表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

人の道①

 千花ちゃんと一緒に行動してからしばらくの時間が経った。


 その間は今まで過ごしてきた街を離れた。


 多くの人たちに今まで起きたことを話して、食べ物や飲み物は手に入っていた。


 だが、最近はみんな余裕がないのか、食料や飲み物が手に入らなくなってしまった。


 まだ本格的な冬が続き、私たち含めて多くの人が暖かい場所を求めている時期だ。


 そんな中、私たちはなるべく身体を寄せ合いながらこの寒さを乗り越えていた。


 でも、そんな生活にも限界が来てしまった。


 多くの時間を移動に費やし、まともな休みを取れていないため相当な疲れが溜まっていたのだ。


「千花ちゃん、そろそろ休まない?」


 私は震える声で千花ちゃんに提案した。


「…そうだね。流石に何日も夜以外は休まず移動してきたから、休んだ方がいいかもね」


 千花ちゃんは少し考えた後に私の提案に賛成してくれた。


 そして、私たちは寒さを凌げそうな場所を探し始めた。


 数十分後、私たちは誰も住んでいる形跡のない空き家を見つけることができた。


「ここなら、しばらく雨風とか防げそうだね」


 空き家と言うこともあり、内装はボロボロであるが使えなくはないといった感じだ。


 幸いなことに壁や天井はカビみたいなのはあるものの、比較的に綺麗であった。


 その中で一番、綺麗な畳の部屋に荷物を置いて、久々に寝っ転がることができた。


「近くに比較的丈夫そうな家があってよかったね」


 私は千花ちゃんに向かって、明るい声で話す。


「そうだね。ここなら、誰にも見られずに菊ちゃんに甘えられるよ」


 そう言った千花ちゃんは寝っ転がっている私の近くに近づいてきた。 


 すると、千花ちゃんは私の隣に寝っ転がって、後ろから抱きついてきた。


「いつも、場所関係なく甘えているのによく言うよ」

 私は千花ちゃんの冷えた手を掴む。


「だって…誰にも取られたくないんだもん。菊ちゃんがいなくなったら、私は生きていけないから」


 千花ちゃんの声は少し暗くて、寂しそうな声をしていた。


 千花ちゃんの手は震えていた。


「大丈夫だよ。私は千花ちゃんから離れたりしないから」


 私は千花ちゃん方に顔だけを向けて、笑顔を作る。

 その顔を見た千花ちゃんは安心したのか、笑顔をこちらに向けてくれた。


「今日はこのままで過ごしたい…いいかな?」


 千花ちゃんは笑顔ながらも少し恥ずかしそうに聞いてきた。


「もちろん。こっちの方が暖かいしね」


 私はその提案に賛成する。


 そして、私たちはそのままの状態で眠りについた。

 

 次の日、暖かい陽の光に当てられて、私は目を開ける。


 体を起こそうとするが何故か起き上がることができなかった。


 後ろを見ると、抱きついたまま目を閉じている千花ちゃんの姿があった。


「寝てる。どうしよう…起きてくれなかったら、体を起こすことができないんだけど」


 私は千花ちゃんの顔を触りながら、小さな声で言う。


 すると、千花ちゃんは静かに目を開けた。


「ん…おはよう?」


 寝ぼけているのか、千花ちゃんは優しい笑顔を私に向けてきた。


「おはよう。千花ちゃん」


 私も千花ちゃんの顔を触り続けたまま挨拶を返す。

「ご飯…用意しないとだ」


 そう言った、千花ちゃんは体を起き上がらせて、今まで使ってきた風呂敷を広げて、中から麦と粟を取り出していた。


 少し前はまだお米やかぼちゃなどがあった。


 だけど、昨日でお米やかぼちゃは使い切ってしまった。


 しかも、まだまだ冬は続くから、何か食べれる植物とかも見つけられない。


「菊ちゃん、多分なんだけど…節約しても三日ぐらいしか持たないと思う」


 軽く麦と粟を混ぜた物を用意しながら千花ちゃんはそう言う。


「そうなると、探しに行かないとだよね」


 私は千花ちゃんの隣まで移動して、邪魔にならない程度の場所に座る。


「そうだね、私たちは配給場所も知らないから、手当たり次第探さないとだね。でも、まずは食べようよ」


 千花ちゃんは作ってくれた、ご飯をこの場所に放置されていた机の上に置いていった。


 私は手を合わせて、小声で「いただきます」と、言った後に用意してくれたご飯を食べ始める。


「千花ちゃんの作るご飯は美味しいね」


 私は千花ちゃんにそう話しかける。


「そんなことないよ。ただ麦と粟を混ぜただけのご飯だよ」


 千花ちゃんは苦笑いしながら答える。


「それでも、千花ちゃんが作ってくれた物はなんでも美味しいからそんなこと言わないの」


 私は用意してくれたご飯を平らげて、「ごちそうさま」と、言う。


 その後はのんびり過ごしながら、外が暖かくなるまで待つ。


 その間に私は千花ちゃんに聞きたいことがあったので、それを尋ねることにした。


「ねえ、千花ちゃん。食料についてなんだけどいいかな?」


 私がそう言うと千花ちゃんは、


「いいよ。急にどうしたのさ」


 私が突然、聞いてきたからか、千花ちゃんは不思議そう顔をしていた。


「まだ、冬は明けないから、今後の食糧集めはどうするんだろうと思ってね」


 そう聞くと、千花ちゃんは悩んだ顔をした後に口を開く。


「そこは私に案があるから。私に任せてくれない」


 千花ちゃんが笑顔でそう言った。


「わかった。千花ちゃんに考えがあるなら従うよ」


 だけど、この判断がいずれ己の首を絞めることになるとは…今は想像もできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ