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蛾王~第一章 幼虫期~  作者: 秋一番
湖畔の激突
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湖のエイリアン

「あれは……ゲンゴロウ!」

「助けてくれぇ! 死にたくないぃぃ!」

「射撃準備、犠牲者を出すな!」


 一斉に背後に銃を噛める警察官たちだが、ゲンゴロウ型エイリアンは警察官を加えたまま湖の中へと潜っていった。


「そ、そんな……」


 あっけにとられる一同。一部の警察官たちはそれを見て戦意を失くしたのか、徐々に隊列を乱していく。


「い、いやだぁ! こんな化け物がいるなんて聞いていない!」

「落ち着きなさい! 冷静に対処すれば恐れる相手ではありません」

「でも、もういきなり1人やられました!」

「カマキリが来る!」


 堂々と隊列のど真ん中に着地したカマキリ型エイリアン。いきなりカマを振り回し始め、警察官たちはあたふたと逃げ回りだす。


「これだから意識の低い公務員は——」

「うちが食い止めます!」


 果敢にもカマキリにとびかかっていく刀の女性。振り回されるカマを受け流しながら時間を稼ぐ。


「まさか、このキャンプ場に2体も怪物がいたなんて……」

「湖の方は後にして、まずはあのカマキリを片付けましょう」


 懐から拳銃を取り出し、銃口をまっすぐカマキリの方に向ける水嶋。

「今ここで撃ったらあの人に当たるかもしれません!」

「大丈夫です。我々はそのための訓練を受けています」


 上手くカマキリの背中に回りながら攻撃をいなしていく女性。こちらが銃を向けていることに気付いている様子はない。

 だが水嶋は銃の撃鉄を降ろし、じっくりと狙いを定め始めている。


「……永野隊員、伏せろ!」

「はいっ!」


 その声を聴いた瞬間、長野という女性は大きく股を開いて仰け反り姿勢を低くした。

 間髪入れずに射出された銃弾。しかしカマキリは瞬発的に体を動かしてそれをかわす。


「外しましたか……やつはかなりの手練れのようですね」


 再び撃鉄を降ろし、銃口をカマキリに向けなおす。


「伏せろ!」

「はいっ!」


 しかし、またしても弾丸は命中せず。カマキリの細長い体に当てるのはかなり難易度が高いらしい。


「……くっ!」

「永野隊員、大丈夫ですか!」


 巨大なカマが永野の肩をかすめ、少量だが血が飛び散る。


「仕方ない、こちらも接近します」

「水嶋さん、危ないですよ!」


 永野に近づき加勢に入る水嶋。カマキリの攻撃をかわしながら銃を撃ち込むが、カマキリはどれもするりとかわしてしまう。


「レイ、カマキリ族はかなり手ごわい。このままじゃ2人ともやられるぞ」

「しかしどうやって……」


 するとモスは、スルスルと口から糸を吐き出した。


「オレの糸を使って足を引っかけるんだ。バランスさえ崩してい舞えば一気に攻撃が入る」

「しかしそんなことしても2人邪魔になるだけで——」

「ぐぁ!」


 鋭いカマが水嶋の足に直撃。足をすくい上げられた水嶋は大きく転倒する。


「隊長! 大丈夫ですか!」


 水嶋に振り下ろされたカマを、すんでで永野が受け止める。だが肩に負った傷のせいで、力ではかなり押し負けているようだった。


「行けレイ! 俺の糸の強度だけは保証する!」

「えぇい、やるしかない!」


 糸を握りしめ、カマキリに向かって走り出すレイ。警察官の間をすり抜け、カマキリの足元へと到達する。


「如月さん、危険です!」

「2人とも、すぐに助けます!」


 永野が何とか押さえつけてくれていたおかげで、糸は簡単にカマキリの足に縛り付けられた。


「グギィィ!」


 異変に気付いたのか、ターゲットをレイの方に変えるカマキリ。レイに向かって素早くカマを振り回す。


「これでどうだ!」

「グギィ!」


 レイが糸を引っ張ると、大きく態勢を崩すカマキリ。その隙に水嶋が立ち上がり、膝をついて銃を構える。


「ナイスです如月さん。頭を下げて!」


 糸を体に巻き付けながら倒れ込むレイ。

 その瞬間銃声が響き、カマキリの目玉から血が噴き出した。


「グギギギギィィ!」


 突然目に弾丸を撃ち込まれ、苦しみながら悶えるカマキリ。

 そこに永野が追撃をかます。


「隙あり、これでも喰らえ!」


 刀をお腹に抱え、そのまま突撃した永野。刀は勢いよくカマキリの腹に突き刺さる。


「グギィ! グギギィ!」

「うわぁ!」


 痛みに耐えきれなくなったのか、カマキリは永野を振り払い、羽を広げその場から湖の方へ飛び立つ。


「逃がしません。このまま撃墜します!」


 再び銃口を向ける水嶋、だがフラフラと飛ぶカマキリに照準が定まらない。


「くそっ、ここまで追い込んだのに逃げられるのか……っ⁉」


 カマキリが湖を横切ろうとしていたその瞬間、黒い影が湖から飛び出した。


「グギィィィ⁉」


 再び現れたゲンゴロウ型のエイリアン。低空を飛んでいたカマキリをがっしりとくわえ込み、そのまま湖の中に引きずり込んだ。


「食われた、のか?」


 その流れを呆然と見ていたレイたち。やがて湖は一気に静まり返った。


「……やれやれ、カマキリの次はゲンゴロウですか」

「刀、食べられちゃいました……」


 どうしようもなく立ちすくむ水嶋と永野。


「すでに警官1人と、おそらくカヤックに乗っていた男性も襲われました。このまま放っておくわけにはいきません」

「しかし対象は水の中です。今のうちらにはどうにも……」


 誰もが駆除を諦めていたその時、レイが声をあげた。


「……僕がおとりになります。あのゲンゴロウをここまで引きずり出しましょう」

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