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蛾王~第一章 幼虫期~  作者: 秋一番
Alien Containment Division
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護送車に揺られて

「……あの、僕はこれから一体どこに連れて行かれるんですか?」


 ユウトがモスのことを告発してから数十分後、護送車のような物がキャンプ場に到着した。

 リンカが「私も一緒にモス君をかくまってた!」と言っていたが、話を聞いてもらえずユウトや他のメンバーたちにキャビンに連れられて行ってしまったようだ。

 レイはその護送車に乗せられ、モスも巨大なカプセルのような物に入れられてしまった。


「水嶋さん、僕は一体何の罪で逮捕されるんですか」

「……」

「……」


 一緒に乗った水嶋も永野も、口をつぐんだままレイの方を見ることすらない。


「どうして2人とも、何も言ってくれないんですか……」


(僕がモスのことを黙っていたから? 2人のことを騙していたから? エイリアンと生活することは、それほどマズいことだったのか?)


 車は砂利道にその体を揺らしながら、山の奥へと進んでいく。


「モス大丈夫か? その中で呼吸とか——」

「エイリアンとコミュニケーションを図らないでください」


 冷たく水嶋に注意され、黙ってうなだれるレイ。モスはレイに向かって大きく頷くだけした。

 沈黙のまま揺られ、2時間ほど経っただろうか。護送車はある建物の前でようやく停止した。


「降りてください」


 水嶋の案内のまま、車を降りるレイ。その後をモスが入ったカプセルを持った永野が続く。


「ここは……」


 山の中に突如として現れた建物。

 そしてその施設の前に、何人もの銃を抱えた兵士が列をなして待っていた。


「ここは、自衛隊の基地とかですか?」

「こちらから良いというまで質問は禁止です」


 これまでの対応とは打って変わって、鬼軍曹のようなことを述べる水嶋。

 そのまま黙って歩き出す水嶋について行くと、兵士たちもそれを取り囲んで同じ方向に歩き出す。


(もしかして、これがエイリアンに関する施設、なのか……?)


 自動扉から入ると、中は学校のように長い廊下によってさまざまな部屋に分かれている。


「まずは身体検査を受けていただきます。長期にわたるエイリアンとの接触、何か身体に異常をきたしていてもおかしくおりません」


 階段から地下に降りると、研究施設のような部屋がずらりと並んでいる。


「以前受けた検査より、より精密なものを受けていただきます。くれぐれも、脱走などは計らないように」


(こんなところで脱走なんて、できるわけないだろ……)


 両脇には銃を持った兵士ががっしりと構えている。手錠こそされていないものの、まるで大罪を犯したような気分だ。


「ここに入ってください。あとは隊員の指示に従うように」


 入れられたのは病院の診療所のような部屋。中で研究員らしき人が1人座っている。


「ここで服を脱げ」


 強面兵士に言われるがまま、1枚ずつ服を脱いでいくレイ。


(プライバシーもくそもないのか……これじゃあ本当に刑務所だ)


 服を脱いだ後体中隅々をチェックされ、心電図や血液検査が行われる。

 さらに部屋を移ってX線写真、CTスキャンなどありとあらゆる検査を受けさせられ、気付けば昼になっていた。


「しばらくここで生活してもらう」


 別の服を用意され、檻付きの部屋が並んだ3階に連れて行かれたレイ。その中の1つの扉を兵士が明けた。


「ここ……独房じゃん」


 4畳もない空間にちゃぶ台とベッドが敷かれ、奥には間仕切りしかないトイレと洗面台。


「昼食を用意する。ここで待っていろ」


 しばらくして持ってこられた昼食は、腹の足しにもならないほどの量。2分でその食事を平らげ、レイは布団に横になった。


「モスは大丈夫かな……実験台にされたりとかしていないかな」


 それにしても、あの優しかった水嶋たちがどうしてこんなにも手のひらを返したような態度を取ったのか。それがレイにとって大きな疑問だった。


「眠い……そういえば昨日の夜からずっと眠っていなかったな」


 ゆっくりと目を閉じるレイ。そのまま夢の中に落ちていきそうになった時、誰かが扉を叩いた。


「面会だ。出てこい」


 鍵が開き、錆びた音を立てて扉が開く。


(くそっ、眠れそうなところだったのに……)


 重い身体をなんとか起こし、扉をくぐって兵士について行く。

 1階にある面会室に通さると、ガラスの奥には水嶋と永野の姿があった。


「水嶋さん! これはいったいどういうことなんですか! なんで僕が刑務所に入れられてるんですか!」


 焦って質問攻めにするレイに対し、水嶋はいたって冷静に答える。


「正確には刑務所ではありませんが……理由を言えば如月さん、あなたにはエイリアンと共謀して国家を転覆しようとした容疑がかかっています」

「共謀⁉ 転覆⁉ そんなわけありません! 僕はただ……」

「審議については、これからのあなたとあの毛虫型エイリアンに対する尋問が行われてからになります」

「そ、それより水嶋さん、あなた怪物がエイリアンだったってことは知っていたんですか」


 水嶋はコクリと頷いた。

「私も謝らないといけません。実は私はもう刑事という役職を騙っていましたが、正体は違うのです」

「それって、この前水嶋さんが言っていた左遷先っていう……」

「はい、その通りです」

「じゃ、じゃあここは警察署とかじゃないんですか? ここはどこなんですか!」


 水嶋はゆっくり、はっきりとその名を口にした。


「対異星人防衛機構、Alien Containment Divisionです」

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