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「早く準備しろよ」
まだ寝ている諒子と白雊を起こし、朝食の準備をする。
仕事がひと段落したからか、今日は久々に良い朝を迎えられた気がするな……
「キョウ、おはよう」
寝癖をたてた白雊が軽い欠伸をし、リビングへ入ってくる。
「あぁ、おはよう」
あの一件の後日談を話すと、あの後クロナが俺に倒されたせいで楽園からの使徒は壊滅、そのまま勝利を収めたらしい。楽園からの使徒の連中は川神さんの手引きで裏学区に回収され、強制退学区の刑罰に処されここから退いて行った。
「矯平、お腹減った」
「準備できたから、さっさと食っちまえよ」
食卓にご飯、味噌汁、焼きシャケ、漬物を並べ朝食を食べ始める。
「えー、魚なの?」
「キョウわたしも魚な気分じゃない」
「お前ら、文句言ってないでさっさと食え。飯抜きにするぞ?」
まぁ、何とか白雊との約束は守れたわけだが、そのおかげで毎朝余計な気苦労が増えるようになってしまった……。
しばらくゆっくり食事をとっていたが諒子が不意に時計を見て、慌てて箸を進め始めた。
「ヤバ!そろそろ家でないと」
「そうだな、ちゃっちゃと済ませちまうか……」
急いで箸を動かす。朝食を食べ終えると流しに食器を片づけ家を出る支度をする。
「そうだ、白雊一応これ持っとけよ」
キッチンのカウンターに置いておいた俺のUSPを白雊に手渡す。
白雊は戦鬼の力を使ってあの大剣を具現化して戦うようなので武器を携帯させていなかったが。先日うちの風紀委員に注意されたので一応携帯してもらう。風紀委員に目をつけられると面倒だかからな。
白雊は俺から銃を受け取るとそそくさと玄関に向かう。
「まったく……」
近くに置いてある二つの弁当袋を見てため息を吐く。
「ほら、早く行こっ!」
「うん、キョウも早く」
「待て、コレ忘れんなよ?白雊もだ!」
カバンと黒巫女を背負った俺は両手の弁当を諒子と白雊に差し出す。二人ともそれを受け取ると急いでカバンの中にしまい込む。
「いってきまーす」
誰もいない寄宿舎に向かってそう告げると、俺ら三人は足早に学校を目指す。
「そういえばキョウ……」
歩いている途中で白雊に話しかけられる。
「どうした?」
「その……まだ言ってなかったから……」
「?」
白雊は会話に一呼吸置くと、いつもよりはっきりとした口調で
「キョウ、ありがとう」
顔をほころばせ、その清らかな碧眼で俺の方を見つめる。
その笑顔を見て微笑すると、俺は白雊の頭に手を置く。
「お礼を言われるほどじゃない。俺はただ約束を守っただけだからな」
「それでも――」
「ん?」
「それでも、本当に嬉しかった」
白雊がそう思ってくれるなら俺にとっても、十分嬉しいことだな。そう考え軽く感傷に浸っていると、朝から五月蝿いバカどもの声が耳に入ってきた。
「キョウちゃん達、いいところに!」
「お、ほんとだ……おっす、みんな!」
「おはよう、二人とも。で後ろから来るアレはなに?」
諒子が苦笑いしながら、二人の後ろを見ている。
「まてや!オラァ!」
声の主を探すと、何ともイカツイ男子高校生が五人ほどこちらにあ向かって走ってくる。
「朝から苦労させられるな、厄日か今日?」
今朝の占いを見てから家を出ればよかったと後悔しながらも、ポケットの中に手を突っ込みバタフライナイフを取り出す。
「キョウ、やるの?」
「あぁ、朝の眠気覚ましにちょうど良さそうだしな」
「さすがキョウちゃん分かってる!」
全員が各々武器を取る。
そう、これが俺らの日常であり、
「さっさと済ませるぞ」
ここは日本二十三学区なのだから――
ここで終わりです。
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