牛耳る者
なんとかリンカの誤解を解き、エイリアンの捜索を再開したレイとケイ。だがいくら探し回っても見つからず、いつの間にか時刻は昼に。
ルーキー隊は一度食堂に集まり、作戦会議を行うことにした。
「こんな人ごみの中で作戦会議なんかして大丈夫なんですか?」
「木を隠すなら森の中、言葉を隠すなら騒ぎの中だよ」
勢いよく割りばしを割ってそばを啜りだすケイ。カナは日替わりランチ、シンジとレイはラーメンを注文していた。
「それで、これからどうします?」
「多分人が多い時間帯は、やっこさんも動かないだろうからねぇ」
「じゃあこのまま目撃情報を集めつつ、夜まで待ってから本格的に捜索再開と行こうか」
そこにラーメンを啜っていたレイが口を開く。
「でも最近、夜の不貞行為が多いからって授業棟は結構早くに締め出されるんですよ」
「不貞行為ってのは、いわゆるセッ——」
思わず口走りそうになるケイを、横のカナが制止する。
「年頃の女の子が、公共の場でそんなこと言っちゃいけませんよぉ」
「そもそも朝一からこんなにくまなく探したのに居ないって、これから捜索しても何にも見つからない可能性もありますよ」
すると横でラーメンのスープを飲んでいたシンジが喋り出した。
「自分、ドローンを使って上から見てみたほうが良いのではないかと思います」
「えっ?どうして」
「ここまで探していないということは、屋根に止まっている可能性が高いのではないでしょうか」
「あぁ、なるほど。それは盲点だったね」
昼食後、レイたちはドローンを取り寄せて大学に飛行許可を貰い、空からエイリアンを探すことにした。
すると……
「いた! これじゃないか⁉」
B号館の屋根に張り付いた、大きな緑の物体。
もしこのエイリアンに言葉が通じるとしたら、B号館の最上階からコミュニケーションをとることもできるかもしれない。
ケイが急いでB号館の階段を上がっていき、最上部の窓からエイリアンに声をかけた。
「おぉい、そこのエイリアン! 聞こえてるか⁉」
反応がない……と思いきや、エイリアンはその顔をケイに向けてきた。
「アノゥ、アナタ、レイサンデスカ?」
今喋ったのは屋根のエイリアンの方。どうやらコミュニケーションは取れるらしい。
「ワタクシ、レイサンヲ探シテイルンデスケドモ……」
「レイ? それなら下にいるよ。レイもあんたのことを探してる」
「ハァ! ソウナンデスネ!」
「ここじゃあれだから、場所変えさせてもらってもいい?」
「ワ、ワカリマシタ」
ドローンでエイリアンを大学の外に誘導し、人気のないところに連れ込む。
そこでようやく気付いたのだが、エイリアンはカメムシのような姿をしていた。
「カメムシ型エイリアン……今までに確認された例はないね」
カナとシンジが布にくるんでいた武器を取り出そうとすると、カメムシは怯えたような様子を見せた。
「ヒィィ! ヤメテクダサイ! ワタクシハ戦エマセン! 戦ウツモリモアリマセン!」
「カナちゃん、シンジ君、武器をしまって」
2人が武器をしまうと、カメムシの震えも収まった。
「ワタクシ、コノ星ニ来タハイイモノノ、戦ウ手段モナク、アルノハオ尻カラ臭イニオイヲ出セルダケデ」
「害意はなさそうだ。一旦このまま話を聞こう」
一度本部と連絡を取り、エイリアンを発見した旨を報告。回収用の車をよこすよう伝えた。
「それで君は……何のためにこの大学に来たって?」
「ハイ、アル方ニ“レイ”トイウ人間、“モス”トイウ蛾族ヲ探シテ来イト命ヲ受ケマシテ」
「僕たちのことを?」
「ア、アナタガレイサンナンデスネ。アトモストイウ蛾族ノ者ハ」
「このカバンの中にいる」
レイがリュックを2回叩くと、中からモスがひょっこりと顔を出した。
「それで、レイ君とモス君に何の用?」
「アル方ガオ呼ビデス」
「ある方、というのは?」
「ヒィィ!」
カメムシは頭を隠し、何かを恐れているような反応をした。
「ソレヲ教エルコトハデキマセン!」
「教えなさい」
「デキマセン!」
「教えないと殺すぞ」
「ソレデモ教エラレマセン!」
「じゃあ実験台にして死ぬより辛い目に遭わせて——」
「ハイ、教エマス!」
(それは怖いのかよ)
唐突に顔を上げるカメムシ。
「それで、一体どこの誰が、何の目的で僕たちを探していたんだ?」
「ハエ族デス。ハエ族ノ王カラ直々ニ、命ヲ賜リマシタ」
「ハエ族の王だって⁉」
リュックからモスが大きな声を上げた。
「ハエ族の王が、この星に来てるのか!」
「ハ、ハヒィ……」
レイはリュックを背中から下ろし、顔を出したモスに直接聞く。
「モス、ハエ族の王っていうのは、どこかの星の王になったハエってことか?」
すると今度は、モスも何かに怯えたような表情を見せた。
「違う。ハエ族全てを収めるハエの王だ。ハエ族の中で最も、力が強けりゃ権力もある」
「ハエ族の、テッペンってことか……」
「そうだ。そして今そのハエの王、いや蠅王がオレたちを狙ってる」
「そんな、何のために!」
カメムシの方を睨みつけると、カメムシは再び怯えた表情を見せた。
「ヒィィ! ワタクシハ存ジ上ゲマセン! タダ無理ヤリ脅サレテ、探シテ連レテ来イト名ヲ受ケタダケデ」
「本当か? 共謀してレイ君を殺そうとしているわけじゃないだろうな?」
「滅相モゴザイマセン! ワタクシガ人間ト争ウ意味モアリマセン!」
「やめてあげてくれ。このカメムシからは本当に敵意を感じない」
モスは怯えるカメムシをなだめながら続けた。
「おそらく、この星で幾度となく繁殖活動を邪魔したからだろう。レイとオレたちが殺したハエ族が、王の近縁だったかもしれない」
「それって、つまり……」
「蠅王は怒り狂って、オレたちを殺しにやってくるってことだ」
———ルーキー隊 始動 完———




