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結局歩くのよ

 大きな道へ出て、そこでバス停を探そうと決意した私は、よく分からない場所にいた。始発のバス停を探してぐるぐる回りすぎたようだ。


 だが心配ご無用、あそこに見えるカラオケ屋を目指せばいいのだ。それだけはちゃんと覚えていた。わりとすぐにカラオケ屋のビルまで来ることが出来た私は、ある道を見つめていた。


 先月来た時は向こうの角を曲がったけど、違う景色も見たいしなぁ。よく見たらこっちの角を曲がるとすごい下り坂だ。こっちの方が楽そうだし、こっちにしよう。1本くらい手前でもあの大きい道に出るよね、多分。うん、どう考えても出るよ、だってあっちなんだもん。


 すっげ! この坂すっげ! めっちゃくちゃな角度の坂だ! 楽し〜ひゃははぁ〜! ドテン! 私は転んでしまった。私は目が悪いので、白っぽい地面に白っぽい段差があることに気付けなかった。しかし、ちゃんと受け身は取れていたので、かすり傷で済んだ。


 仕切り直しだ、歩くぜぇ! トコトコと坂を下っていくと、足が疲れ始めてきたのに気が付いた。もしかして下り坂って普通より疲れる? めっちゃ急な坂だから少し踏ん張りながら歩いてるけど、これ疲れるな。


 あ、コンビニ発見。私はこういう建物を見つけると、自分が今正しい道を進んでいるかどうか地図を見て確かめるのだ。私は地図を見て驚愕した。前回歩いた1本向こうの道と今歩いている道は、V字のような関係にあるのだ。歩けば歩くほど、無駄に斜めに進んでしまう。やはりあっちを通っていれば良かったのか⋯⋯!


 私はすぐにここを曲がった。∀の字の横棒のような感じで歩いた。しばらくすると、見覚えのある道に出た。先月来た時に通った道だ。まあ当たり前なのだが。同じタイマッサージの店2つがすごく狭い間隔で建っていたので印象に残っていたのだ。


 ここを真っ直ぐ行けば⋯⋯あ、少し違うようだ。前に陸橋が見える。なのでもう少し左だ。左の道に入り、ジグザグと進んで行った。やはり都会は電線が多い。そういえば電線のない街がもうあるって聞いた気がするな。そのうち日本から電線が消えるのだろうか。電柱に登る酔っ払っいも見れなくなるのかな。見たことないけど。


 そんなことを考えながら歩いていると、視界の上の方に白い何かが見えた。私はとっさに後ろに飛んで躱した。鳥のフンだ。危ないところだった。私は昔から反射神経が良く、事故への対応力も高かった。


 余談だが、私はとても運が悪く、この半年でパチンコで250万ほど負けている。パチンコに限らず、今までの人生で運が悪いと感じることは多々あった。普通の人の倍くらいあったはずだ。なので私は、本来ならもう死んでいたかもしれないんだ。死もだいたい運で決まると思ってるからね。その運の悪さに抗った結果がこの反射神経と対応力だ。ただ、物理的なこと以外の対応力はないようで、臨機応変に対応することが出来ない。今日こんなことになっているのも対応力が足りていないからだろう。


 ⋯⋯よし、そろそろ例の道に出られるかな。という所でトラップ発動! 工事中! 私はまわり道をしてやっと銭湯の道に出た。ここから1kmくらいだが、私の目的はバスで銭湯に行くことだ。無駄に反対方向に行って犠牲になった運賃の魂も背負っているのだ。ここは譲れない。景色を楽しみながらバス停を探そう。先月歩道に綺麗に咲いていたツツジたちは跡形もなく消えていた。


 ゴオオオオー


 バスの音だ。やはりここはバスが通っている。あ、バス停そこにあるじゃん! 間に合うか? って止まらんのかい! そうだよな、誰もいなければ止まらんよね。もうこのまま歩くか。次のバスもいつ来るか分からんし。待ってるより歩いた方が早そうだもんね。


 ゴオオオオー


 バスの音だ。マジか、1分も経ってないぞ。どうなってるんだこの町は。でも良かった、これで乗れる。念願が叶うのだ。


 ゴオオオオー


 止まらずに行ってしまった。間に合わなかった私も悪いけど、ちょっとくらい止まってくれてもいいのでは? 私はバス停に着くと、時刻表を確認した。むむ、このバス停、目的地じゃないか! ということはあの角に銭湯が! 私は満面の笑みで歩き出した。


 ドゴーン!


 うるさい町だ。と思い音のした方を見ると、先月見た景色があった。そうだ、前回はここを曲がって銭湯の建物の裏側から入ったんだ。それに気付いた瞬間、私は声を上げた。


「あっ!」


 パチンコ海物語で熱くないと思っていたノーマルリーチで当たる時の0.5秒前に出る声と全く同じだった。


 まあどちらから入ってもあまり変わらないのだが、せっかくなので裏から入ることにした。建物に入ると、7月31日で閉館という紙が貼ってあった。例のウイルスのせいなのかなぁ。


 券売機で入浴券を購入する。せっかくだし、マッサージも受けてみようかな。お金ないから1番短いやつだけど。私は合計2200円分の券をカウンターに差し出した。


「マッサージ空いてるのが1番早くて1時間半後ですけど、何時にしますか」


 1時間半って⋯⋯もう買っちゃったから受けるしかないよな。そんなに待ち時間が発生するんなら券売機にメニューを入れるなよな。カウンターでしか予約出来ないようにしろよ。仕方がないので1時間半後に予約した。


 脱衣所に入ると、鬼のように混んでいた。おいおい、月曜日だぜ? みんなどうしちまったんだよ! みんな休みなのかよ!


 私はうんこがしたかったので、とりあえずロッカーに荷物を入れ、鍵を閉めてトイレに向かった。ここのトイレってみんな裸で入ってるんだよな。この便座もおっさんたちの生尻が⋯⋯って生尻なのはどこも同じか。


 トイレから出ると、私のロッカーの前で裸のおじさんが踊っていた。お前な、踊ってないで早くどけよ。と心の中で言いながら、鍵を手に持っておじさんの近くに立ってみた。察してくれるかな。


「いっちにーさんしっ! にーにっさんしっ!」


 すんません、踊ってたんじゃなくて体操してたみたいです。おんなじだよ! ここでやるな! どけ!


 しばらく体操した後、おじさんは裸のまま浴場と反対の方向に歩いていった。よし、やっと着替えられる。私は服とズボンを脱ぎ、ハンガーにかけた。さすがに汗かいてるからね。私はノーパン派なので、本当に服とズボンの2つだけハンガーにかけた。


 ちっちゃいタオルを持っていざ入浴!

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― 新着の感想 ―
 え? なに?  ネタじゃなくて本当にノーパン⁈  だったら服を着る際は、ズボンのチャックの閉め忘れに特に注意しないと。  ……と言っても、これから入浴なんですけどね。
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