子供教室
その子供教室は今日も盛況している。
「先生! 子供が言うことを聞かないんです!」
子供を引き連れてきた客を見て先生はため息をつく。
「どれどれ、見せてごらんなさい」
そう言われて客は子供を手渡す。
子供は何も言わずに先生を反射する。
「ふむ。どんなことを言ったんですか?」
先生の問いに客は言う。
自分が子供に言ってきた言葉の数々を。
「なるほど。ならば理由は明白ですね」
「明白?」
「ええ。つまり、記録を処理しきれていないんですよ」
「処理……?」
穏やかな笑顔を見せながら先生は内心でため息をつく。
だめだ。
やはりこの客も分かっていない。
「まぁ、なんだ。とりあえず直しておきますので少々お待ちください」
そう言って先生は子供の体に触れる。
……否、ありふれたタブレットに触れる。
タブレットの中に入っていたアプリの内、最新のAIチャットを起動をして先生は設定を弄る。
ほんの数分のことだ。
これで『子供の教育』はおしまいだ。
「はい。もう直りましたよ」
「ありがとうございます! 先生!」
そう言いながら去っていく客を見ながら先生はため息をつく。
AIチャットに『子供』を演じさせる業の深い趣味が流行り出したのはいつからだろうか。
そして、こんな趣味が馬鹿にされるのでもなく、疎まれるのでもなく、全面的に肯定される世界へと変化したのはいつからだろうか。
いや、どうして変わってしまったのだろうか?
先生あらため電気屋の店主はため息をつく。
「あと何年存続するのかね、人類ってのは」
電気屋は今日も盛況している。