大軍勢
「やっぱり近くに仲間がいたんだ!」
「どうする、さすがにこの量はさばけないぞ!」
急いで階段を降り、建物の中に身を隠すも、あっという間にトンボ型エイリアンの群れはレイのいる廃墟に到着。先ほどのエイリアン程の大きさはない物の、その小ささを活かし、開いている窓から飛び込んでくる。
「食ワセロ、食ワセロ!」
「これ、拳銃は使っちゃダメなやつかなぁ!」
とびかかってくるトンボを両腕で受け止め、そのまま床に落として首元を踏みつける。
だがとどめを刺そうとする間にも、廃墟の隙間を縫って他のトンボたちが大量に飛んできていた。
「さすがにこれは試験外だろ! 救助とかはまだこないのか⁉」
さすがにこの量のエイリアンが飛んで来れば、外からでも異変は感じ取れるはず。
だがあまりにもトンボの数が多く、助けを求めることも外の様子をうかがうこともできない。
「一旦どこかに身を隠して……ここだ!」
飛び交うトンボをかわしつつ、廊下の奥に見つけた部屋に逃げ込んだレイ。1匹のトンボが飛び込んでくる寸前に扉を閉めることができた。
「ひとまず軍曹に連絡を……あれっ?」
連絡用に預かっていたトランシーバーが無くなっている。
「やばい、どこかで落としたか?」
「何探してるんだ?」
「トランシーバーだよ。肩にかけてあったやつ」
「ああ、それならさっきデカいトンボ型と戦ってた時に、ヒモ食いちぎられて落ちてたぞ」
「はぁ⁉」
なんとレイは大型のトンボと戦っていた際に、屋上にトランシーバーを落としてきてしまったのだ。
「なんでその時言わないんだよ! 結構余裕で勝った感じでカッコつけてたのに!」
「いや、気付いてると思ってて、でも拾わないのならもういいかなって……」
「おまっ、どうすんだよこれ」
羽音からして、外には続々とトンボが集まってきている。一応窓はあるが、この3階という高さから飛び降りるのは難しいだろう。
「……屋上に戻ろう。とにかくトランシーバーを取り戻して、連絡を取らないと」
「しかしあんなところに出たら、一瞬でトンボどもの餌だぞ?」
するとレイは腰に付けた物を手に取る。
「閃光弾が2つある。日光下であいつらに効くかはわからんけど、一瞬でも隙が作れればなんとか」
「お、オレはリュックの中に隠れておくからな」
「ああ、好きにしてろ!」
レイは扉を開けると同時に、閃光弾のロックを解除して部屋の奥に投げ込んだ。
「ギィァァァ!」
まばゆい選考とともに響く轟音。狙い通りトンボたちはいっせいに目をくらませ、地面に落ちる。
「思った通り、今のうちに屋上に行くぞ!」
再びトンボたちの間をかいくぐり、階段から屋上へ向かう。
「閃光弾はあと1つ……ちゃんと作動してくれよ」
レイは屋上の扉を勢い良く開け、そのまま閃光弾をまっすぐ投げ込んだ。
「ギィァァ!」
「ギィィィ!」
外を飛んでいたトンボたちの多くが目をくらませたが、まだ周囲に大勢いる。
レイはすかさず屋上に飛び出て、エイリアンの死体横に転がっていたトランシーバーを拾い上げた。
「こちら如月! 緊急事態発生! 救助を要請す——」
『見えている。その場を動くな』
刹那、レイを背後から襲おうとしていたトンボが爆ぜ散った。遅れて銃弾を発射する音が聞こえる。
『すでにルーキー隊が向かっている。そのまま戦闘を継続しろ』
「了解……ってうおぉ!」
脇をとびかかったトンボをギリギリでかわす。
『こちらから敵を狙撃している。お前は邪魔だから屋内に引っ込め』
「りょ、了解!」
すぐさま体を翻し、階段に向かって走り出したレイまっすぐ階段を降りると、ちょうど2階で大型のトンボと遭遇した。
「おいおい、こいつは大型だな!」
出会い頭に噛みついてくるトンボを、逆手持ちしたナイフでギリギリ抑え込む。
「くっ……やっぱり力は強いな!」
合気で流せば楽に対処できるが、狭い空間で力勝負になると分が悪い。
じりじりと腕が押され、階段の方に追いやられていく。
「くそっ! 誰か、誰か早く!」
「グギィ!」
その時、トンボ型エイリアンの身体を一本の刀が貫いた。
「け、ケイ副隊長!」
「お待たせ、ここまでよく耐えたね」
後ろにはカナやシンジ、ダイスケも来ている。
「とりあえずこの辺りのエイリアンを片付けちゃおう! みんな、離れすぎないでね」
ケイの一声で一斉に動き出すルーキー隊。
「レイが隊に入ってからの初仕事だ! 豪快にいくぜぇ!」
なんと素手で殴りかかっていくダイスケ。トンボの羽を握り、ちぎり落として振り払っていく。
「レイ君、入隊1か月にしちゃあすごい活躍じゃん!」
「自分も、レイさんみたいになれるように頑張ります!」
なぎなたのような物を振り回すカナ。シンジは後方からクロスボウで一体ずつトンボを撃ち落としていく。
「すごい……みんな本当にプロの兵士だ」
それぞれが得意な武器を使用し、襲い掛かるトンボ型エイリアンをなぎ倒してく。
それはまさに痛快と呼べるほどの勢いで、どんどんトンボたちは駆除されていった。
「僕も負けてられないな、モス!」
「えっ、ごめん何の話?」
「……」
つくづくこいつは、マイペースなやつだと実感するレイだった。




