迫りくる蟲
「襲撃警報! 襲撃警報! ハエ型エイリアンの大群が確認されました」
基地内に鳴り響く警報音。隊員たちが慌ただしく動き出す。
「グギィ!」
「ギィギィ!」
「躊躇するな! 迷わず駆除しろ!」
続々とハエたちが基地に到着し、隊員を襲い始める。
「グギギギィ!」
「うわぁ! 助けてくれぇ!」
油断していたところに突如として襲い掛かって来たハエ型エイリアンの大群。
訓練されている隊員たちとはいえ、突然のことに対応が追い付いていない。
「研究員たちは地下に避難! 警報が止むまで外に出るな!」
そんな中水嶋が銃を構えながら動き回り、隊員たちに指示を出していく。
「永野副隊長、あなたも地下に降りて屋内の警護を」
「承知しました!」
複数の隊員を率いて基地内へと入っていくケイ。その周囲をカナやシンジが援護する。
「如月隊員、内海隊員と合流して駆除に当たってください。決して1人では行動しないように」
「わかりました」
ダイスケを探しに行こうとするレイだが、そこに目を血走らせたタカシが襲い掛かる。
「逃げるんじゃねえよ! この人殺しがぁ!」
「やめろタカシ!」
勢いよく殴りかかってくるタカシを受け流す。それでもタカシはどこからか取り出したナイフを振り回しながら、レイに何度も切りかかった。
「こんなことして何になる! お前の両親は望んでないはずだ!」
「黙れ黙れ! お前に父ちゃん母ちゃんの何がわかる!」
「……くそっ」
タカシの相手をしている間にも、続々とハエどもがとびかかってくる。
「ギギィ!」
ストロー上の口を刺そうとしてくるハエをいなし、顎下に構えた右腕を支えにしてハエの首を大きくひねる。
「ギィィ!」
「ちっ!」
上手く殺そうとしたところで、他のハエの邪魔が入った。
「ほらほら、早く何とかしないと仲間が殺されちゃうよぉ? 俺の家族みたいになぁ!」
「いてぇっ!」
タカシの振りかざしたこぶしが、レイの頬に命中。思わず足を取られてその場に倒れ込んだ。
「さぁ、あの世で父ちゃん母ちゃんに詫びてくれよ!」
「レイ危ない!」
途端にモスが背中から飛び出し、ナイフを振りかざすタカシに糸を吹き付けた。
「うわっ、なんだこれ!」
唐突な目くらましを受け、タカシが怯んでいる隙に立ち上がって走り出す。
しばらく走ると、人間ほどの大きさのハエと素手で格闘しているダイスケを見つけた。
「ダイスケ! 加勢に来たぞ!」
「おうレイ! ちょっと待ってな」
ダイスケは2本足で立っているハエに足払いをかまし、体ごと倒れ込んでハエを押しつぶす。
そのままハエの首をがっしりと掴み、腹を踏みつけてハエの頭をぶち抜いた。
「よし、すぐに他の隊員の助けに入ろう」
手に持ったハエの頭をぶんぶんと振り回すダイスケ。
「うぇ……ちょっとその気持ち悪いのどこかにやってくれ」
「なんだよ、こんなんに気を取られてたら命がいくつあっても足りないぞ」
2人して走りだし、ハエと戦っている隊員たちの加勢に入る。
「水嶋隊長たちはどうした?」
「永野副隊長とカナ、シンジは地下の研究所に援護に向かった。水嶋隊長は……たぶんどこかで戦ってる」
うろついているハエの背中に飛び乗り、首からナイフを突き立てる。
「ギギィィ!」
突き立てたナイフを思いっきり引っ張ると、ハエ型エイリアンは断末魔を上げながら地べたに転がった。
「お前、最初見たときよりはかなり強くなったな」
「ああ、昔ならエイリアン一体でビビり散らかしてたところだ」
次々と現れるハエをなぎ倒し、攻勢を強めていく2人。
その間、基地からAKライフルを構えて出てくる神崎総司令とすれ違った。
「総司令! 無事でおられたんですね」
「如月隊員、これは一体どういう事態なんだ」
迫りくるハエたちに射撃しながら、ゆっくりと横方向に歩いていく。
銃弾を潜り抜けてとびかかって来たハエを、レイとダイスケが体術で支援。
少しずつではあるが、ハエたちの勢いが衰えていっているように見られた。
「なぜこんな大量のエイリアンどもが……一体なぜこの場所が知られた!」
怒りを見せる総司令に対し、レイが申し訳なさそうに答える。
「僕の友人が突然ここに現れて、おそらくその者がハエ族を引き連れてきたのだと思われます」
「まさか、あのGPSを入れた主じゃないだろうな!」
「も、申し訳ありません!」
舌打ちを挟みつつも、総司令は冷静に射撃を続けていく。
「お前たちはその人間をとらえろ。必ず捕まえて真実を吐かせるんだ」
「イエッサァ!」
だがその瞬間、基地上空に巨大な飛行物体が現れた。
「な、なんだあれは!」
「ハエだ……バカでかいハエがいるぞ!」
その影は基地全てを覆うほど大きく、羽ばたきはあたりの木々を激しく揺らす。
鍛え抜かれた隊員たちが本能で感じる危機感。エイリアンを含め、その場にいたすべての者がそれを見て固まっていた。
「ここに、ワシの大事な娘たちを殺した人間がいるのか」
拡声器から喋られたような、脳に直接話しかけられているような不思議な感覚。思わず耳をふさぐ者さえいる。
その時、レイの背中にいたモスが呟いた。
「王だ……蠅王が来た」




