3
岬愛。
それが彼女の名前だった。
名字も名前も漢字一文字しかない。
ともに三文字づつの俺とは真反対だ。
そのことが俺にはものすごく愛おしいことのように思えた。
まあ好意を持つ女の名前なら、よほどのことがない限り、可愛らしく感じられるものなのだが。
俺は彼女の身辺を洗った。
そして意外な事実を知ることとなった。
なんと宇崎は剣道をやっていて、それも大小の二刀流使いとしては全国的に名の知れた男だったと言うことだ。
俺はそれまで、剣道において二刀流が正式に存在していたことすら知らなかったのだが。
そういえば無口で無表情な宇崎だが、ひ弱なオタクという印象はなかった。
小柄だが、かなり引き締まった肉体をしていたので、なにかスポーツでもやっているのかとは思ってはいたのだが、まさかそれが剣道と言う格闘技で、それも全日本クラスの実力者だったとは。
そして岬愛も剣道女子だった。
始めたのは二年ほど前で、同世代では頂点に立つとも言える宇崎は、憧れの存在だったというわけだ。
宇崎と岬は同い年だが、剣道の世界においては宇崎のほうが十年以上先輩なのだから。
――なるほどね。
岬が剣道を始めたきっかけは、肺に俺が聞いたこともない病気に侵され、それを克服するために父親の勧めで剣の道に入ったそうだ。
しかもその父親の知人と言うのが、宇崎の叔父さんにあたる人だ。
宇崎一族は、剣道の世界においてはかなり有名なようだ。
そしてその中の若手の有望株が、あの宇崎なのだ。