危ない誘惑⁉
トイレを出てからしばらくして、不思議そうにサラダを持ったタカシが帰って来た。
「ホントにサラダで良かったのか?」
「ああ、僕は今日これでいい……」
「まあそれならいいけど」
テーブルに酒の缶とおつまみを広げるタカシ。レイはタカシの目を盗んでカバンの中にサラダを突っ込む。
「おぉ、これが人間の作った草か……結構うまいな」
むしゃむしゃとサラダを口に入れ込むモス。しばらくすると満腹になったのかカバンの中で静かに眠りだした。
「——それでさぁ、そいつ酒の飲み過ぎでトイレの中でぶっ倒れてたみたいで!」
「あははっ、そりゃそんなペースで飲んでたらな」
モスが眠りについてから、気に掛けることがなくなったレイはタカシのとの会話を楽しんでいた。
気づけばタカシの家で飲み始めてから1時間半が経過。
そんな時、2回のノックの後部屋の扉が開いた。
「カップケーキを焼いたんだけど、食べる?」
入ってきたのはタカシ母。
「ああ貰う貰う! ちょうど甘いものが欲しかったんだよ」
「ありがとうございます。いただきますね」
即座にケーキを手に取り口に放り込むタカシ。一方のレイはもう少し後に取っておこうと机の上に置きっぱなしにしていた。
それから十数分後の出来事……
「そういえば、憧れの先輩って人とはどうなったんだよ?」
「いやぁ全然。まだ2人きりでご飯にも誘えてないよ」
レイには同じサークルで気になっている女性の先輩がいた。
その女性の名前は斎藤リンカ。茶色のポニーテールが特徴的で、同じサークル内でも憧れている人は多い。
「昨日もサークルの飲み会があったんだけど、結局2次会にも行けなかった」
「なんだよ玉が小せぇなあ! 男ならどぉんと構えてバーにでも誘えばいいんだよ!」
「なぁんか、タカシの言う通りにはしないほうが良い気がするんだよな」
タカシはレイとは対照的に、女性にはグイグイ行くタイプだ。そのため今まで多くの彼女を付き合ってきたが、すぐに別れることも多かった。
「いいか? 例えばその先輩が飲み会で隣の席に座ったら——」
「タカシ? タカシ⁉」
立ち上がろうとして、突然床に倒れ込むタカシ。急いで具合を確認するレイだが、タカシは普通に呼吸をしていたようだった。
「なんだ、急に眠っただけかよ」
「おっ、やっと静かになったか」
タカシが眠ったのを見計らって出てくるモス。
「おいまだ出てくるなって。おばさんとかいるんだし」
なんてことを言っていると、コンコンと扉をノックする音が。
「ほら来た。早く隠れろ」
「痛っ。もうちょっと丁寧に入れろって!」
レイがモスをカバンに突っ込んだ瞬間、部屋の扉が開きタカシ母が入ってくる。
「あら、レイ君はまだ眠ってないの?」
「へっ?」
タカシは眠っちゃったの? なら話は分かる、だがレイがまだ眠っていないのかとは、どういうことなのか。
「ああ、まだカップケーキ食べてくれてないんだ」
タカシ母は机の上のカップケーキを拾い上げ、レイの方に近寄って来た。
「早く食べてよ。せっかくおばさんが作ってあげたのに」
「ああいや、それは……」
「ほら、早く食べて」
無理やり口にねじ込もうとする手を払いのけるレイ。
何かがおかしい。レイはタカシ母の異様な雰囲気を感じ取っていた。
「もう、どうやったら食べてくれるの……あっ、そうだ」
タカシ母は突然、身に着けていたエプロンの紐をほどきだす。
「もし食べてくれるなら、いいことしてあげる」
「は? いやそれは……」
エプロンを雑に投げ捨て、今度は着ていた服を順番に脱いでいく。
「レイ君、おばさんのこと気になってたでしょ? チラチラ見ていたの、気付いていたんだから」
タカシ母はあっという間に下着姿になり、じりじりとレイの方へ近づいていく。
「な、何やってるんですか! 自分の子どもの前で、なんて破廉恥な!」
「そんなこと言って、本当は嬉しいくせに」
タカシ母はレイのことを押し倒し、持っていたカップケーキを自分の口に含めた。
「自分で食べられないなら、おばさんが食べさせてあげる……」
「ちょっ……!」
そのままレイに口移しするタカシ母。歯ですりつぶされ、生暖かくなったケーキがレイの口に流れ込んでくる。
(甘い、けどどこか苦みが……?)
「変な味がする? ごめんなさい、私の口紅のせいかしら」
レイはその妖艶な姿に圧倒され、思わず口に移されたケーキを飲み込んでしまった。
「はい、よくできました。じゃあこれもやってあげないと」
そう言うとタカシ母はブラジャーを外して軽く態勢を組み換え、そのたわわな胸をレイの顔面に向かって押し付ける。
(うわぁ、女性の胸ってこんなに柔らかいんだ……)
顔全体で感じる柔らかい感触。次第にレイの意識が遠のいていく。
(呼吸ができない……それに頭がボーっとして、寝落ちしてしまいそうだ)
「……そろそろ眠ったかしら?」
レイの様子を見ながらゆっくり体を起こすタカシ母。するとそのままレイのカバンに近づき、中に手を突っ込んだ。
「こぉんな所に隠れていたのね。悪い子だわ」
「や、やめろ! 放せ! そこ持ったら結構痛いんだぞ!」
カバンの中からモスを引きずり出すタカシ母。頭の先っちょを持たれ悶えながらなんとか逃げ出そうとするモス。
(しまった……モスが、見つかった……)
だが今のレイにそれを何とかする力はない。すっかり体全体の筋肉から力が抜け、床にべったりと倒れ込んだまま。
(まさかさっきのケーキ……睡眠薬とかが……)
「ありがとうレイ君。わざわざ連れてきてくれて」
こちらに恐ろしいような、にこやかな笑顔を向けるタカシ母。レイの視界はゆっくり暗くなっていき、やがてそのまま気を失ってしまった。




