告白
数十分後には警察が次々と集まり、消えた男性の捜索を始める。
「なんだ? 何かあったのか?」
練習中だったユウトたちもサイレンに気付き、続々湖畔に集まってくる。
「カヤックに乗ってた人が転覆して、行方不明になったみたいなんです」
メンバーたちに状況を説明するキョウカ。
「嘘だろ、まさか合宿始まって早々にそんな事件なんて……」
楽しい雰囲気で合宿をしようと思っていた一行も、さすがに気分が落ち込んでいくらしい。
「ど、どうする?」
しばらく沈黙していた一団の中で、一人の男子が口火を切った。
「どうするも何も、合宿はこのまま続けるぞ。せっかくここまで来たんだから」
そうきっぱりと言い切るユウト。だが周囲の部員は納得していなさそう。
「でも、もしかしたら死人が出たりして——」
「やめろ! オレたちには関係ない話だ!」
強引に合宿を続けようとするユウト。
このキャンプでリンカに告白する予定になっているのだから、意地でも続行したいとおもうのは仕方のないことかもしれない。
「……わかったよ。みんな、あまりよそのことは気にせず劇に集中しよう」
「よし、じゃあ心機一転、これからバーベキューだ!」
まだ重い雰囲気の中始まったバーベキュー。
少しずつ明るい雰囲気を取り戻していく一団だが、レイの頭の中は事故のことで一杯だった。
(救命胴衣を着ていた人間が、湖の中に沈んでいくなんて考えられない。やっぱり水の中にエイリアンが潜んでいて……)
「ちょっと、水嶋さんに相談してみるか」
度々エイリアン事件に巻き込まれてから、レイは水嶋のラインアカウントも教えてもらっていた。
「深藍湖のキャンプ場でまた人がいなくなる事件が起きて……うぅん、なんて説明したらいいんだ?」
とにかく事の顛末を簡潔に文章にしたレイ。送信するとすぐに既読がついたが、返信が返ってくることはなかった。
「……まあ水嶋さんも忙しいだろうしな」
「レイ君、早くお肉食べないとなくなっちゃうよ!」
「ああはい、頂きます!」
翌日になっても水嶋から返事は返ってこず、レイはモヤモヤとしたまま合宿の2日目を迎えていた。
「暇だなぁモス」
「何もない時間を楽しめる方が幸せなんだぞ」
湖は警察による捜索が続いているため、ボートに乗って遊ぶこともできない。
レイはただモスとくだらない会話を交わしながら、たまにサークルの練習を眺めているだけで1日が終わっていく。
「合宿2日目もお疲れ様。明日はお昼に出発するから、しっかり疲れを癒してください!」
2日目のバーベキュー終わり、お酒やジュースを持って乾杯する一同。
だがその音頭を取っていたユウトは、ずっと何かを気にしているようだった。
「レイ君、今日はずっと何してたの?」
「いやあ、ひたすら駄弁ってたり湖を眺めてたり……」
「何それ、お爺ちゃんみたいじゃん」
事故の衝撃も薄れてきたのか、楽しそうにお酒を飲むリンカ。
するとそこに、緊張した面持ちのユウトが近づいてきた。
「あの、リンカさん。ちょっといいかな?」
「えっ? うん、どうしたの?」
「ちょっと、2人でその辺散歩しませんか?」
(こいつ、いよいよ告白する気だな……)
「……わかった。レイ君、行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃい」
暗くなった森の方へと入っていくユウトとリンカ。
それを見送るだけのレイに対し、カバンの中からモスが口を出す。
「ついて行ってみようぜ」
「はあ? そんなことできるわけ——」
「このままリンカを取られていいのか? とにかく見に行こう。結末が気になる」
「ああ、わかったよ」
レイは仕方なく、モスのカバンを抱えて2人の後を追いかけた。
「……なんかビックリしましたね。キャンプ場についていきなり事件が起こって」
「そうだねぇ。無事に見つかると良いね」
森の中の小径をゆっくり歩いていくユウトとリンカ。その後方をひっそりとレイが追いかける。
「なんかすみません……俺がここで合宿しようって言ったばかりに、重い空気になっちゃって」
「そんな、ユウト君が謝ることじゃないよ!」
「……リンカさんは、本当に優しいなぁ」
しばらく沈黙したまま歩いていく2人。すると突然、ユウトがその足を止めた。
「どうしたの? ユウト君」
「あの……俺、リンカさんのことが好きです」
「えっ?」
「1年の時からずっと憧れてました。付き合ってください!」
手を出して深く頭を下げるユウト、戸惑った表情をするリンカ、レイはその光景を見てごくりと唾を飲んだ。
「……ごめんユウト君。私、好きな人がいるんだ」
「……」
ゆっくりと顔をあげるユウト。その顔は恨めしそうにしている。
「……それって、如月レイの事ですか」
「……うん」
小さく頷くリンカ。するとユウトは体を小刻みに震わす。
「いつからですか……大学の事件に巻き込まれたときからですか」
「きっかけは、そうかな……あの時、命を懸けて私の事守ってくれて」
「……ははっ、そりゃかっこいいや」
乾いた笑いを繰り出すユウト。
「いいんですか? あいつの友達、警察に捕まってたんですよ」
(あいつ、どこからタカシの情報を!)
するとリンカはキリっとした表情でユウトに返した。
「そんなことは関係ない。レイ君は人の夢を叶えるために命をかけられる、すごい人だよ」
「……くそっ!」
側にあった木を強く叩いたユウト。そこにレイが焦った表情で駆け寄って来る。
「レイ! なんだ見てたのか⁉」
「レイ君、ついて来てたの⁉」
だがレイの表情は、何か焦っているようだった。
「2人とも、後ろだぁ!」




