7話「初日の決闘、まさかの乱入者」
一章【10話】までは毎日投稿の予定です
『ねぇ、アレ見て!さっきの先生じゃない?』
『え⁉︎ ひょっとして〝精霊魔導士〟の?』
『なんか力見せてくれるみたいよ』
『マジマジ⁉︎』
校舎の窓から学年問わず多くの生徒が広場を見下ろしている。
ーーこの俺、天竜宗一郎は校舎から出て校舎前の広場に立っていた。
校舎から丸見え、視線が痛い…さっきの始業式の時もそうだったが完全に見せのも状態だ。
(動物園の動物達もこんな感じなのかな…)
勝負を受けたのち教室で魔法を撃ち合うのは危ないとの判断で急遽この広場で試合をすることになった。周りには障害物はなく見通しもいい場所。
シリカ曰く『決闘には丁度いい』らしい…
(ほんとは俺自身は魔法なんて使えないから室内でも危なくはないんだけどな……)
校舎入り口の方を見ると靴紐を結びながら先程の関西弁で喋っていた少女、ミラルトと何かを話している。
(…そういえば、なんで関西弁に翻訳されてたんだ?この世界にも方便的なものがあるのかな?)
ーーああ、駄目だ、余りにもピンチ過ぎて関係ない事を考えて現実逃避してるぞ俺……
そんな事を考えてると少女シリカが広場にやってきた。
『それじゃあ、簡単にルールを説明するわね……って言っても何も難しいことはないわ。相手が気絶するか降参と言わせる事。時間制限は無し、そしてこの広場から出ていかない事。それだけよ。いい?』
『あ、ああ、了解だ』
するともうミラルトが横から出てくる。
『ほな、いきなり何もなしに始まるっちゅーのも味気ないやろ?ウチが簡単にだけど審判するやさかい』
(さっき話してたのは審判を頼んでたのか)
『それじゃ!ただいまより〝猪突猛進、突撃娘〟シリカ vs〝稀代の天才、若き精霊魔導士〟テンリュウ先生 の注目のカードの対戦が始まるでぇ!観客の皆々様!精霊魔導士のその戦い、よーくその目に焼き付けとき!』
ーーちょ!マイクパフォーマンスかよ!
って待て待て!マイクなんてどこに持ってた!
ワァァァァァァ!ワァァァァァァ!
ミラルトのパフォーマンスもあって校舎窓の生徒達や直に精霊使いの力を見ようと広場の周りに集まる観客達の歓声が波が押し寄せる。
(くそっ!どうする? これじゃマジで初日でゲームオーバーになっちまうぞ!)
観客の声を全身で受けつつシリカの方を見る
彼女はトン、トン、とリズムよく小さなジャンプをして軽いウォームアップをする。
(あの子はどう出る?いや、そんな事より俺はどうやってこの試合を終わらせれば良いんだよ!)
焦りながらも俺はなんとかやり過ごす算段を立てる。
(ルールは相手に降参させるか、気絶をさせる事。つまり、必ずしも魔法を使わなければいけないって事ではない、だとすると…)
ーー力ずく?いくら異世界とはいえ中学生の女の子相手に?いや、いや、それは色々マズイだろ⁉︎教師的にも人間的にも男的にも三重の意味で‼︎
ブンブンと変な考えを振り払うように頭を振るとシリカの声が聞こえた。
『やっぱり先生からは攻めてこないのね…それならこっちから攻めるんだから!』
するとシリカのそのしなやかな身体で地面を強く蹴り一気に距離を縮めてくる!
『‼︎』
一瞬で懐に潜り込まれる。
そしてそのままシリカは宗一郎の頭に向けてのハイキックを仕掛ける。
その蹴りがまるでスローモーションに感じる
ーーーあ、ヤバッ……これ…避けれない…
後ろに僅かにのけぞると足元の石に蹴つまずく
ブン!と大きく空を切る音が聞こえる。
『外したッ…』
シリカのそのちいさな声と同時にいったん宗一郎から距離を取る。
ーー違う。運が良かっただけだ、たまたま石に躓いて当たらなかった。冷や汗が落ちる。
俺の考えが甘かった。中学生女子とは言え、アレだけの身体能力を持った相手に、ただの浪人生の俺が力でなら勝てるなんて思い上がってた!
俺が立ち上がると同時にシリカがもう一度攻撃を仕掛けてきた。
(どうする⁉︎どうする⁉︎どうすれば良い⁉︎)
俺は逃げながら思考を巡らせる。
『なッ!先生の癖になんで逃げるのよ!』
俺を追いかけて広場をひたすらに走り回るシリカ。
『おおーっと、どういう事だ⁉︎テンリュウ先生、何故か逃げの一手だ! 流石に生徒相手に戦うのは気が引けるのかぁー⁉︎』
『なんで逃げてるのかな?先生』
『やっぱ教師が生徒とやり合うのは気が引けるんじゃじゃないの?』
『ちがうよ!先生強すぎるから手加減するのが難しいのよ』
様々な憶測が飛び交う。
(ち、違うんだけど、まだバレてないか…し、しかし逃げ回るのも限界だ…どうしてもコイツを使うしかないのかっ!)
手に持った赤い謎の魔導書をみる。
ーーしかたない!
俺は逃げ回るのをやめてそのまま振り向き本を左手に構える
『ーー⁉︎』
宗一郎を追いかけていたシリカもその姿を見て急プレーキをかけて止まる。
『どうやらやる気になったみたいね、先生……』
シリカの視線も俺の持つ本へと落とされる。
『おおーっとついに戦う気になったか天才魔導士、その手にした本は一体何なのか!皆さんも刮目してみよ!』
一層盛り上がりを見せる観客。
(この際、ギャラリーがいようがいまいが関係ない!一か八かこの魔導書を使うしか俺に残された道は無い!)
俺は目を閉じて本に集中する。
そしてこの金色の龍の紋様が描かれた魔導書の使用条件を思い出していた。
条件その1、魔法の発動はこの魔導書に触れていなければ発動は出来ない。
ーーこれはクリア。
条件その2、使える魔法は開かれているページに載っている魔法のみである。
ーーこれもクリア。
昨日のうちにある程度、使えそうな魔法をピックアップしておいた!
俺は勢いよくページをめくる。
『……?、何をしてくるかは分からないけど、私は相手の出方を気長に待つタイプじゃないのよね!』
またしても真っ直ぐに飛び込んでくるシリカ。
条件その3、魔法の発動には必ず言葉を発する事!
『アクアリオン!』
左手に本を持ち、右手を前に出しハッキリと呪文を唱える。
そう呪文を発するとシリカの頭上に魔法陣が浮かぶ、そしてその魔法陣から大量の水が滝のように流れ出す。
『……え?』
ポカンとする俺。
そして目の前にはずぶ濡れになった少女が1人………
『ゴホッゴホッ……何なのよコレ!』
濡れて額にくっついた髪をかきあげるシリカ。
ーー⁉︎ 俺は急いで視線を逸らした。
『よく分からないけど、こんな水で私を倒そうなんて……ってこっち見なさいよ!』
『シリカ、シリカ、それはちょっとあかんて!』
ミラルトがマイクの外から話しかけてくる。
『どうしたのよ? 大丈夫、ただの水よコレ?』
『ちゃうちゃう、服見てみーや、透けとるで』
『ーーー⁉︎』
そう、今の俺の魔法で水を被ってしまったシリカの制服が透けてしまったのだ
顔を真っ赤にさせながら濡れて透けた部分を必死に隠そうとする。
『ま、まさか今の攻撃はこの為に!』
『ち、違うんだ、別にそんなやましい事を考えてるわけじゃない』
俺も無実を必死にアピールする。
水の攻撃なら相手を傷つけずに倒せると思ったからだ。いくら対戦相手でも自分の妹と歳も近い女の子を傷付けたくは無い。
(ーーそ、そうだ、確か風の魔法もあったはず、コレで服を一気に乾かせば!)
『ヴェントライズ!』
俺は新たにページをめくり急いで魔法を唱える
急な突風がシリカに目掛けて吹いてくる
強い風の音と一緒に土も巻き上げる
『こ、こんどは一体なに⁉︎』
風はシリカの周りにとどまりしばらくすると弱く収まっていった。
俺の思惑は当たって濡れた服は綺麗に乾いていた。しかしその風によって二次災害が起きることになった。
スカートがめくれ上がって見えてはいけない白いものが顕になってしまっていた。
ーーほんと、御免なさい。こればっかは俺が全面的に悪い。
『ーーー⁉︎』
またしても恥ずかしい格好になりますます顔の赤みが増すシリカ。急いでスカートを元に戻す。
『おおーっとシリカ選手! またしてもテンリュウ先生の魔法にやられてしまった! まるで子供扱いだぁー!あと、ギャラリーが全員女子で助かったぁー!』
いらないフォローまできっちりとこなすミラルト。
『……なるほど、先生の言いたい事はだいたい分かりました』
『へ?』
『……つまり、私なんてまともに相手にする必要もないってことですよね?』
わなわなと肩を震わせながら徐々に怒りのボルテージをあげるシリカ。
『ま、まて、違うんだ、落ち着け、まずは冷静になろう』
シリカは首にぶら下げているペンダントを取るとなにやら呪文を唱える。
すると、そのペンダントから目に見えるほどに魔力を放出し、凝縮する。そしてそれは剣の形をつくった。
『どうやら先生は私に本気でやれって言ってるってことですよね?』
急に敬語になるのは恐ろしい。
ーーいや、普通に剣のようなものを持って近づいてくる人間は怖いだろう。
『何が〝天才〟何が〝エリート〟……』
シリカのペンダントを握る手に力がはいる。
『わたしは…そんな人たちには絶対負けないんだからッ!!』
先程と気迫がまるで違うことに宗一郎は気付く
『ーーッ』
『こんどは逃がさない、この魔法剣で先生を……切る!』
マジか!ーーあの目は本気だ!
シリカが再び大地を蹴ろうと、かがみ込むと……
ウィィィィィン!ウィィィィィン!
突如大きなサイレンが学園中に響き渡る
『緊急警報、緊急警報、学園内に異常な魔力反応を確認。生徒たちは速やかに指定避難場所に移動して、先生方の指示に従って安全を確保してください!ーー緊急警報、緊急警報ーー』
『な、なんなの?これ?』
『緊急警報⁉︎』
ギャラリーたちが騒ぎ出す。
『ーー⁉︎』
シリカも戸惑い、飛びかかるのをやめる。
ビシビシッと何かにヒビが入る音が聞こえる。
『大変だぁぁぁ! みんな逃げろぉぉぉ! ここは危ない!!』
急に大きな声が聞こえる
(逃げろ?危ない?むしろ俺が今逃げたいし、危ないんだが?)
白い白衣を着た生徒が広場に走ってくる。
『あれ、隣の大学部の人じゃない⁉︎』
『なになに!どうしたのよ!』
女子生徒の反応からどうやら近くにある大学部の生徒のようだ
更に混乱状態になる広場と学園内。
そして先ほどから聞こえる何かヒビの入る音も大きくなる
ガシャーン!!
空から学園上空に張られている結界を何かが突き破ってきた。
ズドン‼︎と大きな地震が起こった。
いや、地震じゃない!
目の前の全長10メートルはあろうかと思われる巨大なゴーレムが空から降ってきた!
『な、なんだぁコイツ⁉︎』
『ゴ、ゴーレム⁉︎』
俺とシリカは同時に驚き目の前のゴーレムを見る
この勝負に意外な乱入者が現れる。
広場に悲鳴が飛び交うパニック状態だ
(おいおい! どうなるんだよコレ!)
続きは9月24日になります
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