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「おい、この俺をいったいどうするつもりだ」
「おやおや、まだわからないのかい。恋の恨みと言うのは、たいそう恐ろしいものなんだよ。だから僕は君を、ここに閉じ込めておくことにしたんだ。それも一生ね」
「一生? そんなのは無理だ」
「無理かどうかは、やってみないとわからないね」
「……ここは、どこだ?」
「そんな大事なこと、君に教えるはずがないだろう。たとえ知ったとしても、逃げられないから関係ないと言えば関係ないけどね。その鎖は、たとえ牛が暴れたとしても切れないほどの強度がある。人間では何をどうやっても、なんとかなるような代物じゃないよ」
そう言うと、宇崎は出て行った。
やつが去った後、俺は声の限りに叫んだ。
「誰かーーっ! 助けてくれーーっ!」
朝なのか?
とにかく目覚めた。
何せ窓がないからわからない。
時計もないのだ。
座り込み、どうしたもんかと思案していると、ドアが開き、小さな台車を押しながら宇崎が入って来た。
俺はなにか言おうとして、自分の喉がかすれてしまっていることに気付いた。
「おやおや、どうやらけっこう長い時間騒いでいたみたいだね。ご苦労なことだ。騒ぎたいんなら、好きなだけ騒ぐといいよい。たとえどんなに大きな声を出したとしても、人間の声が外まで届くことはないから」