表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛾王~第一章 幼虫期~  作者: 秋一番
湖畔の激突
27/48

告白

 数十分後には警察が次々と集まり、消えた男性の捜索を始める。


「なんだ? 何かあったのか?」


 練習中だったユウトたちもサイレンに気付き、続々湖畔に集まってくる。


「カヤックに乗ってた人が転覆して、行方不明になったみたいなんです」


 メンバーたちに状況を説明するキョウカ。


「嘘だろ、まさか合宿始まって早々にそんな事件なんて……」


 楽しい雰囲気で合宿をしようと思っていた一行も、さすがに気分が落ち込んでいくらしい。


「ど、どうする?」


 しばらく沈黙していた一団の中で、一人の男子が口火を切った。


「どうするも何も、合宿はこのまま続けるぞ。せっかくここまで来たんだから」


 そうきっぱりと言い切るユウト。だが周囲の部員は納得していなさそう。


「でも、もしかしたら死人が出たりして——」

「やめろ! オレたちには関係ない話だ!」


 強引に合宿を続けようとするユウト。

 このキャンプでリンカに告白する予定になっているのだから、意地でも続行したいとおもうのは仕方のないことかもしれない。


「……わかったよ。みんな、あまりよそのことは気にせず劇に集中しよう」

「よし、じゃあ心機一転、これからバーベキューだ!」


 まだ重い雰囲気の中始まったバーベキュー。

 少しずつ明るい雰囲気を取り戻していく一団だが、レイの頭の中は事故のことで一杯だった。


(救命胴衣を着ていた人間が、湖の中に沈んでいくなんて考えられない。やっぱり水の中にエイリアンが潜んでいて……)


「ちょっと、水嶋さんに相談してみるか」


 度々エイリアン事件に巻き込まれてから、レイは水嶋のラインアカウントも教えてもらっていた。


「深藍湖のキャンプ場でまた人がいなくなる事件が起きて……うぅん、なんて説明したらいいんだ?」


 とにかく事の顛末を簡潔に文章にしたレイ。送信するとすぐに既読がついたが、返信が返ってくることはなかった。


「……まあ水嶋さんも忙しいだろうしな」

「レイ君、早くお肉食べないとなくなっちゃうよ!」

「ああはい、頂きます!」




 翌日になっても水嶋から返事は返ってこず、レイはモヤモヤとしたまま合宿の2日目を迎えていた。


「暇だなぁモス」

「何もない時間を楽しめる方が幸せなんだぞ」


 湖は警察による捜索が続いているため、ボートに乗って遊ぶこともできない。

 レイはただモスとくだらない会話を交わしながら、たまにサークルの練習を眺めているだけで1日が終わっていく。


「合宿2日目もお疲れ様。明日はお昼に出発するから、しっかり疲れを癒してください!」


 2日目のバーベキュー終わり、お酒やジュースを持って乾杯する一同。

 だがその音頭を取っていたユウトは、ずっと何かを気にしているようだった。


「レイ君、今日はずっと何してたの?」

「いやあ、ひたすら駄弁ってたり湖を眺めてたり……」

「何それ、お爺ちゃんみたいじゃん」


 事故の衝撃も薄れてきたのか、楽しそうにお酒を飲むリンカ。

 するとそこに、緊張した面持ちのユウトが近づいてきた。


「あの、リンカさん。ちょっといいかな?」

「えっ? うん、どうしたの?」

「ちょっと、2人でその辺散歩しませんか?」


(こいつ、いよいよ告白する気だな……)


「……わかった。レイ君、行ってくるね」

「はい、行ってらっしゃい」


 暗くなった森の方へと入っていくユウトとリンカ。

 それを見送るだけのレイに対し、カバンの中からモスが口を出す。


「ついて行ってみようぜ」

「はあ? そんなことできるわけ——」

「このままリンカを取られていいのか? とにかく見に行こう。結末が気になる」

「ああ、わかったよ」


 レイは仕方なく、モスのカバンを抱えて2人の後を追いかけた。


「……なんかビックリしましたね。キャンプ場についていきなり事件が起こって」

「そうだねぇ。無事に見つかると良いね」


 森の中の小径をゆっくり歩いていくユウトとリンカ。その後方をひっそりとレイが追いかける。


「なんかすみません……俺がここで合宿しようって言ったばかりに、重い空気になっちゃって」

「そんな、ユウト君が謝ることじゃないよ!」

「……リンカさんは、本当に優しいなぁ」


 しばらく沈黙したまま歩いていく2人。すると突然、ユウトがその足を止めた。


「どうしたの? ユウト君」

「あの……俺、リンカさんのことが好きです」

「えっ?」

「1年の時からずっと憧れてました。付き合ってください!」


 手を出して深く頭を下げるユウト、戸惑った表情をするリンカ、レイはその光景を見てごくりと唾を飲んだ。


「……ごめんユウト君。私、好きな人がいるんだ」

「……」


 ゆっくりと顔をあげるユウト。その顔は恨めしそうにしている。


「……それって、如月レイの事ですか」

「……うん」


 小さく頷くリンカ。するとユウトは体を小刻みに震わす。


「いつからですか……大学の事件に巻き込まれたときからですか」

「きっかけは、そうかな……あの時、命を懸けて私の事守ってくれて」

「……ははっ、そりゃかっこいいや」


 乾いた笑いを繰り出すユウト。


「いいんですか? あいつの友達、警察に捕まってたんですよ」


(あいつ、どこからタカシの情報を!)


 するとリンカはキリっとした表情でユウトに返した。


「そんなことは関係ない。レイ君は人の夢を叶えるために命をかけられる、すごい人だよ」

「……くそっ!」


 側にあった木を強く叩いたユウト。そこにレイが焦った表情で駆け寄って来る。


「レイ! なんだ見てたのか⁉」

「レイ君、ついて来てたの⁉」


 だがレイの表情は、何か焦っているようだった。


「2人とも、後ろだぁ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ