記憶
『私立青雲学院大学キャンパス内にて、巨大生物の目撃情報及び微量の放射線の反応が確認された。ルーキー隊の永野ケイ、黒瀬カナ、武智シンジ、そして如月レイの4名は対象の発見及び駆除に当たれ』
「まさか、レイ君の通ってる大学でまたエイリアンが確認されるなんてね」
「この大学、なにかエイリアンを呼び寄せるフェロモンでもあるんじゃない?」
「自分はただのまぐれだと思いますけど」
「はい、僕もまぐれだと思います。そう思いたいです……」
天気は曇り。昨日よりぐっと気温が冷え込み、学生たちの中にも長袖が増えてきている。
「それじゃあ二手に分かれようか。うちはレイ君と」
「じゃああたしはシンジ君とですねぇ」
大学入り口から二手に分かれ、校内を順に捜索していく。
「あの、1人ずつに分かれても良かったんじゃないですか?」
「ふふん、それはねぇ」
ケイは楽しそうにレイの方を向く。
「うちがレイ君とちょっとお話してみたかったからだよ」
「話、ですか」
「あっ、ちょっと嫌そうな顔した! これってパワハラになる?」
「いや全然、嫌な顔とかはしてませんよ」
「ホントかなぁ」
ケイもレイとはほとんど年齢が変わらない、というかおそらく一緒のため、2人して大学内を歩いていても何の違和感もない。
これまで1人行動がほとんどだったレイは、改めて大学内を女性と歩くのは緊張するものだった。
「何か僕に聞きたいことでもあるんですか?」
「うぅん、例えば君のご両親の事とか」
途端に顔が引きつったレイ。だがケイも今度は笑みを崩さない。
「言いたくなかったら言わなくていいよ。でも部下がどういう境遇を持っていて、どんな価値観で生きているのか知るのは、君の命を預かる上司として大切なことだって」
「それはケイ副隊長の持論ですか」
すると敬は人差し指をレイの口に当てる。
「ここで副隊長予備は禁止。せめてケイさんって呼んで」
「わかりました……で、ケイさんの持論なんですか?」
「いや、水嶋さんから教わったの」
近くにあるE号館から中に入り、人気のないところまでくまなく探していく。
「それで、レイ君のご両親が亡くなったのはいつ?」
レイはぼんやりと昔の記憶を思い出す。
「5歳くらいの時だったと思います。ほんの少しだけ、両親の記憶があるので」
「亡くなったのはどうして? 事故とか?」
「確か僕が1人でどこかに行っていて、その間に事故に遭って亡くなったって聞かされた、ような……」
「あんまり覚えてないの?」
「そうですね……そもそも覚えてないのか、記憶から消してしまったのか」
しばらく沈黙が流れるも、ケイはあまりその気まずさを気にしていないようだった。
「じゃあ今度はうちの番ね」
「えっ、ケイさんも喋ることがあるんですか?」
「何、私はのほほんと生きてこの隊に入ったと思ってるの?」
「いや、別にそういうわけじゃ……」
言われてみれば、ACDという機密組織に入っている隊員全員が、何か事情を抱えてACDを知ったと言っても過言ではないだろう。
「うちはねぇ、小学校の頃に家族がみんな殺されちゃったの」
「えっ、それってエイリ——」
その言葉を出そうとしたレイの口を、再びケイがつぐませる。
「うん、殺されたんだ。あいつらに」
「そうだったんですね……」
「身寄りもなかったから、その時出来たばかりの隊に引き入れられて、ずっと訓練ばっかりしてた」
「大変でしたね……」
「多分それくらいの経験してる人は隊にも結構いると思うよ。でもレイ君ほど色々な敵に出会った人はいないなぁ」
「じゃあケイさんはあいつらに復讐するために、戦い続けているんですか?」
「いや? そんなことはないよ」
ケイはあっけらかんとした様子でそう答えた。
「確かにうちの家族を殺したやつは憎いけど、そいつももう駆除されちゃったし。うちはなんとなく隊のみんなが好きだからここにいるだけ」
「そう、なんですね」
「それに本当にあいつら全部が憎かったら、モス君のこともすぐ駆除しようって提案してるよ」
ポンポンとモスの入ったリュックを叩くケイ。
「それよりレイ君はどうして隊に入ったの? 普通の人生を生きていく選択肢もあったんでしょ?」
「僕は……モスの夢に惹かれたんです。この星の王になるっていう夢に」
「あぁ、確かそんなこと言ってたねぇ」
「なんでか分からないですけど、こいつが夢を話してる姿を見て、僕もワクワクしたんです。こいつならなにかすごい景色を見せてくれるんじゃないかって。根拠はないですけど」
その例の語り口を見て、ケイも少し嬉しそうにした。
「いいねいいねぇ! うちもその景色、見てみたい!」
E号館を離れ、道路を挟んだ向かいにある学生会館へと向かう。
「それもいいけど、レイ君は何か夢とかないの?」
「僕は、昔から夢なんて何もなくて」
「何でもいいんだよ? 彼女と幸せな毎日を送りたいとか。ほら、こんな風に!」
突然レイの腕に抱き着いてくるケイ。その姿はまさしく、青春を謳歌している大学生そのものだろう。
だがその目の前に突然、目を見開いたポニーテールの女性が現れた。
「レイ君……やっぱりその女の人と付き合ってたの⁉」




