出会い
幼少期のお話
ある日、俺の家の隣に東洋の方にある桜国から引っ越してきた、という家族が挨拶に来た。
両親は「子どもは子ども同士」と言って俺の部屋へまだ会ったばかりの二人の小さな子どもと一緒にいるように言う。
「……」
何を話すか迷う。同年代の子となら、少し話したりは出来る。でもこの二人は俺よりも明らかに年下で、さらに出会ったばかり。……つまり、話題に困る。
「……ねぇ」
「ん?」
急に片方の子に話しかけられる。
「オレね、祭李。でこっちが双子?のお兄ちゃんの渚莎!」
「祭李、双子で合ってるよ」
「そっか!」
「渚莎さんと……祭李さん?」
確認するように言うと、祭李と名乗った子が不機嫌そうな顔をする。
「さんって、嫌」
「僕もちょっと、嫌かも」
双子に揃ってそう言われると、呼び方を変えるしか無いわけで。
「……じゃあ、渚莎、祭李」
「うん!」
「僕も、そっちがいい」
俺が改めて呼び捨てにすると、祭李は笑顔になって渚莎もどこか嬉しそうにする。
「俺はノアージュです」
俺がそう自己紹介をすると急に祭李の表情が変わる。
「ノア、ジュ……ノアー、ジュ?」
「ノア、ジュ……」
二人とも言いにくそうにしながらも、なんとか発音しようと頑張る。
「はい、ノアージュ、です」
そしてそのうち、祭李の表情が少しずつムッとしていく。
「うぅー……言いにくい……」
「でもちゃんと、ノアー……ジュって、呼ばなきゃ」
その隣で、渚莎は一生懸命に発音しようとしている。
しかし祭李は早々に諦めたのか「だって言いにくい……」と呟いてから俺の方をちらっと見る。
「そうだ、ノアじゃ駄目?」
「ノア……?」
「うん、ノア!」
満面の笑みで言われ少し戸惑いつつも、それでもいいかと思う。
「……言いにくいなら、ノアでもいいですよ」
俺がそう言うと、祭李は明らかに嬉しそうにする。
「やった、ありがとノア!」
そう言って急に抱きついてきた祭李に困惑しつつ、転ばないように支える。
「ねぇ、ノア……ジュ」
抱きついてきた祭李の少し後ろから、渚莎が声を掛けてくる。
「はい?」
「……僕も、ノアって呼んでもいい?」
おずおずと確認してくる渚莎に、少しだけ笑って。
「ええ、もちろん」
そう返すと渚莎の表情も明るくなる。
「……ふふ、ありがとノア」
「どういたしまして」
そして、その日から三人で遊ぶことが多くなった。
どちらかの家で遊んだり外で遊んでみたり。
たまに祭李が転んで泣いたかと思えば、すぐ元気になったり。
渚莎と祭李に会ってからは、毎日が楽しかった。
……きっと、毎日続く。そう思えた。




