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蛾王~第一章 幼虫期~  作者: 秋一番
ルーキー隊 始動
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記憶

『私立青雲学院大学キャンパス内にて、巨大生物の目撃情報及び微量の放射線の反応が確認された。ルーキー隊の永野ケイ、黒瀬カナ、武智シンジ、そして如月レイの4名は対象の発見及び駆除に当たれ』


「まさか、レイ君の通ってる大学でまたエイリアンが確認されるなんてね」

「この大学、なにかエイリアンを呼び寄せるフェロモンでもあるんじゃない?」

「自分はただのまぐれだと思いますけど」

「はい、僕もまぐれだと思います。そう思いたいです……」


 天気は曇り。昨日よりぐっと気温が冷え込み、学生たちの中にも長袖が増えてきている。


「それじゃあ二手に分かれようか。うちはレイ君と」

「じゃああたしはシンジ君とですねぇ」


 大学入り口から二手に分かれ、校内を順に捜索していく。


「あの、1人ずつに分かれても良かったんじゃないですか?」

「ふふん、それはねぇ」


 ケイは楽しそうにレイの方を向く。


「うちがレイ君とちょっとお話してみたかったからだよ」

「話、ですか」

「あっ、ちょっと嫌そうな顔した! これってパワハラになる?」

「いや全然、嫌な顔とかはしてませんよ」

「ホントかなぁ」


 ケイもレイとはほとんど年齢が変わらない、というかおそらく一緒のため、2人して大学内を歩いていても何の違和感もない。

 これまで1人行動がほとんどだったレイは、改めて大学内を女性と歩くのは緊張するものだった。


「何か僕に聞きたいことでもあるんですか?」

「うぅん、例えば君のご両親の事とか」


 途端に顔が引きつったレイ。だがケイも今度は笑みを崩さない。


「言いたくなかったら言わなくていいよ。でも部下がどういう境遇を持っていて、どんな価値観で生きているのか知るのは、君の命を預かる上司として大切なことだって」

「それはケイ副隊長の持論ですか」


 すると敬は人差し指をレイの口に当てる。


「ここで副隊長予備は禁止。せめてケイさんって呼んで」

「わかりました……で、ケイさんの持論なんですか?」

「いや、水嶋さんから教わったの」


 近くにあるE号館から中に入り、人気のないところまでくまなく探していく。


「それで、レイ君のご両親が亡くなったのはいつ?」


 レイはぼんやりと昔の記憶を思い出す。


「5歳くらいの時だったと思います。ほんの少しだけ、両親の記憶があるので」

「亡くなったのはどうして? 事故とか?」

「確か僕が1人でどこかに行っていて、その間に事故に遭って亡くなったって聞かされた、ような……」

「あんまり覚えてないの?」

「そうですね……そもそも覚えてないのか、記憶から消してしまったのか」


 しばらく沈黙が流れるも、ケイはあまりその気まずさを気にしていないようだった。


「じゃあ今度はうちの番ね」

「えっ、ケイさんも喋ることがあるんですか?」

「何、私はのほほんと生きてこの隊に入ったと思ってるの?」

「いや、別にそういうわけじゃ……」


 言われてみれば、ACDという機密組織に入っている隊員全員が、何か事情を抱えてACDを知ったと言っても過言ではないだろう。


「うちはねぇ、小学校の頃に家族がみんな殺されちゃったの」

「えっ、それってエイリ——」


 その言葉を出そうとしたレイの口を、再びケイがつぐませる。


「うん、殺されたんだ。あいつらに」

「そうだったんですね……」

「身寄りもなかったから、その時出来たばかりの隊に引き入れられて、ずっと訓練ばっかりしてた」

「大変でしたね……」

「多分それくらいの経験してる人は隊にも結構いると思うよ。でもレイ君ほど色々な敵に出会った人はいないなぁ」


「じゃあケイさんはあいつらに復讐するために、戦い続けているんですか?」

「いや? そんなことはないよ」


 ケイはあっけらかんとした様子でそう答えた。


「確かにうちの家族を殺したやつは憎いけど、そいつももう駆除されちゃったし。うちはなんとなく隊のみんなが好きだからここにいるだけ」

「そう、なんですね」

「それに本当にあいつら全部が憎かったら、モス君のこともすぐ駆除しようって提案してるよ」


 ポンポンとモスの入ったリュックを叩くケイ。


「それよりレイ君はどうして隊に入ったの? 普通の人生を生きていく選択肢もあったんでしょ?」

「僕は……モスの夢に惹かれたんです。この星の王になるっていう夢に」

「あぁ、確かそんなこと言ってたねぇ」

「なんでか分からないですけど、こいつが夢を話してる姿を見て、僕もワクワクしたんです。こいつならなにかすごい景色を見せてくれるんじゃないかって。根拠はないですけど」


 その例の語り口を見て、ケイも少し嬉しそうにした。


「いいねいいねぇ! うちもその景色、見てみたい!」


 E号館を離れ、道路を挟んだ向かいにある学生会館へと向かう。


「それもいいけど、レイ君は何か夢とかないの?」

「僕は、昔から夢なんて何もなくて」

「何でもいいんだよ? 彼女と幸せな毎日を送りたいとか。ほら、こんな風に!」


 突然レイの腕に抱き着いてくるケイ。その姿はまさしく、青春を謳歌している大学生そのものだろう。

 だがその目の前に突然、目を見開いたポニーテールの女性が現れた。


「レイ君……やっぱりその女の人と付き合ってたの⁉」

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