7
たるんでいた鎖が真っ直ぐになった。ただそれだけだった。
――……。
鎖を見つめていると、後ろでガチャと音がした。
そこには鉄製のドアがあり、それが開いて宇崎が姿を現したのだ。
「お目覚めのようだな」
宇崎は右手に木刀の小刀。
左手にはトレーを持っていた。
トレーの上には一杯のご飯、料理された野菜と魚、ペットボトルのお茶があった。
「宇崎っ、きさま!」
「人間にはここをこんなふうに打撃を加えると、気絶するというところがあってね。僕が君を木刀で叩いたところがそうなんだけど。でも理屈ではわかっていたんだけど、実際にやったことがなくてね。まあ、うまくいってよかった。強く叩きすぎたり叩く箇所がずれたりすれば、下手をすれば死んでしまうってことも有り得るからね。でも君が気がついてくれてその心配もなくなった。まだ完璧とは言えないが。でももうコツは掴んだから、次にやるときはもっとうまくやるよ」
宇崎とは半年以上の付き合いがあるが、やつがこんなにも長いセリフをしゃべるところは、初めて見た。
宇崎が誰かの言葉に反応してする返事の大半が「うん」とか「ああ」とかなのだから。
宇崎は小刀を俺にむけて構えて言った。
「下がれ。線の内側まで」
言われて足元に白い線が描かれていることに気がついた。
円形の線が、壁に打ち込まれた鎖の根元を中心にして。