ファルコー・リッジライン参上!
金、金、金。
金さえあれば、この世は全てこともなし。
「この娘だ。傷一つ付けるな」
出された写真に写っているのは、10歳前後と思しき幼女だ。
妙に艶のある青い髪に、紫色を煮詰めたような、あるいは宇宙を閉じ込めたかのような、夜空の瞳。
写真に撮り切れているとは思えないほど、美しかった。
顔、目、鼻、口。耳から顎までのライン。首から下も奇跡的なバランスをしている。
少々痩せているのが残念でならなかった。
もう少し肉付きさえ良ければ、あんな依頼者など処分して自分が迎えに行ってやれたのに。
「了解、了解」
成功報酬は25億。しかも、前金が25億で準備金は別支払い。合計50億以上という太っ腹な依頼。
こんな幼女に、いや、それだけの価値はあるかもしれないと改めて思う。
一目見ただけでも、肉付き以外の難点が見当たらなかった。
惜しい。本当に惜しい。
依頼者が調べた情報によれば、元々は上層の住人で、どうやら傭兵になりたかったらしく、自ら下層に降りたという話だ。
全く、馬鹿な女だ。いや、子どもか。
上ではなかなか手が出せないものも、下に落ちれば簡単に拾い上げられるというのに。
「……確実に、頼むぞ」
「勿論ですとも」
念を押して帰っていく依頼者……の、まあ代理人。あれを殺しても意味はないが、あれの飼い主は把握している。
それに、目標の女はまだ幼女だ。将来性に賭けて、やはり自分のものにしようかと、少し悩んだ。
(……いや、待てよ)
そうだ。そもそも前金が25億もある。金の問題はほとんど片付くと言っていい。
依頼者は有能で仕事も早いタイプだ。そう時間はかからずに前金は振り込まれるだろう。
目標の女を確保して、依頼者を消す。
その後、多少なり情をかけて育ててやる。この痩せ方だ。ろくな扱いを受けていないに違いない。
そうして育てれば、向こうから寄って来るはずだ。
(……そうだな、そうしよう)
表の顔は凄腕ファイター。
裏の顔は汚れ仕事も請け負う敏腕スナイパー。
その名は、ファルコー・リッジライン!
「くくくっ……向いてきた……向いてきたぞ、運が……!
くっくっく……ハァーッハッハッハッハ!!!」
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というわけで、俺はファルコー・リッジライン。いやこれは傭兵名で、本名は別だ。
今回は俺が語り手をやらせてもらうことになった。
誰だって聞くのは無しだぜ?これでも裏表問わずに大活躍してる凄腕なのさ。
好きなものは金だ。
金があればなんでも手に入る。
酒、女、他にもなんだ……豪邸とか、上層への移住権とか、そういうのだ。
いや、うん、あんまりないんだよな、使い道。
女は化粧品やら宝石やら金銀財宝、服とかカバンとかにひたすら注ぎ込んでるんだが、男はな……そういう女に入れ込むくらいしか、金の使い道が無いんだよ。
上層への移住権も、実のところそんなには高くないしな。一般人でも半生費やせば余裕で買える値段だ。
それに人格チェックとかもあるらしいし、上自体にもあまり興味が無いときてるんだ。
加えて俺はここ最近、一番金のかかる、女にも飽きて来ていたんだ。
なぜかって言うほどでもないんだが……際限なく金を求める女っていうのはよ、左から右まで全部同じなんだよな。
流行の顔作って、流行の化粧して、流行の体に改造してさ。
性格だけはまあ多少なり違いはあっても、ほんとに多少だ。
それに、俺はあんまり顔も頭も良くねえから、ふとした瞬間にこう……見ちゃうんだよ。俺を蔑んでる目つきや表情ってやつをさ。
そういうの、金を注ぎ込んできた女に漏れなくやられてきたわけ。そらもう、女はもういいやってなるってもんよ。
そんな時に飛び込んできたのが、今回の依頼だった。
以前は上層に居た10歳前後の幼女が、傭兵になるっつって下層に降りた。
この幼女が欲しいっていう上流階級が、裏表で大活躍の俺に依頼をしにいらっしゃったわけだ。
確かに上では住民の管理が厳しい。幼女を養女に…………ごほん。するっていうのも、本人の希望あってこそだ。俺に依頼をするくらいだから、誘いはしたけど断られたんだろう。
で、非合法な手段ってわけさ。連中の考えることは単純だよなあ。
けど、俺もそういう単細胞の仲間だったみたいでな。
横取りしてやろうと思ったわけ。その幼女をさ。
最初は俺が幼女のチームを襲って、それを依頼者の部下が助けるっていう計画を立てたんだが、気乗りがしなかった。
依頼者にわざわざ接触するのも危険だったが、その時には考え直していたんだ。
あれだけの美幼女、依頼者にくれてやるには、勿体ないってな。
この時に方針は決まったんだ。
だが、俺の手持ちの駒は俺自身しかいない。
俺が罠にはめて俺が助ける?そんなんすぐにバレるに決まっとるな。
すぐバレ…………
バレないんじゃねえ?
あれ、これバレないよな?
裏の俺が撃って、表の俺が助ければいいんじゃん?
あれ、これ完璧じゃねえ?
完璧だよ!!俺アタマ良かったよ!!
―ファルコー・リッジライン妄想劇場 はじまるよ!―
※ よりお楽しみいただくために、ファルコー・リッジラインが主人公だと思って御覧ください ※
俺のハイパースナイパービームライフル「ゼムセル」が火を噴き、赤いビーム光が輸送機の後部ギリギリを削り取った。
撃たれた輸送機は一時的に姿勢を崩すが、すぐに持ち直す。だが……
ハッチは開くまい。
扉の開閉部分には、蝶番というものがある。
輸送機のハッチもそれは同様だ。仕組みや形は色々だが、飛んでくる輸送機の情報があればそれもわかる。
時速数百キロ、状況によっては音速を越えて飛ぶ輸送機の、蝶番という数メートル程度の狙撃ポイント。
それが、場合によっては一万メートルにも及ぶ空の果てに存在する。
だが、この俺、ファルコー・リッジラインにとっちゃあ……
余裕で撃ち抜けるってもんだぜ!
俺の裏の機体「ノーリャホル」(古のDKという国の言葉で、”針の穴”を意味する。針の穴をも通す俺の狙撃素晴らしいって意味だ)は、一撃必殺の狙撃に全振りしたカスタム機だ。
唯一の武器であるハイパースナイパービームライフル「ゼムセル」は、とある企業に頼んで作ってもらった特注品。
射程と精度を極限まで高めた最強の狙撃銃なのだ。
こいつと俺の腕が合わされば、例え一万メートル上空の的でさえ敵じゃあねえのさ。フッ。
おっと、のんびり解説してる場合じゃねえ。
今回の任務はいつもの暗殺とは違う。
積み荷からお姫様を救出しなきゃならないからな。
というわけで見つかる前に、表の機体を隠してある場所へと移動する。
さくさくと乗り換え……
これが、俺の表の機体「マーヴェラス」だ。白のベースに金のラインを走らせた、儀礼用と言っても差し支えのない機体。
黄金は本物だ。おっそろしく高くついたが、その甲斐はあった。キラキラだぜ。
性能とかの細かいことは後でいいだろう。今はとにかくお姫様の救出だ。
輸送機の状況次第では不時着をサポートする必要もある。さあ急げ急げ!
不時着した輸送機に近付くと、荒くれもののHTが2機出ていた。
「てめえか!輸送機をやりやがったのは!」
「違う違う、俺は助けに来たのさ!」
「ふざけんな!あの女は俺たちのものだ!しねーー!!」
どーん。どーん。
「さてと」
俺は輸送機のハッチをレーザーブレードでこじ開けた。
すると中には、上手く出られなかったのであろうHTが1機、今ももがいていた。
「あーあー、HTのパイロット、聞こえるかい?」
「!!……どなたですか?」
あっ声かわいい!きれい!
おっと雑念が。
「情報通りだな。俺はファルコー・リッジライン。あんたを助けに来た」
「わたくしを、助けに……?」
その言葉から数秒、コックピットのハッチが開き、例の幼女が姿を見せた。
まだどこか現実を受け入れられていないのだろう。あっけにとられた表情をしていた。
「美しい……」
俺もまた、コックピットから出て自機の手のひらに乗った。
遠隔操作だ。そのまま幼女の前まで手のひらを動かしていく。
遠目に見ても小さかったが、近くで見ればよりはっきりとわかる。
単純の背の低い女ではない。肩幅をはじめとした骨格が育ち切っておらず、その上痩せ型なものだから余計に小さく見えた。
「こんな小さな体で……今までよく頑張ったな」
「うぅ……っ……リッジライン様……!!」
「大丈夫だ。もう大丈夫だから……な」
俺と幼女は感動的な抱擁を……するには少々彼女の大きさが足りなかったので、俺は彼女を抱き上げた。
「俺のことはファルコーと呼んでくれ。ファル、でもいいぞ」
「そんな、恐れ多いですわ……よろしいのですか?」
「もちろんさ、俺のお姫様。この先どんなことがあろうとも、君を守ってみせる」
「……はい、ファル様……
わたくしの名は……」
―ファルコー・リッジライン妄想劇場 おしまい―
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さて……シミュレーションは完璧。
本番だぜ。
俺のハイパースナイパービームライフル「ゼムセル」が火を噴き、赤いビーム光が輸送機の後部ギリギリを削り取った。
撃たれた輸送機は一時的に姿勢を崩すが、すぐに持ち直す。だが……
ハッチは開くまい。
扉の開閉部分には、蝶番というものがある。
輸送機のハッチもそれは同様だ。仕組みや形は色々だが、飛んでくる輸送機の情報があればそれもわかる。
時速数百キロ、状況によっては音速を越えて飛ぶ輸送機の、蝶番という数メートル程度の狙撃ポイント。
それが、場合によっては一万メートルにも及ぶ空の果てに存在する。
だが、この俺、ファルコー・リッジラインにとっちゃあ……
――えっ?
中から青いレーザー飛び出してハッチ吹っ飛んだんですけど?
えっ……?
うそだろ……?
なんでぇぇええええ!?!?
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