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「はぁ、そこにいるのは分かってるぞ?」
纏したナイフを階段の踊り場に投げるとナイフが壁に刺さり爆発、煙の中から男が現れる。
「そんなんで闇討ちなんて、百年早い」
「くっ」
男は二階へ上って行ってしまった……闇討ちしかできない腰抜けだったか。
階段を一段一段上って行きやっと二階に上ったと思っていたところに待ち構えていたのは、
「全員一斉に撃て!」
ライトマシンガンを構えた弾幕部隊。
「マジかよ!」
後ろに跳んで踊り場に着地すると上空を銃弾の雨が通過していく。
あとちょっとでハチの巣になってた……ここまで来たのに戦死なんて洒落にならんぞ。
「ふぅ……」
でもここで動かないんじゃ占拠なんて難しいし……ここをどうやって攻略するかな。
必死に悩んだ末にある答えにたどり着いた。
「しょうがない全部斬るか?」
再び、二階に上がり弾幕部隊の目の前に立つ。川神さんに修行で銃弾落としの練習をさせられたんだ、その時の感覚で斬り落とせば何とかなるだろう。
「ほら、来いよ」
ブレザーの内ポケットからサバイバルナイフを取り出し、左手にナイフ右手に黒巫女と二刀流の構えをとる。こんなことで止まってられるかよ。
「もう一度全員――」
そこまで言いかけた時、上から再び轟音が聞こえ……
「なんだ!」
弾幕部隊の真上の天井が壊れ、瓦礫が降り注ぐ。おかげでほぼエンドレス銃弾斬りを行わずにすんだわけだが、いったい誰が?
立ち込める砂煙の中から、黄金の大剣を持った少女が現れて俺に斬りかかってくる。振り押された刀を躱すと、刀が地面に刺さってしまい少女は刀を一生懸命引き抜こうとしていた。
「ちゃんと約束、守りに来たぞ」
少女の頭に軽く手を置く。
「キョウ?……」
俺の声に反応して、白雊がこちらをゆっくりと振り向く。俺の顔を見るなり胸に飛び込み、胸に顔をうずめて子供のように泣きじゃくった。
「怖かったよぉ!」
何も言わずその白い髪を優しく撫でる。
「おい、いたぞ!あいつらだやれっ!」
後ろを振り向くと、敵がゾロゾロと……よくこんな人数この階に集めたな。
「白雊、今は泣いてる暇はないぞ」
「……うん」
うずめていた顔を上げる。それを見た俺は白雊から頭から手を離し、再び刀を握りしめ戦闘態勢に入る。
「私も一緒に戦う」
白雊もやる気があるらしく、先ほどの大剣を地面から何とか引っこ抜くと軽々と大剣を持ち上げる。
「白雊お前が先に行け」
白雊の後に続いて、先頭集団に向かって走る。
前の接近武器持ったやつらより、後方で支援しようとしてる狙撃部隊の方が気になるな。見たところスナイパーもいるみたいだしな。
前を行く白雊が横一文字に敵を斬ろうと、刀を持っていた右肩を大きく開いた。そこで走る速さを上げ、刀が振られる瞬間に白雊の大剣に跳び乗り白雊が大剣を振る勢いを利用し、できるだけ低くそして長く跳ぶ。
「うおぉぉぉぉぉ!」
体を少し捻ってから刀を斜めに振り下ろすと同時に着地。振り向く動作と連動させて刀を右に動かし右後ろにいた敵を斬る。空いている左手では凍る球を撃ちまくる。
なんだか、斬るのがめんどくさくなってきたな……体力温存も兼ねて、一気に潰そう。
「白雊、遠距離系の剣技を俺に向かって飛ばせ!」
大きな声で叫ぶ。
「リベレイション、神聖なる刃」
白雊が斬撃を飛ばすのを確認すると、俺もすぐ剣技を使用する。
「剣技、双氷斬波」
十字にかたどられた白銀の斬撃と黄金に煌めく斬撃がぶつかり合い、盛大に爆発する。この建物、これだけの爆発が起きてよくもってるな。
敵が全員怯んでいるところで俺は再び魔術を唱える。
「黒木流奥義、黒霧」
中央に大きな魔法陣が出現すると黒い霧のようなものを発し、敵を飲み込んでゆく。
「しばらくすれば出してやる……まぁ、それまで大人しくしてるんだな」
そして霧が消えていくと同時に敵の姿も消えていき、静寂の中に俺と白雊の二人が残った。
「キョウ……わたしのこと知ってたの?」
「あぁ、お前がきた翌日から」
「そう……キョウは――」
「大丈夫だよ」
「!」
「その程度のことで、お前をどうこうするつもりはねぇよ」
白雊――対四方家用に作られた戦鬼……まぁ、普通はこの時代まで戦鬼が生きているハズはないので、その子孫ってところだろうな。
「それに、約束しただろ?」
「そう……」
白雊の口から出たのはその一言だったが、表情は安堵と喜びに満ち溢れていた。
「白雊を確保できたか、矯平」
声に反応し視線を白雊からずらすと、階段付近には川神さんと他のメンツが勢ぞろいしていおり俺もいろいろな意味でホッとしてしまう。
「ええ、おかげ様で、仕込み方は終わったんですか?」
「あぁ、ここからどうするか、作戦会議だな」