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ボスの力

作者: ダルシン

 誤った。

 俺は大きな見当違いをしていたのだ。

 ボスの力がこれほどとは。


 俺はギャング組織「パッション」の暗殺チームのリーダーだ。

 命の危険にさらされながらも、組織にボスに尽くしてきた。

 だがどうだ。地位も報酬も冷遇されたままだ。

 俺たちは頭にきていた。

 だからボスを暗殺して、組織の麻薬ルートを乗っ取ることにした。チームのメンバー5人でそう決めた。

 だが、それはすぐにバレた。

 ボスを殺るにはボスのことを知らなきゃならない。

 ところが、ボスのことを知ろうとすること自体が組織の掟に反するのだ。

 俺たちの些細な動きすら見逃がさないその用心深さ。

 ボスは裏切り者の俺たちを始末しようと5人の刺客を送り込んできた。

 返り討ちにしてやったよ。

 俺たちだって伊達に危険な仕事をしてきたわけじゃない。

 すぐにボスは今度は一気に20人の刺客を送り込んできた。

 結果刺客全員を倒したものの、俺たちも殺られた。

 生き残ったのは俺一人。

 銃の弾もナイフも使い切り、最後は素手で殺った。

 俺は疲れていた。


 俺は目についたホテルに飛び込んだ。

 そして赤いネクタイのフロント係りの男に料金の倍の金額を握らせると、誰も部屋に通さず、電話も取り次ぐなといい、ベッドに潜り込んだ。

 とにかく疲れていたのだ。

 やっとこれで休息がとれると思った。

 それは誤りだった。

 息苦しさに目を覚ますと、さっきのフロント係りの男が俺に馬乗りになり、首を絞めて俺を殺そうとしていたのだ。とっくにボスに買収されていたのだ。

 俺はそいつを突き飛ばし、何度も何度も蹴り上げ、男のネクタイを使って締め上げて殺した。

 やっと体を休めることができると思ったのに。

 俺はホテルを出ることにした。

 そのホテルの他の従業員も買収されているだろうからだ。

 どこか他に体を休められるところを探そう。

 ホテルならばまだ他にたくさんある。

 

 だがそれは誤りだった。

 通行人たちが石を投げつけて来たのだ。

 次のホテルどころではない。

 俺は頭をかばいながら角を右に曲がった。

 そこには10人ほどが待ち構え、各自シャベルやバット、傘など、とにかく身近にあった武器になりそうなものを持って襲いかかって来た。なかには老婆もいたと思う。

 そいつらをなんとか振り切ると、また通行人からの投石だ。

 通行人だけでなく建物の中にいる連中までもが窓を開け、そこらにあるものを次々に俺に向かって投げつけて来た。

 町の住人全員がボスの配下だったのだ。

 どんなに強い奴でも疲れには勝てない。休みなく続く攻撃に足取りがおぼつかなくなる。

 どんな武術の達人でも100人組手はできても1000人組手はできないだろう。

 いくつかは頭に当たり、俺は血を流した。

 意識が朦朧としてくる。

 そんな中で、俺にチャンスが訪れた。

 幼稚園の送迎バス。

 数人の園児を下ろしたバスが停まっていた。

 俺はそれに乗り込んだ。

 中には初老の運転手と若い女の先生。そして12人の幼稚園児。

 助かった。

 俺は疲れ果てているし、意識も朦朧としている状況だが、こいつら全員を殺すことなど簡単だ。

 おそらく2人の大人を殺せば園児は怯えるだけだ。

 そしてこのバスで俺は逃走する。


 誤りだった。

 1人の園児が叫んだ。

「悪い奴が来たぞ。みんなやっつけるんだ」

 その号令とともに12人の幼稚園児たちが一斉に俺に襲いかかって来た。

 そして足に腕に噛みついた。

 幼稚園児とはいえ噛む力は強い。

 やがて俺は倒され、腹や耳、鼻と喰いちぎられていった。

 俺は幼稚園児たちに噛み殺されるのだ。

 幼稚園児ですら配下にできるとは。

 俺はボスの力を見誤った。

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