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思いっきり脛をかじらせてくれる親というものは、本当に有り難いものだ。
――これからもずっと、三日と空けずに肉を食い続ける人生を送るんだろうなあ。
と、俺は何の疑いもなくそう思っていた。
それは、ある日なんの前ぶりもなく突然訪れた。
キャンパスを一人歩いていると、宇崎が女を連れて歩いているのが目に入った。
宇崎は俺と同じゼミをとっているやつだが、暗くておとなしく、明るくおしゃべり好きな俺はやつを無視し、心の中で見下していた。
そんなやつがこともあろうか女を連れている。
しかもその女が、ものすごく可愛いのだ。
――えっ、なんで?
俺は宇崎が女に変なクスリでもやっているのではないかと、半ば本気で思ったものだ。
気がつくと俺は、二人の前に立っていた。
「よう」
「……」
宇崎は無言で軽く右手を上げた。
その様子を見ていた女が、二人は知り合いであると判断し、笑って頭を下げた。
その様子が、またとんでもなく可愛い。
俺は自分の全身になにかが走るのを、はっきりと感じた。
その時はそれで終わった。
しかし俺には一つ、大きな仕事が出来た。
その天使のような女を、宇崎から奪い取ることだ。