勇者と魔王
〜1〜
私は勇者。
魔王を倒しこの世界に平和をもたらした。
勇者、魔法使い、魔法使いの弟子、魔法使い2の基本特殊攻撃しか無理な謎のパーティを組んでいた。
そして私は英雄と呼ばれている。
私の剣で魔王の腹へとどめの一撃を与えたからである。
ちな言うと魔王には物理しか効かないのである。
物理もほぼ効かないから戦闘は2ヶ月くらい掛かった。
魔法使いの特殊魔法で寝たことにするみたいな技のお陰で微量のダメージを与え続けることに成功した。
魔法使いは1人ずつ交代で寝たことにする魔法を勇者に使っては町に遊びにいくなど休憩を繰り返していた。
つまり私の労力を考えたら英雄と呼ばれて当然なのである。
訪れた平和な日常が今唐突に終わりを告げた予感がした。
魔王が生き返ったはず。
〜2〜
小さい頃から私は勇者になるべく育てられた。
英才教育に近く、父がまた勇者であったためにかなり期待されて育てられていた。
ただ、私には才能がなかった。
ちびっ子チャンバラ大会では1回戦目からボコボコにされたが何故か相手が反則を犯すもんだからあれよあれよと決勝に進み、決勝の相手もまた反則で敗退していった。
その時はがむしゃらにやっていたので実力だと誤認していた。
剣を持つ証を手に入れた日初めて森で小さい魔族と戦った。父が2秒あれば倒せる敵と三日間戦い続け、起きる限界を迎えたのか寝てしまったのである。
起きたらアザは何個か増えていたが横には疲れ果てたであろう小さい魔族も寝ていた。
一度寝ている魔族に剣を振り下ろす卑怯な真似をしたがかすり傷一つつかなかったので起きる前に町に戻った。
そんな時街の看板に勇者求むという求人を見つけた。
当時は魔族を倒しに戦闘民は出払っていたため自分しか勇者の称号を持っていなかったので意気揚々と1番強い顔をして求人話を聞きにいった。
求人を出したおばさんに話を聞いた。
「息子が魔族にさらわれた。魔王の仕業に違いない。倒してほしい」
どう考えても無理だと思ったが、おばさんは見たことないくらいエネルギーに満ち溢れた剣を出してきた
「これで切れるはず。間違いなく切れる。勇者にしか使いこなせないのじゃ」
な、なんだこれ、とエネルギーに満ち溢れた剣が正直欲しい気持ちになった。勇者の証は持ってるのでいいかなとも思った。
「分かりました。私に任せてください」
剣欲しさに適当なことを言ってしまったのである。
〜3〜
まずは仲間を見つけないとと思い求人を出した。
【求む、勇者の仲間、魔王倒す。】
しばらく時間がかかると思ったがすぐに仲間は集まった。みな魔王へのヘイトが溜まっていたのである。
町一番の魔法使い、とその弟子、あと町にいる魔法使いがやってきた。
「私たちを仲間にしてくれないか?英雄になってこの町に平和をもたらしたい」
と話をしてきた。
だが私知っていたのである。魔王への攻撃は物理しか効かないことを、
「でみなさんは寝たことにする魔法を人に掛けられますか?」
当たり前の顔をした魔法使い達
「なんでっすか?初級魔法っすよ笑」
旅に出ることとなった。
〜4〜
暗い森を抜け、洞窟を抜け、ありとあらゆる魔族と戦いレベルを上げた。1人を除いては。
苛立つ魔法使いは言う
「勇者さんも攻撃してください!MPを回復する食べ物ももうこの辺には無くなってきてます!」
「ちなみにさ寝たことにする魔法はMP消費するの?」
「攻撃してくださいね、MP使うわけないでしょあんな雑魚魔法」
旅を続けよう。
そんなこんなで最後の砦を抜け魔王のいる城の前についた。
「いよいよですね、、、最大の必殺魔法はとってありますから」
町1番の魔法使いは言う
「自分も雷に竜巻、なんでも出せる準備してます。ようやくこの日がきた。」
魔法使い2も奮い立っていた。
弟子はその2人を見て目がキラキラしていた。
(言うか、、、)
「ちょっとすみません、今更引き返せないのでここで言わせてもらいますけど物理しか魔王には効かないので寝たことにする魔法を僕に8時間おきに掛けてください!
あとエネルギーが凄い剣のお陰で魔族のパワーを無効化できるんで回復とか気にしないで大丈夫っす」
嫌なことは早めに言うに尽きると勇者は考えた。
「ふざけ、、、」
魔法使い軍団はむちゃくちゃ怒っていた。無理もない。ここにきて力になれないから当然である。
「でもさ、英雄と共に魔王を倒したとかあとで好き勝手言ってくれて構わないから寝たことにするやつだけ頼むよ」
鼻をほじりながら言うとするか!煽ったろ!
「くっそ、ここまで何もしてねえ勇者のくせに、、、」
全員怒っていた。
そして城に突入し、待ち構えていた魔王との戦闘が始まった。
見た目はゴリラ、顔はライオンだ。気持ち悪い。こんなやつが魔王とは変な世界だ。
「うおおおおおぉぉぉ」
魔王は強烈に叫び長い爪で勇者を切り裂いた。
「痛くないね?」
剣のエネルギーで無効化され勇者はノーダメージだった。
勇者は力強い声で
「こっちの番だ」
と決め台詞を吐きエネルギーの剣で魔王を切り裂いた。
「うおおおおおお」
切り裂かれたはずの魔王は雄叫びを2度上げた。
「うおおおおおおおおお!!!」(あれ待って痒いなぁ)
全然効いてないのである。
「どうだ魔王!!!」効いたと思ってる勇者はかっこいい
「うおおおおおお」
魔王はさらに雄叫びを上げて切り裂いてきた。
8時間後
「魔法使い!寝たことにするやつを頼む」
「スリーピーシタコトニスール」
キラキラキラキラ〜
「ありがとう!うぉーーーりゃーー」
更に8時間後
キラキラキラキラ〜
「ありがとう!うぉーーーーーい!」
「うおおおおおお」
泥試合なのである。そもそも勇者のレベルが低すぎて剣で与えるダメージが微量過ぎるのが問題だったのである。
2ヶ月後、、、
根負けした魔王が倒れ、同じ箇所をずっと剣の先端で刺し続けようやく勝利した。
魔王は眠すぎてもう限界だったのである。
ナナミに会うことになるのはこの15分後のことであった。
「勝ったぞーーーーー!!!英雄だ!」
勇者は叫んだ!
「おっせーなまじでクソがよ、めちゃくちゃチャンスあったからね!相当弱いだろお前」
と魔法使い軍団は言いたかったが
「わーい」
と町に帰ってからのみんなに褒められることを妄想し、勇者へのヘイトを殺したのである。
「よーし帰るぞ!お前達よくやった!」
「ちっ」(舌打ち)
魔法使いの弟子は荒ぶっていた。
町に平和が訪れ、勇者は英雄となり町に戻るやいなや町人たちから愛のある扱いを受けたのである。
そして、、、
ざぁーーーーーー
(魔王が生きてる。)
町に帰ってからわずか20分のことであった。
英雄だと町に伝わってからそう20分。
20分だけの英雄
「そうはさせない。嘘だと思われる。」
まだ街の人は気づいていない、ならば再度行くしかない。
そしてひっそり町を飛び出したのである。
一方そのころ魔王はゴブリンに連れられ城に到着した。