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蛾王~第一章 幼虫期~  作者: 秋一番
遊園地の怪
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人が消える館

「中でちょっと時間がかかってるだけではないんですかねぇ」


 あまり焦った様子も見せないスタッフに対し、女性は半ば怒りを見せながら反論する。


「もう一時間以上もここで待ってるんです! ラインも既読がつかないし、友達より後に入った人はどんどん出てきてるんです」

「それは確かに、中で何かあったかもしれないですね」


 女性に同調するリンカだが、それでもスタッフは態度を崩さない。


「きっと怖くて中で動けなくなってるんですよ。定期的にスタッフも巡回していますし、さっきもスタッフが1名中に入って……」


 そこへちょうど、お化け屋敷の出口からもう一人のスタッフが出てきてこちらに向かって来た。


「今ぐるっと一周見てきたのですが、お客様のご友人らしき人はいませんでした……」

「そ、そんなぁ……」

「もしかしたらお姉さんの事忘れてどこかに行っちゃったとか——」


 レイがそう言うと、女性はうなだれたままギロリとレイの方を睨む。


「うちの友達はそんな薄情者じゃないです!」

「あっ、すみません……」

「おいレイ……レイ!」


 突然、カバンの中からモスが小声でレイを呼ぶ。レイはその場から少し離れ、しゃがみこんでモスと話し始めた。


「なんだよモス。さすがにあの場所で喋ったらバレるだろ」

「いや、ちょっと気になることがあってな」

「なんだよ気になることって」


 するとモスは、少し気まずそうに答えた。


「実はうちの故郷の星に、こんな感じの暗い場所に巣を作って、こっそり獲物を捕食する種族がいたんだ」

「……おいおいまさか!」


 レイは急に立ち上がり、急いで女性たちの元へ戻る。


「僕が探して来ます。ちょっと気になることがあるので」

「しかし、いまうちのスタッフが見てきて見つからなかったと」

「一回だけ、一回だけ見に行かせてください」


 するとリンカがレイの腕を握る。


「じゃあ私もついて行くよ」

「いや、リンカさんはここで待っててください」

「えっ、どうして?」


 それに対し、レイはリンカの腕を握り返しながら小声で答えた。


「危険な匂いがします。リンカさんを巻き込むわけにはいきません」


 するとリンカは急に真面目な表情になり、ぎゅっとレイの手を包み込んだ。


「わかった。でもこの前言った約束、忘れないでね」

「はい、必ず戻ります」

「あのぅ……さっきから何の話を?」


 女性から顔を覗かれ、頬を赤くしながら握る手を解く2人。


「ああいや、何でも! じゃあ早速行ってきますね」


 レイはそう言って、モスのカバンを抱えてお化け屋敷の中に入っていった。


「……なぁレイ。今さら言うのもなんだが、何か武器になるものを持って行ったほうがいいぞ」

「それは僕も思ってたけど……まさか遊園地に刀とか銃があるはずないしなぁ」


 お化け屋敷の中を探しながら、行方不明になった女性と武器になりそうなものを探すレイ。

 なのだが……


「ウガァ!」

「ひぃぃ!」


「ぶぅるぁぁ!」

「ひぃぃぃぃ!」


「殺してやるぅ!」

「うひぃぃぃぃぃ!」


「ぽよーん!」

「……」


 レイは道中の仕掛けに驚かされてばかりで、とても探し物どころではなかった。


「モスはあんまりこういうのには驚かないんだな……」

「……」

「あっ、やっぱりビビってカバンにこもって——」

「うひゃひゃひゃひゃ!」

「ひぃぃぃぃぃ…………あっ」


 突如飛び出してきたピエロ。その手にはバールが握られている。


「あのぉ、すみません……」


 レイは驚きもほどほどに、ピエロに対して下手から声をかけた。


「その手に持ってるもの、少しだけ貸してもらってもいいですか?」

「へっ? あっどうぞ……」


 ピエロからバールを受け取るレイ。太さも重さもちょうど良い感じに手になじむ。


「これで最低限の武器は手に入ったな……よしっ」


 レイはピエロを後にすると、道中立ち止まって大きな声をあげた。


「出てこいエイリアン! いるのはわかってるんだ。さらった女性たちを返せ!」


 なんて、もし間違いだったら恥ずかしい限りのヤマをかけるレイ。

 だが屋敷の中にレイの大声が響くだけで、特に返事はない。


「……やっぱり考え過ぎだったのかな? とりあえずこのまま出口に」

「誰だ、ワシのことを呼んだのは」

「っ⁉」


 どこからか声がした。エイリアンの声、というよりは人間が喋っているに近い。


「誰だ、エイリアンか? それとも寄生した人間か?」

「ワシは寄生などできん。だからこうして暗いところに息をひそめておる」

「エイリアンであることは間違いないってわけか……」


 バールを構えて周囲を警戒する。声は天井をあちらこちら移動しながら発せられているように聞こえた。


「1人でべらべら喋ってるやつがおると思ったら、そこにワシの同郷がおるのか」


(モスの存在にも気づいてるのか!)


「気をつけろ、この星で言う蜘蛛型のエイリアンだ。足音も立てずに近づいて瞬時に獲物を狩る」

「それ……ここで僕たちに勝ち目ある?」


 急に体全身を震えあがらせるレイ。だが蜘蛛型エイリアンは穏やかな笑い声を発する。


「はははっ、そう怯えんでももう今日は人間など狩らない。さっき食ったので腹いっぱいだからな」


 その瞬間、レイの前身の鳥肌が立ちあがった。


「食ったのか……なんの罪もない女性たちを」

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