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蛾王~第一章 幼虫期~  作者: 秋一番
Alien Containment Division
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特命隊員試験

 本来ACD隊員は4人以上のチームを組んで活動に当たる。それはエイリアンの行動特性や生態などを考慮したうえでのACD上層部の判断であり、基本的にこのルールを破ることは許されない。


 しかし中には、複数人数による活動が困難な場面も存在する。その場合に1人潜入捜査にあたり、個人でエイリアンを撃破することを目的として選ばれるのが特命隊員である。


 特命隊員にはC級~A級まで存在し、C級にさえ合格すれば単独での任務は可能である。ちなみにA級に合格すればほぼすべての任務に単独であたることができる。


 学生としての皮をかぶりながら隊員として活動する必要のあるレイは、入隊1ヵ月という異例の速さで特命隊員試験を受けることになったのだった。


「標的は山間部の廃墟に潜んでいると思われる、トンボ型エイリアン1体の駆除。これを制限時間内に、指定の武器を利用して成し遂げてもらう」


 A級ともなればほぼ素手、あっても武器1つでの駆除が必須となるが、そのあたりC級の試験は難易度が低い。数種類のサバイバルナイフに加え、緊急用の閃光弾、初心者向けの拳銃まで用意されている。


「拳銃は一通り使い方を教えてあるが、緊急時以外は使用しないように。引き金を引いた瞬間、試験は不合格だと思え」

「はいっ! それで……」


 レイはすぐ側に置かれたリュックの方を見下ろす。


「もしかして、またモスを引き連れて試験に?」

「その通りだ。基本的に如月隊員の活動はモスを引き連れてになる」


(こいつ、役に立てばいいが……)


 モスはまたリュックの中で眠りこけている。


「車両で廃墟の100メートル手前まで送る。そこで車を降りた瞬間から、試験は開始だ」


  *


「それでは試験を開始する。エイリアンを駆除後、ここまで死体を持って来れば合格だ」


 車を降ろされ、モスの入ったリュックを担いで奥に見える廃墟を目指すレイ。


「モス起きてるか? しっかりサポートしてくれよ」


 するとようやく、モスは大あくびをしながらリュックから這い出てきた。


「ふわぁぁ……目標は何だっけ?」

「トンボ型のエイリアンだ。トンボって言うと、かなり手ごわそうだなぁ」

「トンボ型がこの廃墟に1匹だけ? 妙だな」

「妙?」


 廃墟に足を踏み入れるレイ。かつて結核患者の病院となっていた場所らしいが、今となってはその名残は何もない。


「トンボ型は比較的自由に外を飛び回る種族だ。それに群れこそ作らないものの、固まった場所に住んでいることが多い」

「じゃあどうしてこんな廃墟の中に一体だけ……」

「弱ってここに逃げ込んだとかなら考えられるけど」

「それなら試験も楽になって、助かるんだがなぁ」


 足音をたてないよう、ゆっくりと1階を見回っていく。中は恐ろしいほど静かで、とてもエイリアンがいるようには思えない。


「いないぞ? トンボ型エイリアンの存在自体なにかの間違いだったんじゃないのか?」


 2階、3階と上がりエイリアンを探すが、やはりエイリアンの姿はない。


「早く出てきてくれよぉ。制限時間もあるんだしさぁ」


 さらに階段を上がり、屋上から外に出る。

 するとレイの目の前に、巨大な影が現れた。


「……わぉ」


 振り返り、上を見上げると、屋根に捕まっている巨大なトンボ。広げた羽は8メートルはあろうか。


「ヤット獲物ガ来タゼ」

「あぁ……とりあえず、戦うか」


 飛び上がるトンボ、レイは後ずさりしながら腰のサバイバルナイフに手をかける。


「久々ノ食イ物ダァ!」


 あんぐりと口を開け、レイめがけて一直線に飛んでくるトンボ。レイはその大あごにナイフを引っかけながら体を捻って上手くかわす。


「大人シク俺ニ食ワレロヨォ!」


 いったん距離を取り、急旋回して再びこちらに向かってくるトンボ。


「モス、あいつに向かって糸を吐けるか?」

「ああ、オレも1か月間訓練してたんだ」


 モスを肩に乗せ、姿勢を低くして再び受け流す態勢を取る。


「力こそ人間以上だが、使い方は一直線で単調だな」

「食ワセロォ!」


 顎を開きながらとびかかってくるトンボ。レイは寸前で攻撃をいなし、その間にモスがトンボの右羽に糸を張り付けた。


「ナ、ナンダコレェ!」

「ふんっ!」


 モスの糸を掴み、思いっきり下に向けて引っ張る。


「ヌオォ!」


 トンボは体勢を崩し、そのまま高度を下げ屋上の柵に激突した。


「意外と簡単だったな」


 気絶しているトンボの方に近づき、左手でトンボの首を持ち上げる


「これで試験終わりか。案外簡単だったな」


 そう言って、レイは急所であるトンボの首元にナイフを突き立てた。


「ギイィィィィィェェェェェ!」


 山中に響く断末魔。思わず耳を塞いでしまうような大音量だが、レイはあまり気にも留めていない。


「……さて、帰るか」


 だがそう言ってトンボの死体を担ごうとした途端、目の前の山々の景色に異変が起こっていることに気付いた。

 山の中から出てくる無数の飛行物体。それらは徐々にレイのいる廃墟へと近づいてくる。


「大量のトンボ型エイリアンが飛んでくる! こいつが呼び寄せたんだ!」


———Alien Containment Division 完———

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