楽しめスーパーレジャーワールド
「来たぜ、スーパーレジャーワールド!」
後部座席で喜びの舞を踊るモス。運転席からバックミラーを見ながら笑うリンカ。
「結構近かったねぇ。1時間もかかってないんじゃないかな?」
スーパーレジャーワールド。やたら伸ばし棒が多いこの遊園地だが、休日とあって駐車場にはパンパンに車が停まっている。
「空いてるとこ見つかって良かったぁ」
「運転お疲れ様です。ありがとうございます」
飲みかけのペットボトルを渡すレイ。
「ありがと。じゃあさっそく行こっか」
モスをカバンに突っ込み、入り口の方へと向かう。
外はうっとうしいほどの晴れで、車を出た瞬間強烈な日光に照らされていた。
「まずあれ乗ろうよあれ! 船みたいなのに乗って前後に揺れるやつ!」
「それはオレも乗れるのか? オレが乗れるかどうかで変わってくるぞ?」
受付でチケットを渡し、アーケードになっているお土産屋の並びに足を踏み入れる。
「なんで遊園地ってどこも入り口近くが商店街みたいになってるんだろうね?」
「帰りにお土産屋に寄ってもらおうっていう魂胆なんじゃないですかね」
「お土産欲しいぞ!」
「はいはい、帰りにな」
遊園地の喧騒の中であれば、多少モスが喋っても怪しくならない。調子づいたのかモスはカバンからちょこんと顔を出した。
「おいモス。そんなところから顔を出したら怪しまれるだろ」
「これくらい大丈夫だろ。それよりオレは遊園地がどんなところかちゃんと見ておきたいんだ」
「大丈夫だよレイ君。モス君ぬいぐるみにしか見えないもん」
「それならまあ、大丈夫か」
まっすぐにアトラクションエリアへと向かう一行。
それから船のような乗り物に乗って前後に揺れるハイパーバイキング、ボートに乗って川を一周するトレジャークルーズ、大画面で迫力ある絶叫映像が楽しめるドライブフューチャーなど、朝から調子よくアトラクションを回っていた一行。
(結構楽しいんだな……リンカさんと一緒にいるからかな)
初めてのスーパーレジャーワールドを楽しんでいたレイとリンカ。しかしカバンの中のモスは納得いっていないようだった。
「ゆったり楽しむのもいいけど、もっと空を飛んでる感覚が味わえるアトラクションはないのか?」
「あぁ、結局ハイパーバイキングは乗れなかったし、ジェットコースターも無理そうだもんね」
「しかし、荷物を持ち込めて宙に浮ける乗り物って言ったら……」
レイたちが辿り着いたのは、飛行機型の乗り物に乗って、上下しながらぐるぐるアトラクション。
「こういうのしかないけど」
するとモスは目を輝かせた。
「これでいい! これに乗りたい!」
「えぇ、でも正直これ子ども向けだし」
「いい! これに乗る!」
「乗せてあげようよ、レイ君」
仕方なくそのアトラクションの列に並ぶレイたち。周囲は子ども連ればかり。
回転が速いため、あっという間に順番が回ってくる。
「さあ、いよいよ空へ飛び立つ時だ!」
「モス君、人間の子どもみたいにはしゃいじゃって」
リンカがひざ元にモスのカバンを抱え、モスはそこから少し顔を出している。
やがてアトラクションはゆっくりと回りだし、視界がどんどん高くなっていった。
徐々にスピードが上がり、飛行機は大きく上下をしはじめる。
「おぉ……外から見てるより結構早いんだな……ん?」
ふと横を見ると、ポニーテールをなびかせるリンカの横顔と、そのひざ元で感動したような目をしているモスが見えた。
「すごい……これが空を飛んでるって感じなのか」
モスはモスなりに、自分が成虫になったときの姿に想いを馳せているようだった。
あっという間に空を飛ぶ時間は終わり、飛行機はゆっくりと着陸した。
「はぁ、なかなか良い体験ができた。ありがとう2人とも」
「モスが満足してくれるのならよかったよ」
「ねえ、そろそろご飯にしない?」
すでに日は高く上り、時計も12時を指そうとしている。昼ご飯を食べるにはちょうどいいタイミング。
レイたちはすぐ近くにあったレストランへと足を踏み入れた。
「じゃあオムライスとハンバーグランチ、それからこのサラダをソースなしでお願いします」
「ソースなし、ですか?」
「はい、ソースはかけないでください」
「わ、わかりました……」
困惑したまま去っていく店員。レイは店員を困らせたようで少し申し訳なく思っていた。
「そうだ。3人で写真撮ろうよ」
「えっ、3人で?」
「うん、モス君も入れて」
そう言ってカバンからモスを取り出すリンカ。レイがその手を急いで止める。
「ちょっと、こんなところで出したら——」
「モス君が動かなかったら大丈夫だよ。それにさ、ちょっとくらい私たちの思い出を残しておきたいじゃん」
リンカの言う通り、今までモスを他人から隠すことで精いっぱいで、思い出らしいものは何も作れていない。
(まあ、写真だけなら確かにぬいぐるみにしか見えないし、大丈夫か)
レイはボックス席の向かい側に移り、リンカと2人でモスを挟む。
「行くよぉ。はい、チーズ!」
カシャリと音をたてるスマホ。レイは急に恥ずかしくなり、急いで元の席に戻った。
「そうだ、食べ終わったらお化け屋敷に行ってみようよ」
「ああ、あの入る人と出る人の数が違うっていう」
「私結構、怖いのは得意なんだよ」
(正直僕は苦手だけど……リンカさんとくっつけそうだし行ってみようかな)
*
あっという間に昼食を食べ終え、お化け屋敷にやって来たレイたち。
だがそこで、思いもよらない事態に遭遇するのだった。
「ねえレイ君、あの人たち何か揉めてない?」
リンカが指さしたのは、出口付近でスタッフと揉めている1人の女性。
「中で何かトラブルあったのかも。ちょっと話を聞いてみようよ」
2人の方に近づいていくリンカ、それを追うレイ。
頭上の太陽は少し西に傾き始めている。
「あの、中で何かあったんですか?」
リンカがそう尋ねると、女性の方が振り向き焦ったように答えた。
「友達が、お化け屋敷に入ってから一向に戻ってこないんです!」




