえ、こんな結果になったとしても、俺は志波の気持ちを無駄にはしたくない。志波は俺がこれまで出会った異性の中で唯一、本気で俺を愛してくれたのだから。




 俺は、その気持ちに答える。




「志波……。」


 俺は痛む体に鞭を打ち、壁を利用して無理矢理立ち上がる。体が思い出したかのように激しい痛みが蘇り、血が流れ出す。



「わ、渡……っ!来るな!裏切り者の渡なんて知らない!そんな渡はニセモノだ!こっちに来たら殺してやる!」

 俺の姿を見て一瞬、志波は嬉しそうに笑う。が、すぐに、かぶりを振って再び憎しみの混じった表情に変え、鎌を俺に向けて、睨み付けた。




「なぁ志波、覚えているか?」




 俺は、そんな志波には構わず、壁を利用して歩き、志波に近づく。切られた足が殆ど動かず、動かす度に激痛が走るが気にかけない。



「俺は、お前が好きだと言ったよな。今でも俺はその気持ちが変わってないぞ。」


「えっ……それっ、て……。」



 牡丹ちゃんが小刀を取り出し志波を攻撃しようとする。が、田上がそれを手で制した。



「ああ、そう言う事だ。俺はまだ、全て引っくるめても『三奈子』が好きなんだ。」


「あ……渡……私を…なまえで……。」


 志波、いや三奈子は小さく呟き、目から一筋の涙を流す。三奈子は、それに気付くと慌てて鎌を持った手で涙を拭う。



「う、嘘だ、嘘よ…渡も、そう言ってて、私を裏切るんだ…さっきだって……私から…逃げようと…。」


 そう言いながら再び鎌を構える三奈子。しかし、その瞳からは、はっきりとした『迷い』が出ていた。


 俺はさらに足を進めて三奈子に近づく。



「ああ、確かに俺はこの場所から逃げようとした。正直に話すと、お前に少し恐怖してた事もあったよ。」


「だがな三奈子これだけは言っておく。愛はお互いに持ちつ持たれつなんだよ。だから、片方だけが相手を強制する事は駄目なんだ。

 頼む三奈子、一人で結論を出そうとしないで俺に言ってくれよ。

 俺と三奈子がお互いに満足出来る方法を探そうじゃないか。」




「う…うそ…嘘だ…来ないで…き、切るわよ…本当に…。」



 そう言って鎌を握る三奈子の手は震えていた。

 ああ、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。


 俺は、さらに足を進めた。後一歩、後一歩だけ進めば三奈子の元へとたどり着く。


「こ、来ないでっ!嘘だ…絶対に嘘だよ…私なんかを、渡が…。」


 三奈子は、涙を流しながら震える手で鎌を振りかぶる。




 「大丈夫、そんなに怖がるなよ。」




 そして、俺は最後の一歩を踏み出して。




 グシャッ!


 「俺がお前を包み込んでやるから。」




 俺は三奈子を優しく抱きしめる。その瞬間


「あ、あぁああ……。」



 三奈子の鎌が、俺の肩に突き刺さった。



「ご、めん…なさい…ごめんなさい…。」



 三奈子は、ワナワナと震えながら俺の胸で泣く。大丈夫、気にしてない。俺は三奈子を優しく抱きしめたまま、安心させようと耳元で囁く。



 その瞬間、安堵感で油断したのか強い目眩がして、俺はガクリと首を曲げる。意識が遠のいていく中、三奈子は必死に俺の名前を呼んでいた。



 大丈夫、君がいる限り俺は死なない。



 俺は、最後の力で三奈子にそう告げ、意識を暗い闇の中へと飛ばしていった。










 奇妙な夢を見た。


 人魚姫の夢だった。

 夢の中で俺は、がらにもなく王子で


 俺と一緒にいた、人魚姫は、言葉は喋れなかったが俺に愛情を向けて来てくれる事は分かった。


 そんなある日、俺は勝手に俺の親、つまり王様が勝手に決めた相手と結婚されそうになり、それと共に人魚姫は姿を消してしまった。


 結婚式当日、俺はその場で王位を蹴り飛ばし、一直線に人魚姫を探しに出かけた。


 崖で今にも飛び降りそうな人魚姫を見つけた俺は全力で人魚姫の手を引き、こちらに引き寄せた。


 その人魚姫の顔は








 三奈子だった。






 俺が目を開くと、目に入ってきたのは光りが灯っていない蛍光灯と、白い天井。そして、その天井に写る太陽の光だった。

「あら、うふふ…大和、彼、目を覚ましましたよ。」

「ん~?お~起きたか少年。」


 俺が静かに天井を眺めている間もなく、二つの声がかけられる。俺は、声が出るかチェックするためにも二人に返事をした。

「どうも…天城あまき先生、それと大和さん。」

 天城 由良ゆら今、現在俺が入院してるのであろう、天城診療所の院長で大和さんの友達。天才女医だけど人を合法的に切り刻み、解体して、元に戻したいから医者になったと言う軽い危険人物。実は名家のお嬢様。特徴は腰まで伸ばした黒髪と怪しい笑顔。あと頭蓋骨フェチ。

「うふふ~石井君。今回も貴方の手術はギリギリで楽しかったわよ~。」

 天城先生がいつもの笑顔を向けながら、俺に話しかける。天城先生は、とてつもない美人なのに(美人度ランクSSS)この笑顔を向けられると、鳥肌が立ってしまう。

「あと、傷は少し見ただけじゃ分からない程に直しておいたから安心よ、うふふ~。」

 天城先生は、楽しそうに言い、さらに言葉を続ける。

「うふふっ、大和。あなたには本当に感謝してるわよ。一日に三人も手術出来るなんて最高よ。何時も、あなたから頼まれた患者は面白くてしょうがないわね。私、いつも大満足よ~。」

「いいねぇ、その心。その調子で俺の紹介する奴らをジャンジャン直してやってくれよ。」

「うふふ~任せなさ~い。」

 そう天城先生と大和さんは楽しげに会話し、静かに部屋から出ていこうとする。

「じゃあな少年、また何かあったら頼むぞ。」

「あなたの友達の田上君なら二つ隣の病室よ。今、小さな彼女からリンゴを貰ってるわ~。そして隣はぁ、ふふっ、入ってきたら?私と大和は今、出るから二人っきりになれるわよ?」

 天城先生は、そう言ってドアを見つめると、大和さんと共に俺の病室から出ていった。



 そしてドアが閉じられた瞬間、再びドアが開き、

「…………………。」

 静かに三奈子が入ってきた。松葉杖をつき、折れた手が補強され、額に包帯を巻いて。


「こっちに来てくれ、三奈子。」



 俺は、そんな三奈子に優しく呼びかける。三奈子は多少、ギクシャクしながらも俺の寝ているベッドに近づき、ベッドの横に立つ。俺は、起き上がり三奈子を抱きしめた。三奈子が不安気に口を開く。

「渡……あの……私…。」

「いいんだ。いいいんだよ三奈子。」


 俺は、三奈子を抱きしめたまま言った。


「渡……。」


「三奈子……。」


 俺と三奈子は、お互いにを見つめ、お互いを抱きしめあった。


 それは、まさに俺の理想としていた支え合いの愛情の姿だった。










「で、よう…。なんでこうなるんだよ!作者、絶対おかしいだろ!普通、渡と志波が抱きしめ合う所で終わりだろうが!」

「そこ、メタ発言は止めろ。」

 俺は、田上の額に横チョップを叩き込む。


 あの日から、数ヶ月が過ぎて再び春が来て、俺、田上、三奈子の三人は無事に卒業。その祝いに俺達は、コスプレで入店OKの喫茶店に来ていた。場所?某町の某喫茶と言っておこう。

「ってーな!何しやがんだ渡!」

「まぁ、そんな事は気にせず、お互いの嫁の素晴らしいコスプレ姿でも見てようぜ。」

 俺は、そう言って俺達の座っている席の正面を指差す。そこには



「ふ、ふえぇ、恥ずかしいですぅ。志波さ~ん。」



「だ、大丈夫?牡丹ちゃん…って、コラ!そんなに近づいて撮るんじゃないわよ!」



 大量のカメラ小僧に囲まれて、小早川ゆ○かのコスプレ(に○も~付きの通学鞄持ち)をしたまま恥ずかしがる牡丹ちゃんと、牡丹ちゃんを気遣いつつ、近より過ぎるカメラ小僧に注意する、ティ○ナ・ランスター(ク○スミラージュ付き)のコスプレをした三奈子の姿があった。

「まぁ、あれが素晴らしいのは認めるが…。」

 田上は、じっくりと特に牡丹ちゃんを見ながら呟く。そういえば三奈子と牡丹ちゃんは、あの事件の後もごく普通に、いや以前より深い付き合いを続けている。しかも、どうやら嘘や誤魔化しでは無いようである。一体、いつの間に和平したのだろうか?

 その事に気付いた時、俺と田上は二人して『やっぱり女は分からないな。』と呟いたのだった。


「ああアレは素晴らしいさ、だがな渡、俺が文句あるのはそれだけじゃないんだぞ。」



 俺が考えにふけっていると、再び田上が何か言い出した、明らかに先程より声に苛立ちが混じっている。

「何だ、田上。」


「あのな渡、卒業祝いにコスプレ喫茶に来たのは一兆歩譲って理解できる。牡丹と志波がコスプレするから俺達もコスプレするのも、まだ理解できる。だがな、渡。」



 そこで田上は、俺をビシッと指さした。



「何でお前が、○崎一真のコスプレで、俺がオー○バジンのコスプレなんだよ!わざとか!?わざとなのか!?」



 そう、田上は今、現在○ートバジンのコスプレをしていた。俺が武士の情けで、三奈子と牡丹ちゃんのコスプレ姿を見るために、田上のフェイスシールドを外してやり田上は今、肉眼で景色を見ていたが、明らかに田上は息苦しそうだった。



「フ○イズとブレ○ドで微妙にズレてるし!しかもコレやたら熱こもって暑いし!しかもメッチャ座りずらいし!」



 ギャアギャア騒ぐ田上に、俺は考えをまとめ、一つの結論を言った。



「まぁ、何だ、頑張れっ☆」



「死ねっ!」



 その瞬間、オート○ジン田上からのパンチが飛んできて、俺は大きくのけ反る。そして戻ってくると○ートバジン田上を睨み付け、こう言った。


「そこは○イールガン使えよ!オートバ○ン田上!」



「怒り所そこ!?そしてホイールガン付いてるの!?あと、オー○バジン田上って何!?ビー○ァイターカブトみたいな言い方すんな!」



 本日、二度目のオート○ジン田上(言い方を変える気は無い!キリッ)のパンチが炸裂し、俺は顔面からテーブルに叩きつけられた。



「全くもぅ…あんたら何やってんのよ…。」



「えへへ…お兄ちゃんただいまぁ…。」



 丁度、その時、ようやくカメラ小僧達から解放された三奈子と牡丹ちゃんが、俺達のテーブルに戻ってきた。

「ああ、三奈子ちょっといいか?」



「何よ?」



 俺は、椅子に腰かけようとしていた三奈子を止め、俺の正面に立たせた。そして、


「そぉい!」


「キャ、キャッ!?」

 俺は、一瞬、ほんの一瞬だけ三奈子のスカートを捲る。田上と牡丹ちゃんは突然の事態に唖然としている。


 そして俺は、今だに硬直している三奈子に恒例の言葉を言うのであった。


「うん、黒下着とは素晴らしいぞ三奈子。分かってるな!」


「あっ…。」

 その瞬間、志波は顔を染めて静かに震える。そして

「アンタって奴はぁー!」



 ビタアアァン!


「グフッ!」



 三奈子の渾身のビンタが炸裂し、俺は椅子から転げ落ちて、ひっくり返る。




「渡の馬鹿ーッ!」


 顔を赤くしながら、どこかへと走る志波を追いかける俺、それを手を繋ぎながら苦笑いしつつ眺める田上と牡丹ちゃん。




 そんな感じの光景があと半世紀は続く事になるのだが、それはまた別の話。気が向けば、俺か田上が語るだろう。

 キャラクタープロフィール(ヤンデレ組)


佐原 牡丹


身長134cm


武器、刃渡り30cm程度の小刀。


成績 体育のみ1でその他は5と4。


ヤンデレ発症のスイッチ 田上 太郎が目の前で血を流す。





志波 三奈子


身長 145cm


武器 高級で良く切れる鎌


成績 家庭科が1(のちに5に)他は平均値

ヤンデレ発症のスイッチ 石井 渡が苦しんでいるのに無理をしている時

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