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子狐幻想譚  作者: 蒼井奏太
3/5

第二幕~再会~



「奏太!!」

 聞き覚えのある声に勢いよく振り返ると…

 そこに居たのは幼馴染の 柊木 青空 (ひいらぎ そら)だった。


「なにしてるの!早くそいつから離れて!!」


 青空は怒鳴りながらイタチに向かい攻撃を放つ


「きゅーーー」

 攻撃を紙一重で躱すイタチは標的を青空に変え攻撃を繰り出した。

「ハァ!!」

 イタチの攻撃を青空の持っていた薙刀から放った一閃が破りイタチに直撃する。

「きゅーーん」

 青空の一閃で倒され消えてゆくイタチ。


ーーその場は静寂を取り戻したーー


「コン!いるんでしょ!出てきなさい!!」

 怒声を含んだ声色でコンを呼ぶ青空


「ここにいるよ」

 奏太の後ろから何気なく登場するコン。


「なんでここに奏太がいるの!」

「説明なさい!」

 青空が続けて言う。


「彼には助けを願ったんだよ」

 平静に言うコン


「私だけで十分よ!って言ったわよね?」

 食ってかかる青空


「・・・」

そんな二人を見ている奏太


「青空その辺にして欲しんだけど…?」

 事情を聞きたい奏太は尋ねる。


「っ…!!」

 青空は黙る。


「それじゃ、説明よろしくお願いします。コンさん」


ーー説明中ーー


 怪異の説明が終わり

「次に青空さんについては一週間程前になるかな…強い素質の持ち主だったのでお願いして助けて貰ってるんだ。」

とコンが言ったと思った矢先に

「何がお願いよ!!半強制的に力を渡した癖になによ!!」

また怒りそうだったので矛先を変えようと話をずらした。


「青空ずっと探してたんだよ…どこで何してたんだよ…」

奏太は寂しそうに言った


「ごめんなさい…力を貰ってからは神社で寝食をしていたの…それに実は一度は家に帰っているのよ…」

申し訳ない気持ちで一杯の少女。


「そうだったのか…でも無事で本当によかった!!」

 奏太は安心して告げた。


「ところでコンが見えてるってことは素質があるってことでいいのよね?」

 コンに向かって言う少女。


「実はもう力を与えてあるよ」

 コンは平静に答える


「なんですって!?私が必死になってる間に終わってたの!?」

 呆れ顔の青空。


「まぁ神域の中は安全だしいいかもしれないわね、でも奏太も奏太よ簡単にOKしたんでしょ?どうせ…」

 今度はこちらを見ながら言う


「まぁ成り行きに力を貰ったけど。青空は違うの?」

 奏太は疑問に思い聞く


「こっちはいきなり連れ去らわれて草原まではいいわ」

「操者になるの拒否したら永久に閉じ込めるなんて言われるわ」

「能力在って困らないだろうからってなかば無理やりに操者にならされたわ」

 心底嫌そうに答える青空であった。





ーーしばらく話した後ーー


さすがに帰らないと両親が心配している事を青空に伝え説得して青空はそれをしぶしぶ了承した。

そして俺達は帰ることにした。


ーー帰り道ーー


「なぁー青空ー」

奏太が言う。

「何よー奏太ー」

同じように答える青空


「なんか実感湧かないんだけど本当に操者?になったんだよね?」

奏太は言う

「試しに掌に意識を集中して御覧なさいな」

青空もいう

「掌にかぁーやってみる」

体内の熱を掌に集めるイメージをする。


するとボッと音を立てて勢い良く炎が吹き出した。

「わわ…っと…難しいな」

焦りながら言う奏太。


「気を付けなさいよねー」

「火事とかごめんよー」

あきれながら言う青空。


「本当に操者になったんだなぁ…」

しみじみ言う奏太。


「私は反対だけどね!奏太が操者になるの!」

 青空は奏太に言った。

「なんでだよーいいじゃんかー」

「なんか楽しそうだし!」


奏太は楽しそうに話始めた

「それにまだ青空みたいな依り代貰ってないし」

「他にも試せてないこと多いし俺も怪異倒してみたい」

「それが誰かを救う事にも繋がると思うから!」


「私は出来れば奏太には傷ついて欲しくないんだよ!」

 悲しそうに言う青空。


「大丈夫だよ?ちょっとの傷じゃすぐ直るから」

平静に言う奏太


「え?うそでしょ?」

「私は…治らないよ…?」

訝しげに青空は聞いた。


「さっきカマイタチに受けた傷が狐火で消えたけど…」

「もしかして俺だけ?」

「ちょっとカッターで傷つけてみるね」

カッターナイフを取り出しながら言う奏太はそのまま指先を軽く切ってみた。


「いっつぅ…」

血が流れだすが見つめていると傷口から蒼い炎が漏れ出して血を含め傷ごとなかったことのように消えてしまった。


それを見て青空は…。

「うそ…でしょ?…」

それからは青空は黙ってしまい。

会話がない状態で家に着いてしまった。


青空の家の前に止まり、別れを告げようとしたとき青空が喋りだした。

「心配掛けたわね」

「探しててくれてありがとう」

「出来れば操者にはなって欲しくなかったな…」

「それじゃ…」

そういって別れを告げた彼女の背中を見つめたまま呆然としていると家の中から青空のお母さんの鳴き声が聞こえた…


ーー次の日ーー


 明け方に目を覚まし時計のアラームが鳴る前に止め、奏太は日課の準備をする。

 居間に降りてくると、母親がコーヒーを飲んでいた。

「おはよう、母さん」

「おはよう、奏太」

お互いに挨拶を交わし日課に出掛ける。


 日課は主にランニングと竹刀での素振りと筋トレの3項目を毎日している。

 まずは身体を温める為にランニング。

 次に筋トレを行い。

 最後に素振りをしている。


 ランニング中は音楽を聴いていることが多いが、今日は音楽は聴かずに走っていた。


「ハァ…ハァ…」

一定のリズムで聞こえる自分の吐息に集中しながら走るのも楽しいものだと思う奏太だった。


 今日のランニングは神社の方まで来ていた。

 神社に行けばコンに会えると思い階段を登る奏太。

最後の段差を登りきると…。


「って、何も起こらないか…」


 昨日のように神域に入ることを期待した奏太はかなり残念そうだった。


「おーい…コーン!いるかー?」

 少し大きめな声で呼びかけてみた。


 少しすると呼びかけに答える代わりにコンが欠伸をしながら本殿の下から出てきた。

「はふ…。朝早いねー…おはよー」

気だるそうに答えるコン。


「おはよう、コン、起こしちゃったかな…?」

申し訳なさそうに答える奏太。


「大丈夫だよ。それで何の用件だい?」

もう眠気は大丈夫そうに答えるコン。


「昨日は依り代貰ってなかったから貰えるかなと思って来たんだ。」

奏太は目を輝かせながら答える。


「そういえばまだだったね。依り代は本殿の中にあるよ」

「君と相性がいいのは刀かな…。」


中に入ると槍や刀、薙刀等の武器になりそうなものや鏡や祭具に使う物などが置かれていた。


奏太は辺りを見渡し、ため息交じりに歓声を告げた。

「わぁ…すげぇわ…これ大丈夫なの?」

「出入りして警察のお世話になったりしないかな?」

不安そうにいう奏太。


「大丈夫だよ。まず普通の人間には依り代は見えないんだよ。」

コン曰く、素質のある人間だけに依り代(武器)は見えるし触れるらしい。


 それを聞いて安心した奏太は一番奥の刀台に飾られた一振りの太刀を手に取った。

 鞘から抜くと銀色の眩しい光を放ちながら美しい刃が出てきた。

「キレイだ…」

奏太は吐息のように言った。


「どうだい?それが気に入ったかい?」

 コンは確かめるように奏太に聞いた。


 奏太は構えて一振りした。

「フン!…。結構重いな…」

「もう少し軽いのはあるかい?」


 そう言われてコンは部屋の角に在った打刀(うちがたな)の前に腰かけた。


 その様子を見て奏太はその刀を手に取り一振りしてみた。

「フン!」

「まだ、重たいけど…手に馴染むな…」

「コン、コレにするよ」


「決まりだね。それじゃ一度外に出ようか」


「わかった」

 うなずく奏太。


 外に移動してきてコンは言った

「それじゃ能力の練習をしようか、刀に炎を移すイメージをしてみて」


 奏太は言われたようにイメージをしてみた。

 すると右手が暖かくなり刀身に蒼炎が広がり始めた。

 しばらく集中していると刀身を蒼炎が包んだ。

その状態で奏太は上段に構え、勢いよく一振りすると炎の刃が前方の樹木に向かった。


ーヒュンッー


大きな音を立て一本の木が倒れた。


「うわ…マジか…すげぇ…」

奏太は感嘆の声を漏らす。


「へー初めてでそこまでの威力が出るのは凄いや、力を託して良かったよ!」

「そういえばコン、この狐火はどんな能力なんだい?傷が治ったりしたけれど」


「え?傷が治った?」

 コンは困惑しながら聞き返した。


「うん、見てて?」


ーシュッー


 奏太は手のひらを切りつけた。

 血が滴りながら徐々に蒼炎に包まれる手のひら。地面に滴った血にも蒼炎が生まれ跡形もなく消え去った。

 それをひたすら見つめ続けるコン。

「どうだい?治っただろ?」

 

疑問を送る奏太。

「これは…ボクにも分からない…」

「でも…!、きっと何か理由があるはずだよ」

「それもちょっとずつ調べていこう!」

 コンは勇気づけるように言った。


「さて、そろそろ家に帰ろうかな。学校もあるし支度しないと。」

 時間を気にしながら奏太は言った。


「わかったよ。気を付けて帰ってね。」

コンは笑いながら言った。


ーー帰り道ーー


「刀って意外と重たいんだなぁ」

 しみじみ呟きながら家に向かい走る奏太。


 しばらく走っていると学校を過ぎた

辺りでポニーテール姿の青空が前方を走っているのが見えた。


 ペースを早め青空に追いつこうとす

る奏太。


 家まであと学校から半分の所で青空

と合流できた奏太。



「おはよう、青空」

 奏太は軽く肩を叩きながら挨拶した。


「!?びっくりした…」

 青空は音楽を聴きながらだったせいもあり、かなりビックリしていた。


「ごめん!!びっくりさせたよな…済まない。」


「大丈夫よ。おはよう、音楽聴いてたから分からなかったわ」

「今日はいつもより走る時間が遅いわね、何かあったの?」


「あぁ!神社まで行って依り代貰ってきたんだ。」


「そうなの?もしかして、肩から提げてる刀がそうなのかしら?」


「ご名答。相性がいいのが刀だってさ」


「ふーん、私は昨日見た通り薙刀よ」

「薙刀使いやすいんだけど…リーチが長いから癖が強いのよね」


「そういえば、コンにも傷が治る話をしてみたら、コンにもわからないんだってさ。」


「そうなのね、命に関りが無ければいいのだけれども…」

 心配そうに聞く青空であった。


ーー数分後ーー


 家の前についてお互い別れの挨拶を交わし自宅に戻り、シャワーを浴びる。

 そして、学校に行く支度をし、リビングに降りてきた。

 「今日の朝食はトーストか美味しそうだ」


「奏太、コーヒーいる?」

 母親が聞いてくれる。


「今日は大丈夫かな、牛乳の方がいいから自分でやるよ」

 父親が他界してから母親一人で育ててくれていた為か少し過保護気味の母親。


 そんな母親との関係はお互いに程よい関係を築けていると思う。

 朝食を済ませ学校へ向かう為に鞄を持って玄関に向かう。

「行ってきます!」


 少し大き目な声で挨拶した。

 そして、玄関のドアを開けようとしたと同時にチャイムが鳴った。

 静かに鍵を開け、扉を開くと、青空が立っていた。


「おはよう。奏太。」


「おはよう。青空。」

 

 お互いちゃんと挨拶を交わしあった。

「それじゃ学校行こうか。」


 青空は小さくうなずくと奏太に道を譲った。



ーーしばらく歩いているとーー



「やっぱり、私ははんたーい」


「奏太は戦っちゃダメ!」


 唐突に言う青空。


「なんでそこまで反対するんだよ。そんなに頼りないのか?」

 悲しくなり俯きながら言う奏太。


「そんなことはないけど…納得できないの!」

「なんで奏太なの?もう信じらんない!」

 プリプリ怒り始める青空。

「そもそも私のときは君しかいないんだとか言われたから許可したけど。」

「なんで奏太まで仲間になってるか分からないし」

「この一週間、能力の訓練と怪異と戦うことに慣れようと…必死で…あっという間…だったし…」

 怒り始めたと思ったら泣きそうになる青空。


「本当に…ほんとうに…たいへんだったんだからぁ…ふ…ふぇ…ふぇぇぇん…」

 とうとう泣いてしまった青空。


「よしよし、頑張ったな、えらいぞ、青空…」

 そっと抱き寄せ、周りに見えないように隠しながらなぐさめる奏太。


 しばらく、ぐずっていた青空だったが学校に行かなければならないのを思い出し、ハンカチで涙を拭っていた。


ゆっくりだけど学校に歩き始めた二人だった…。


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