教室に雨のざわめきが聞こえる
雨音が窓を優しく叩き、教室には絶え間ないざわめきが響き渡っていた。先生はまだ到着しておらず、生徒たちは席に散らばり、まるでBGMのようにその音に耳を傾けていた。
レンは机に顎を乗せた。
レン:「この音、眠くなる…」
さやか:「落ち着く。一日中このままでいられるよ」
リョウ:「落ち着くと寝ちゃうよ」
さやか:「だから何?雨と一緒に寝るのが一番いいよ」
ミユは照れくさそうに微笑んだ。
ミユ:「本当ね。子守唄みたい」
ハルナは窓の外を見ながら、静かに言った。
ハルナ:「雨が降るといつも思い出が蘇るの。なぜかはわからないけど」
レン:「思い出?どんな思い出?」
ハルナ:「些細なこと…家で過ごした午後、静かな会話」
リョウ:「中止になった試合のこと」
さやか:「いつも現実的ね」
つぶやきは途切れることなく続いた。
レンは急に立ち上がった。
レン:「いい考えがある! 誰が一番雨の音が聞こえるか競争しよう。」
さやか:「それってどうやって競争するの?」
レン:「えっと…音を一番うまく表現した人が勝ち。」
リョウ:「それは競争じゃなくて、詩だよ。」
ハルナ:「悪くないね。私もやってみる。」
ミユ:「私も。」
レンは目を閉じた。
レン:「柔らかな太鼓の音、小さな足音の音みたい。」
さやか:「私には、たくさんの柔らかな声が集まっている合唱団みたい。」
リョウ:「観客のいない、ただのエコーだけのゲームみたい。」
ハルナ:「まるで長いため息みたい。いつまでも続く。」
ミユ:「誰かがピアノをゆっくり弾いているみたい。」
一同は数秒間沈黙し、耳を傾けた。
レン:「みんな勝った!美しかった。」
さやか:「いつもみんなが勝つことばかり考えてるね。」
涼:「そうすれば競争もなくなる。」
春菜:「競争なんていらない。ただ耳を傾けるだけでいい。」
美優:「そして、感じたことを分かち合える。」
雨のざわめきが、まるで答えるように、一瞬だけ大きくなった。
さやかはノートを取り出した。
さやか:「書き留めるよ。そうすれば忘れないから。」
レン:「僕も!」
涼:「僕は詩を書かない。」
春菜:「これは詩じゃない。思い出だよ。」
美優:「共有した記憶だよ。」
ちょうどその時、先生が入ってきた。
先生:「何をしているの?」
レン:「雨の音を聞いている。」
先生:「それについて書いているの?」
さやか:「はい。」
先生:「じゃあ…続けて。寝てしまうよりはましだよ。」
皆は驚き顔を見合わせた。
レン:「まさかこんなことさせてるの?」
リョウ:「信じられない。」
ハルナ:「もしかしたら、彼も雨の音を聞いてるのかもしれない。」
ミユ:「きっと。」
ざわめきは教室に響き渡り続けたが、皆は言葉を交わし、笑い、そして沈黙を交わし、共に歩み続けた。外の雨は冷たかったが、教室の中では温かい絆が生まれた。




