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子狐幻想譚  作者: 蒼井奏太
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第三幕(幼馴染の葛藤)後編

 少女は見つめたまま答えた。

「なんか紫色のモヤモヤがやつの体から溢れる様に出てるから分かりやすいわね」

 少女は答えた。


「へぇ、そこまで見えてて今まで怪異と出会わなかったのは奇跡だね」

 コンは凄いものを見る様に答えた。


さっきのイメージを固め一薙ぎ

「きゅーーー」

 体が二つに裂け絶命の声を上げ消えていくカマイタチ。


「これでいいのかしら?」

 自慢げに言う少女。

「十分すぎる程の強さだよ」

「あとは怪異の感知が出来るようになれば頼もしいんだけどねー」


「感知か…うーん…あっちかな?」

 少女は構え一薙ぎした。

 遠くの方でカマイタチの絶命の声が聞こえた。


「末恐ろしいな…素質はあったけど、まさかここまでとは…」

 コンは恐れをなしながら答えた。


「これぐらい当然でしょ」

 実は勘だったのだが偉そうに言っていた。


 本殿に戻ってきて、もう夜も遅いので今日は休むことにした。


ー次の日ーー


 少女は洗濯をしていた。

 水の力は便利で服を水の中に入れ回転させることで洗濯機のような事もできる。

 それから体にまとわせればお風呂代わりにもなり便利だった。

 洗濯物は本殿の裏手に干すことにして

 日がな一日、討伐ばかりしていた。

 それも苦じゃなく半分楽しんでいた。

 自分自身も驚いている性格に若干、戸惑いながらも少女は討伐を続けていた。

 

ー夜ーー


「今日も一杯、討伐したわよー」

少女は言う。

「おつかれさま」

労うコン。


「だいぶ戦闘にも慣れてきたわ」

 少女は言う

「そうだね、見事な活躍だよ」

「この周辺にはもうカマイタチはいなさそうだ。」

「これでしばらくは大丈夫そうだよ」

コンは言う


「それじゃしばらくは暇なのね?」

 少女は期待を込めて聞いた。

「そうだね、このままカマイタチの数の維持をしてくれれば大丈夫」

コンは答えた。


「了解したわ。任せといて」

「ちょっと検証してみたいこともあったからちょうどいいわ」


「検証?なにをするんだい?」


「ちょっとね…」

「ところで四聖獣ってどんなのいるの?」

 誤魔化す様に聞いてみた。


「ボクも実は詳しいことは分からないんだけど、伝承では悪鬼あらわる時、大地の守護者たる四つの神が力を授けるだろう」

 という内容らしい。

 ありきたりな内容なだけにちょっと残念な気持ちになった。


「悪鬼っていうのは?」

気持ちを切り替えて聞いてみた。


「悪鬼についても昔に封印された鬼くらいしか分かってないんだ。」

「そして、封印された場所も分かってないんだ」

コンは言った。


「なるほどねー、なんとなくわかった。」

「前の管理者は今何してるの?」


「前の管理者、お師匠様なんだけど…今、行方不明なんだ、だから現管理者というよりも管理者代行って言った方が正しいのかな」

「本来は管理者が怪異と封印の管理をやるんだけど、急に変わらずを得なくなった上に怪異の数が異様に増えた為に、こうやって助けを求めてるんだ」


「なるほど。お師匠様だったのね…」

「何か兆候とかはあったの?」

「怪異の数が増えてるってどれくらい?」

 少女は聞いた。


「封印が解けてしまったとは言っていたけど…。なんの封印が解けたのかは分からないんだ…」


「なるほど」

「あなたのお師匠様の捜索も考えて行かないとだね」


「ありがとう」

コンは頭を下げた。

「そして、怪異については一週間で10匹~20匹くらい増えてるみたいなんだ」

「まだ、カマイタチだけなら良い方なんだけど、さらに封印が解けて色々な怪異が動き始めると収集がつかなくなると思うんだ。」

コンは心配そうに言った。


「頑張って行きましょう」

「大丈夫よ。きっとお師匠様はみつかるわ」

少女は希望を込めてそう言った。


ー数日後ーー


「あーーベッドで寝たいー」

 朝から少女は愚痴を漏らした。

「この生活も早いもので3日目かー」

 学校にも行かなきゃならないのは分かっているがあまり勉強は好きな方ではない少女であった。

 周りに期待されるからそれに応える形で上位をキープしてきたがもうこれ以上はやりたくないと考えている。

「どうせ何十年後には完全に忘れてるんだろうし、メリットあるのかなぁ」

「先生なんかになれば違うんだろうけれど、人に教えるの苦手だしなぁ」

 こういうロジックで大学まで出る意味を見い出せないでいた。


(ー実に贅沢な望みであるー)


 そんな風に思うコンであった。


「今日の見回り行ってくるわね。ついでにコンビニで何か買ってくるわ」


 いつものように神社周辺の見回りを行い安全を確認してから

 パーカーにフードを被りジョギングしながらコンビニへ向かう少女。

 さらに家から反対方向に進むと。

メジャーなコンビニがある。

 そのコンビニに最近はお世話になっている。貯金をしていたおかげで食べることには困らないし、ゴミもコンビニの敷地内にあるゴミ箱に捨てれるので、実にラッキーなのだ。


 いつものようにパンと牛乳を買って戻っていると…。

 

 今日は異変があった。


「え?なんで?」

 カマイタチが横たわって居たのだ。

私はすぐさま身構えるーー


森の中から気配がする…

得体のしれない嫌な感じだ…


そしてーー


 そいつは姿を現した。


 ー小鬼だーー


 赤い肌に白い角と牙、腰にはぼろ布を巻いており、手には棍棒(こんぼう)を持っていた。


ー異常だったーー


「うがぁー、うがぁー」

 こっちを見て唸っている…。

 依り代を構え、臨戦態勢に移行する。


 次の瞬間、小鬼が消えたーー

 物凄いスピードで少女に近寄ると一撃が少女に撃ち込まれる。

 懐に入るのがギリギリ見えた彼女。

 依り代の柄の部分で攻撃をいなし、背後より一閃…


 だが、当たらないーーー。

 薙ぐ間には避けられていた。


 ふと少女は考えていた事を試そうと思った。

 小鬼と右手にも意識を集中しながら能力を使い始めた。

(圧縮…圧縮…)

 すると、水が段々氷になっていき氷の槍が出来上がった。

 それを意識できる最大のスピードで飛ばした。


 ーシュンーー


 小鬼は躱した。


「うがぁ!!」

 小鬼は唸った。まるで何かを怖がるように

 そう恐怖を与えることが出来たのだ。

「うがぁ、うがぁ」

 小鬼はカマイタチの事は諦め、森の中に消えていった。


「ハァ…!」

 その場にへたり込んでしまう少女。

 少女は感じた…間一髪だったと…


「あ…、あぶなかった…意表を突かれたわ…」

「あんなに速く動けるのね…怪異って」

 力不足を痛感する少女。


「もっと頑張らなくちゃ…」

 自分を鼓舞するように言った。


 そんなことが起こったので、急いで神社まで戻ると、コンはいつも通り境内でひなたぼっこをしていた。


 その姿に苛立ちを覚え八つ当たりをしてしまう。

「ちょっと!こっちは大変だったのよ!?」

「ひなたぼっこなんてしてないで、情報を教えなさいよ!」

 少女は必死だった。

「小さい鬼の怪異についておしえて!」

 落ち着きながら話を進める。



「ん…なんか、ごめんね…」

「それで、小さい鬼の怪異だったね…」


「そいつは小鬼って言う、鬼の子供の怪異なんだ。」

「動きは素早いが知性が低いから低級の怪異に分類されているよ」


「あれで低級!?」

「どれだけアバウトなのよ…」

 少女はしゃがみ込み頭を抱えた。

「確かに、人的被害しか出なさそうだけど…」

「あの動きは凄かったわ…」

「速すぎるわよ…序盤に出てくる敵じゃない…」

少女は落ち着いて話した。


「そんなことボクに言われても…」

「出会ったら倒すの精神でいって貰わないと勝てないよ?」


「あれは、無理よ…」

「攻撃当たらないもん」

 少女は静かに答える。


「困ったね…どうにかしないと…」

コンは考える。

 

「どうにかなるの?身体能力とか上がるとか!?」

 少女が期待を込めながら聞いてみると


「現状、身体能力は上がってるはずだよ」

「だから小鬼の攻撃を避けれたのかもしれない」


 油断しなきゃ勝てるんじゃないだろうかと思うコンであるが

 対して少女は焦りが脳裏にこびりついて離れない。


 そして小鬼がいつ出てくるかも分からない状態でストレスが溜まってしまい。

 いざコンが教えてくれると言っても信じられなくなってしまったのであった。


 小鬼を探すのを日課として数日を過ごし、その間にカマイタチで能力の練習をし、小鬼との戦いに備えていた。


 そしてついにその時が来た!!

 そう居たのだ。小鬼が…。

 森の中の小川で魚を取ろうと奮闘中の小鬼…。

 少女は、出来る限り鋭利に尖らせた槍をイメージしそれを放ったーー。


ーシュンーー


「うがぁ!?」

 一瞬、こちらに気が付いた小鬼はギリギリの所で体をそらし致命傷を免れた。

 しかし、

「ぐあぁぁ、ぐあぁぁ」

 左肩に被弾し、こちらを睨んで鳴いている小鬼、


 それに対しもう一撃食らわせようと待機モーションを行い飛ばそうとした瞬間、素早い動きで小鬼は川上へと逃げて行った。


「っ!…逃がしたか。」

 苦い顔をする少女。

「もどろう…」

 神社へと戻るのだった…。


ーー神社ーー


「どうしたんだい?」

 コンが聞いた。

「小鬼を逃がしちゃったの…」

 悲しそうに言う少女。

「やっぱり倒せない?」

 コンが心配そうに聞いてくる。

「大丈夫よ!!私がなんとかしてみせるから!心配しなくても平気よ!」

「私一人だけでも十分戦えてるし大丈夫よ」

 そう言ってまた小鬼を探しに行く少女であった。


ーその日の夕方ーー


 成果もなしに少女は神社に戻りつつ考えていた。

「こんな時、奏太ならどうするのかなぁ…。」

 この数日は本当に必死に生きていたせいもあり、大好きな幼馴染のことを思い出したら泣きたくなってきてしまった少女…。

「我慢、我慢、」

 自分に言い聞かせるように言う少女。


 神社の境内から話し声が聞こえた。


(ん?コン?誰かと喋ってる?)

「分かったよ、ありがとう」

(え?か…なた…?)

(なんで奏太がいるの?)




「ん?イタチか?めずらしいなぁ」

(イタチって…カマイタチ!?)

「あぶない!そいつは怪異だ!」

(遅いわよ!?コンさん!?)

「うわ!、あぶな!!」

(え!?攻撃されてる!?)


「奏太!!」

 少女は勢いよく飛び出した。

「なにしてるの!早くそいつから離れて!!」

「きゅーー」

 という鳴き声と共に風の刃が(ほとばし)った。

「ハァ!」

 鳴き声と同時に少女も水の刃で攻撃を繰り出した。


 すると、水刃が風刃を消滅させ。

 そのままの勢いでカマイタチを両断し、消滅させることが出来た。


ーその場に静寂が戻るー


「コン!居るんでしょ!出てきなさい!!」

少女は怒りながら聞いた。

「ここにいるよ」

奏太の後ろから何気なく登場するコン。

「なんでここに奏太がいるの!」

「説明なさい!」

少女は不安な心を悟られないように強く言った。

「彼には助けを願ったんだよ」

平静に言うコン

「私だけで十分よ!って言ったわよね?」

少女は怒りながら言う。

「・・・」

そんな二人を見ている奏太

「青空その辺にして欲しんだけど…?」

事情を聞きたい奏太は尋ねる。

「っ…!!」

(久しぶりの奏太…)

(汗臭くないかしら?)

(恥ずかしいわ////)


ー説明終了後ーー


「なぁ青空、一緒に家に帰ろう?」

「お母さん凄く心配してるんだ」

「もう少し話を聞いてあげればよかったとか、話を聞かなかったから帰ってこない。私が原因で事件に巻き込まれたんだってずっと悔いてるんだ」


「だから帰ろう?青空…」

「まだやらなきゃならないことがあるのよ…」

「それが済むまで帰れないわ…」

 少女は小鬼のことを気にして帰らないつもりでいる。

「それは俺も手伝える?」

 奏太にそう言われた瞬間に

「だめよ!」

 少女はそう呟いていた。

(までなりたて操者の奏太はいいおもちゃになってしまうわ)

「それじゃ、俺も帰らない…」

 奏太は本気で言っているようだ。

(あぁ…かなたは頑固でやさしいな…)

「わかった…帰るわ」

 少女は諦めてつげた。


ー帰路の最中ーー


「うそ…でしょ?…」

(傷が治るですって!?)

 少女は彼の一挙手一投足を見逃すものかと必死になって見ていた


ー沈黙中ーー


(傷が治るなんてズルい!!)

(私も炎が良かった…)

(ズルいズルいズルい!)

(なんで私は水なの!?)

 少女は嫉妬していた。

 他に何も考えられないくらいに、狂おしく嫉妬していた。

 少年に恋し、嫉妬し、醜いな、と頭の片隅に存在する意識と睨めっこする

 そして少女は歩き出す…。



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