プロローグ
三日坊主...それは、3日おきにタダで説法を説きに来てくれる、心やさしきお坊さんのお話である。
注意:上記の内容は本編に何の関係も有りません。
俺の名前は…今語っても意味ないから省くことにしよう。
30後半のオッチャンだ。特に身体的特徴は無い。しいて言えば、ロリコンであり子供好きで、好きなペットは猫であることだな。まぁ、野良猫に懐かれたことはないが…
職業はIt関係の仕事をしていた。...そう過去形だ。仕事はやめた。理由としては、親孝行がすんで、奨学金の支払いもすんだし、飼っていたヌコ様が冥府に旅立たれてしまったからだ。たぶん一番最後が一番の理由である。
心の癒しを失った俺は、キャンプ道具を背負い、「迷いの山」と呼ばれるところに行った。なんでも、あの世に一番近い場所だとか、入ったら冥府に連れて行かれるとか、様々なうわさが流れていた。そんな山に来たのは、もちろん愛しのヌコ様に会えればと、少しの希望と気分転換にキャンプをしてみたいと思ったためだ。
今思えば、噂の意図することを考えれば、この森には毒性の強い食べ物が多かったり、狂暴な熊のせいで帰ってこれなかった人がいるだろうことは、すぐに予想がついたはずの俺は、この時ばかりは、悲しみでうまく情報整理ができていなかったのかもしれない。
朝早くに森へと侵入した俺は、獣道に沿ってずんずん進んでいく。歩くこと10数分、きれいな川に出た。あたりに大きな岩が多いことから、それなりに上流であることが分かる。
川から少し離れたところにテントを張り折り畳み式の椅子を開き、ミニコンロでお湯を沸かしお茶をすする。季節は、秋、辺りの紅葉を目で楽しみながら、川の流れる音に耳を澄ませば、まるで心が洗われるような気持になることだろう。気持ちが落ち着いたところで、カバンからA4の紙とクリップボードを出して川のスケッチをしてみる。絵はヘタクソだが、書いている間は余計な事を考えなくて済むから良い。
そうして絵を描いていれば、日が傾いていた。持ってきたカップ麺を食べれば夕食はおしまいだ。ごみはゴミ袋に入れて持ち帰る。そして早目の就寝である。
トイレに行きたくて起きたら辺りは霧に包まれていた。ちょうど朝日が昇って少しした位だろうか、空が見えないけど朝日の方角はわかるフシギ。
のろのろと、辺りを見回しながらトイレにいい場所を探していたら、足の踏み場が消えた。
「うわっ!」
ドシャッと少しくぼんでいるところに落ちたようだ。
そこは、大量の蛇の巣だったようで、シャーという威嚇音がしたと思ったら、腕と脚を噛まれていた。
痛みに悶えながらも逃げようとしたが、蛇の噛みついてくる量が多すぎて、すぐに動けなくなる。そのあと一秒か十数秒ぐらいは意識があったが、痛すぎて覚えていない。ただ一言、「ありがとう...」という掠れた声が聞こえた気がした。
俺の一生はコレでお終い。そう思っていたんだが、少しすると、痛みが嘘のようにスッと消えた。目の前が真っ暗であることは、意識の最後と同じだが。
寝返りを打ってみると、手が体に引っ付いて動かないし、そもそも手の感覚が無かった。俺は、奇跡的に一命をとりとめたのかも知れない。通りがかったキャンプ者に救われて、今は病院のベットの上なのだろうと思っていた。腕は切り落とすしかなかったのか、と初めは落胆したのだが、体を丸めてみると、どうやら状況が妙だった。自分の体に鱗があるのが分かった。というか、足が一つしかない。意味が分からず、起き上がろうとして天井に頭をぶつける。パキッと音がしたかと思ったら、天井にヒビが入りそこから明かりが微かに漏れていた。
(...もう一度だ!)
今度は勢いよく天井に頭をぶつけてみる。すると、天井はいとも簡単に外れ、外が見える。そこは、壁のところどころにはまっている青い石が薄ら光って幻想的な風景を写しだしていた。が、世界はブルースケールでどれもこれも青色だった。しいて言えば、生き物は赤い。まるでサーモグラフィーのような光景だった。そして自分の体は
(へ、蛇だァ!)
すらっと伸びるきれいなボディに腹と背の境目にラインが入っている。
兎にも角にも、これから、蛇としての生活が始まったのである。
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