つきの上のやくそく
お月さまの上には、やくそくを守る妖精が住んでいます。ながい銀色の髪をした小さな妖精たちは、人々がかわす大切なやくそくを見まもっています。
「やくそくは、とても大事なものです」
妖精たちのリーダー、シルバーベルはいつもそう言っていました。彼女の髪はお月さまの光のようにかがやいて、その目には星々がうつっています。
妖精たちのお仕事は、人々がかわすやくそくを星にかえることです。だれかが心をこめてやくそくをすると、そのことばは白くひかる粒になって空へのぼっていきます。妖精たちは、そのひかりを集めて星を作ります。だから夜空の星は、みんなのやくそくでできているのです。
あるひ、シルバーベルは地上で一人の女の子を見つけました。茶色いみつあみの可愛い女の子は、びょう院にいる友だちにやくそくをしていました。
「ぜったい、また一緒にあそぼうね。やくそくだよ」
そのことばがひかりの粒になってのぼってきたとき、シルバーベルはその純すいさに胸をうたれました。ひかりの粒は、今までで一番きれいなピンク色にかがやいていたのです。
「このやくそくは、とくべつな星にしなくちゃ」
シルバーベルは、なかまの妖精たちといっしょに、そのひかりを大切にそだて始めました。まいばん、月のひかりでやさしくつつみ、時には星のうたを歌って、あい情をたっぷりそそぎました。
そうしてうまれた星は、夜空で一番明るくかがやく星になりました。女の子は毎ばんその星を見上げては、友だちとのやくそくを思い出したのです。
でも、時にはつらいこともありました。友だちのびょう気は思ったよりおもく、やくそくをはたすのがむずかしくなってきました。女の子の心がゆれると、星のかがやきも少しよわくなります。
「でも、大丈夫」
シルバーベルは、そっと星をなでました。
「やくそくを守ろうとする気もちは、ここにちゃんとあるもの」
妖精たちは、その星にとくべつな魔法をかけることにしました。夜空からきらきらとふりそそぐひかりは、びょう院のベッドでねむる女の子の友だちの夢の中へととどきました。
そして、二人は夢の中で再かいすることができたのです。月のひかりが作るとくべつな遊び場で、二人は思いきりはしりまわり、笑いあいました。
それからというもの、二人の女の子は毎ばん、夢の中で会えるようになりました。げんじつでは会えなくても、心はいつもつながっていたのです。
やがて、友だちの具合がよくなり始めました。そして春のあるひ、ほんとうの再かいの時が訪れました。
「ただいま」
「おかえり!」
二人がだきあった瞬間、夜空の星はにじ色のひかりをはなちました。そのひかりは新しいやくそくの物語となって、まただれかの心にふりそそいでいったのです。
シルバーベルは、今でも月の上から、たくさんのやくそくを見まもっています。そして時々、とくべつなやくそくを見つけると、こっそりとくべつな星を作るのです。
「さあ、今夜もすてきなやくそくを探しましょう」
シルバーベルの声が、夜空にやさしくひびきます。あなたも、夜空を見上げてみませんか? きっと、あなたの大切なやくそくも、どこかで星になっているはずです。
(おわり)
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