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蛾王~第一章 幼虫期~  作者: 秋一番
恋は人類特有の感情?
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秘密兵器

……が、それはエイリアンまで届かず、レイの目の前にすぐ落ちた。


「……」

「……」

「……」


「ギャハハハ!何ヨ今ノ! ダッセェ!」


 床にこびりついた糸を見て笑い転げるエイリアン。


「おいモス! 何だよ今の!」

「あれぇ? この前スパイダーマンを見たときは、オレもできると思ったんだけどなぁ」

「ふざけんな! こっちはお前頼みだっていうのに」

「もう一回、もう一回チャンスをくれ! さっきはなんか腹に力が入ってなかったんだ」

「よし、じゃあ今度こそ——」

「ソンナ事、サセルワケナイジャナイノヨ!」


 エイリアンが一瞬にして距離を詰め、レイの手からモスを奪い取る。


「うわぁ痛い痛い! なんでどいつもこいつもオレの持ち方が荒いんだ!」

「大丈夫ヨ。スグ楽ニシテア・ゲ・ル」

「やめろ!」


 エイリアンにタックルをかますが、体格差が大きすぎてまるで怯む様子すらない。


「アラ可愛イ。コノ星デ有名ナ、オ相撲サンゴッコカシラ?」

「ぬわっ!」


 簡単に振り払われ、床に転げるレイ。


(なんて情けないんだ……こんなんじゃモスどころか、自分の身すら守れない……)


 その間にもエイリアンはモスのことを引きちぎろうとする。


「ぐわぁ! 痛い痛い痛い!」


(どうする、僕は一体どうしたら……)


 その時、レイの目の前にあるお香の瓶が目に入った。


「あれは、もしかしたら……!」


 レイは急いで立ち上がり、そのお香を拾い上げる。そしてその瓶の蓋を取り、エイリアンに向かって思いっきり投げつけた。


「これでも喰らえ!」

「ギャァァァァァ! 臭イ臭イ! 何ヨコノ臭イ!」


 瓶はエイリアンの頭に直撃し、液体がその顔を覆いつくす。


「レイ君、何を投げたの⁉」

「ハエが苦手なハッカのお香です! 思った通り、ハエ型エイリアンにも効いた!」

「アータ、ヨクモウチニコンナモノヲ! 許サナイ!」

「隙あり、これでも喰らえ!」


 エイリアンが怯んだ隙に、モスが近距離から糸をお見舞いする。


「ギャァ! 前ガ、前ガ見エナイ!」


 今度は見事エイリアンの目に命中し、視界を奪いことに成功した。


「ほらどうだ! 目が見えなくなるだろ!」


 調子に乗ったモスは次々とエイリアンに糸を浴びせ続ける。


「ヤメロォォ! テメェラ、マトメテ殺シテヤル!」


 その場で暴れまわるエイリアン。レイはその隙に何か使えそうなものがないか探す。

 その時、リンカが何かを持って近づいてきた。


「レイ君これ!」

「リンカさん何やってるんですか! 早く逃げてください!」

「これで……これであいつを倒すの!」


 リンカが渡してきたのは舞台装置に使うワイヤー。これでエイリアンの首を絞めようという魂胆らしい。


「しかし、こんな細い糸で……」

「結構強度あるから大丈夫! 早くしないとあの子が!」


 モスは未だに糸を吐き続けているが、度々床に叩きつけられさすがに限界が近い。


「モス! もうちょっと目くらまし続けられるか⁉」

「うっ……いやちょっともう無理かも。気持ち悪くなってきた」

「もうちょっと頑張れってマジで!」

「レイ君行くよ!」

「あっ、ちょっとリンカさん! 危ないですって!」


 リンカは果敢にもエイリアンの背中に回り、ワイヤーを投げてエイリアンの首に引っ掛けた。


「ヤメロバカ女! 八ツ裂キニサレタイカ!」

「うるさい! 私だって、やるときはやるんだ!」


 懸命にワイヤーを引っ張るリンカ。徐々にエイリアンも苦しそうに仰け反っていく。


「グァァ……コノ、コノォ……!」

「リンカさん、そっち引っ張ります!」

「お願い!」


 リンカからワイヤーの一方を受け取り、左右に向かって全力で引っ張る。

 エイリアンの首がどんどん閉まっていき、いよいよモスを手放してもがき苦しみ始めた。


「貴様ラァ! 人間ノ分際デ、ウチニ勝テルト……!」

「くっ……さすがに力が強い」


 エイリアンは一気に首の筋肉に力を入れ、レイとリンカを引っ張り返していく。

 かたや細身の女性、かたや運動なんてしばらくしていない男。


(2人がかりとはいえこのエイリアンの首を絞め殺すなんて……)


「お願いレイ君! ここで諦めないで!」

「……はいっ!」


 レイとリンカは最後の力を振り絞り、思いっきりワイヤーを引っ張りつづけた。


「「いけぇぇぇぇぇ!」」

「ギィアアアアアアァ!」


 甲高い悲鳴をあげながら、エイリアンは倒れて動かなくなった。


「はぁ、はぁ……やった……」

「勝った……? 私たち、勝ったの?」


 一気に力が抜け、レイたちは2人同時に床に崩れ落ちる。

 その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。


「すごい悲鳴が聞こえたけど、大丈夫ですか⁉」


(やばい、これが誰かに見られたら……)


「だ、大丈夫です! ちょっと演技の練習をしていただけで」


 すぐさま立ち上がり、扉をがっちりと押さえるリンカ。


「でも、さっきからすごい音が——」

「これも演技の一環なので……ちょっと今は覗かないで下さい」

「わ、わかりました……」


 扉の前の人たちが去った気配がして、ようやくホッとする2人。


「しかしこれ、どうしましょう……」

「と、とりあえず警察には連絡して……でもこれ信じてくれるかな」

「信じるも何も、エイリアンの死体がこんな堂々と置いていたら信じるしか」

「そう、だよね」


 散らかった床からスマホを拾い上げ、警察に電話を始めるリンカ。

 その間に誰も部屋に入ってこないよう、リンカに代わってレイが扉を抑える。


「あっ、もしもし警察ですか? 実は今、巨大な怪物みたいなのに襲われて……いや酔っぱらってません! 本当に襲われたんです!」


 やはりなかなか警察には話を信じてもらえないらしい。


「私も私の後輩も怪物に襲われて……とにかく来てください!」


(いよいよ、エイリアンの存在が公になるのか……)

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