第三幕(幼馴染の葛藤)前編
ーー時は一週間前に戻りーー
神社の階段の前に座る少女は一人愚痴を漏らした。
「ホントにお母さんとお父さんもなんで分かってくれないのよ!」
将来の為に進学を希望する両親、
反対に就職を望む少女。
少女の成績は常に上位をキープしてはいるが、進学してまで勉強をしたいとは少女は思ってはいない。
それに対して両親は、今のご時世は、大学まで出ないと生活できないぞ!っとケンカになってしまったのだ。
そんなことを考えていると一陣の風が吹いた。
すると、少女の視界は黒色に染まった。
「え?ここは?あれ?階段に座ってたはずなのに草原の上に立ってるなんて…」
そう少女は草原の上に立っていたーー
「やぁ!」
声のした方を向くと小さい狐が姿勢をただして佇んでいた。
「ごめんね、いきなりここに連れ込んでしまって」
「きつねがしゃべった!?」
少女は驚いた。
「話をつづけるよ?」
スルーしながら答えて次に行こうとする子狐。
「ちょっと!待って!?気持ちを落ちつかせてくれるかな!?」
慌てながら言う少女。
「分かったよ…」ほ
答える子狐。
「すーはー、すーはー、すーはー」
「よし!いつでもいいよ!」
呼吸を整え心の整理をし、少女は聞く準備した。
「改めまして、ボクの名前はコン!」
「君をここに連れ込んだ張本人なんだ…。」
「君には強い素質を感じて、居ても立っても居られなくて…この神域に連れ込んだんだ…」
コンは申し訳なさそうに言った。
「え?素質?神域?分からないことばかりだけど?」
少女は困惑しながら答えた。
「とりあえず、一つずつ説明するね」
「まず、強い素質」
「これはボク達の敵…怪異を倒すための力を扱える素質。操者としての力」
「それが高かったからこの神域に連れ込んだんだ。」
「次に、この神域」
「この空間は簡単に言うと結界みたいもので外界と空間を隔てていて、現実世界に影響が無い様にするためのものと考えてくれていいよ」
「最後に、能力についてはキミは水の力が相性が良さそうだ。」
「何か、質問はあるかな?」
コンは丁寧に告げた。
「とりあえず、大体分かったわ…」
「私の自己紹介をするわね。」
「名前は柊木 青空よ。」
「剣道部の副部長をやっているわ。」
「力とか出来れば拒否したいのだけれども…可能かしら?」
軽く自己紹介しながら拒否してみた。
「拒否は出来ればしてほしくないなー」
「どうしても拒否するなら一生ここからは出られないことを覚悟してね!」
「どうしてもお願いしたいんだ!頼むよ!キミしか居ないんだ!」
頭を下げるコン。
「うーん、嫌なんだけどなー」
心底嫌そうに言う青空。
「とりあえず能力は有って困るものじゃないし受け取ってよ」
「怪異が見えると襲われる可能性もあるかもしれないし」
コンは説得しながら心配しながら言う
「わかったわよ。受け取るわ…」
しぶしぶ従う青空。
「それじゃこっちに来てくれるかい?」
そういってしばらく歩くと大きな池があった。
その池に向かいコンは何かを呼んだ。
「おーい、出てきておくれー」
するとーー出てきたのは…一匹の河童だった…。
「なんなんだい、どうかしたのー?」
と返事をする河童
「すまないが、キミの力を貸してあげて欲しいんだ。」
コンは短く言った後に説明し始めた。
やがて、一通り説明が終わったのか河童が少女の方を向いて手をかざすと少女の体の周りに小さな水滴が集まり始めた。
そして、少女の体の周りの水が光ってるのか、月明りで光ってるのか、分からないが輝き始め、河童は手の平を下ろした。
そして少女は自分が異常なことに気が付いた。
そう…体が暖かいのだ水に包まれているのに…。
お湯ではなく水なのは、理解出来るようになった少女。
まとわりつくようになった水を少女は吹き飛ばすようにイメージし腕を振った。
すると…体にまとった水が四散したのだ。
次にイメージしたのは水の槍。
それをコンに向けて放つ。
「わああぁぁ!なにをするんだぁ!」
と避けながら、流石に声を荒げるコン
「ちっ!」
悔しそうな少女であった。
「もう!当たったらどうしてくれるのさ」
愚痴るコン。
「悪かったわよ、ちょっとした仕返しのつもりだったの」
「本気で当てようとは思ってなかったわ」
謝りながら言い訳をする少女だった。
「とりあえずこれで力は使えるようになったからいいよね。」
そう言い残して河童は池に消えていった。
「力かイメージでとりあえず大体のことはできそうね」
少女は簡単に言う。
「やっぱりボクの勘は正しかったね!」
「キミはやっぱりすごいや!!もう水の力を使いこなしている!」
感嘆の声を上げるコン。
一度、元の世界に戻りたいと思った少女はコンに提案してみた。
「ねぇコン、あなたを助けてあげるの約束するから元の世界に返してくれない?」
すると…
「構わないよ、依り代も渡さないとならないしね」
ーパッーー
次の瞬間…神社の境内に少女とコンは居た。
呆然としていた少女に見向きもせずに コンは本殿に向かいながら声をかけた。
「おーい、こっちだよー」
少女は我を取り戻し、小走りにコンを追いかけ本殿の中に入っていった。
「キミと相性がよさそうなのはー…」
「これにするわ!」
腰刀を手に取り一振りしながら少女は言った。
「えーそれじゃない…」
「キミと相性いいのは薙刀!」
「刀だと能力を発揮できないよー!」
「へ?そうなの?」
そう言いながら刀身に力を貯めた。
刀身に水を纏わせ終わったので本殿から一度出て一振りしてみた。
「ビシャッ」
バケツの中の水をぶちまけたような音をたてただけだった。
「ふむ…」
正直、どんなイメージをすればよいか分からなかった。
そんな事を知られまいと腹いせに…
右手に槍をイメージして投げてみた。
「ズドン!!」
派手な音をたて木が折れた…。
「武器いらないんじゃない?」
少女は言う。
「薙刀でやってみてよ!コツは薙ぐ感じ!まんまだけど」
コンも負けじと張り合った。
「わかったわよ、薙刀ね」
一本の薙刀を手に取りながら
次に力を貯めるイメージをし、水が刀身に溜まる。
それを大振りに刃を打ち出すイメージで放った。
ーヒュンーー
物凄いスピードで林に飛んで行き、木々を2.3本キレイに切り倒した。
「え!?マジかぁ…?凄いじゃん…私…」
やっと実感が湧いたのか歓喜の声がもれる。
「どうだい?満足したかい?」
「満足です!」
「これで立派な操者だよね?」
うっとりしながら少女は言った。
コンは言う。
「これでしばらくは安心できるよー」
「僕だけだと低級怪異すら倒せないから参ってたんだよね」
「ところで低級怪異って事は中級とかあるの?」
少女はふと感じた疑問を聞いてみた。
「まずこの世には妖怪と呼ばれる怪異が存在する。」
「低級=人災級で人に災害をもたらす小さな怪異」
「中級=人災級で人に災害及び一部環境に影響を及ぼす怪異」
「特級=厄災級で地域に影響をもたらす怪異」
「神話級=影響力が強大で歴史にも文献にも残るほどの怪異」
「この地では、四聖獣の封印の祠があり、土地の管理者によって守られて来た。」
「その四聖獣をこの地では神話級と言われ崇め奉られてきた」
「それで助けという話に戻るけど」
「この地の怪異の討伐と封印の管理をお願いしたいんだ」
「封印の管理?」
少女は聞いた。
「封印の管理って言うのは、ボクの能力に封印って能力があるんだけど影響力が在って倒しきれない怪異とかは弱らせて封印することが出来るんだ」
「それと討伐についてだけど」
「基本的には一般人に被害は少ないけど、生態系には影響は出るんだよね。他の動物を襲って捕食したりするから大きい動物なんかにも影響がでるし、そして一番の問題は怪異が集まれば瘴気が生まれ、瘴気が溜まれば淀みが生まれる」
「そして、淀みは環境や封印にも影響が出るから、出来るだけ速く討伐して欲しいんだ」
「お願いできるかな?」
「わかったわ」
「約束だものね。やるわよ」
「でも、やるからには本気でやるわ!」
「一旦、帰って準備してくる」
ーー夜中にそっと鍵を開け家の中へーー
この水の力は実に凄い…ピッキングまでも出来るのだ。
カチャン
静かに鍵が開く音がした。
両親の寝室は一階の一番奥。
私の部屋は二階の一番手前。
そっと部屋に入り身支度を整えた。
まず、制服は目立つので基本的には着ない方向で行こう。
続いて下着は在ればあるだけ、でもないか4着くらいでいいやと決める少女。
ボストンバッグに着替えを詰めて本格的に怪異討伐に準備を進めるのであった。
ーカチンーー
無事にバレることなく家を出ることが出来た。
少女は再び神社に向かうのであった。
戻ってきた少女にコンは
「本当に戻ってくるとは思わなかったよ」
「約束したのだから戻って来るわよ」
答える少女
「早速で悪いんだけど森の奥にカマイタチの怪異が沢山集まってるんだ。」
「カマイタチの討伐を当面の課題にして欲しいんだ」
「見た目はイタチなんだけど普通のイタチよりも大きく尻尾が長いのが特徴なんだ。わかるかな?あとは、気配が邪悪というか感覚で覚えて欲しいんだ…」
「お願いできるかな?」
コンは中ば強引に聞いてみた。
「わかったわ。とりあえず出会ったら教えて貰えると助かるのだけれど、それでいいかしら?」
「わかった。それじゃ一緒に来て」
「こっちの方から気配がーー」
ーヒュンーー
少女の真横を一陣の風が薙いだ。
「へ?」
少女はため息のように漏らした。
「気をつけて!あれはカマイタチっていう怪異なんだ!」
少女は見つめたまま答えた。