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「トラップ、押さえつける手(リストリクションズ)


 ここでトラップかよ、いつの間にトラップを……ナイフを投げたときか?


 無理やり木を斬って抜けだそうと刀を振ろうとすると、銃声とともに右手に鋭い痛みが走り不意打ちを食らったせいで思わず刀を離してしまう。


「おっと余計なことはさせないッスよ」


 前に突き出されている左手にはデリンジャーが握られていた。そんなもの仕込んでやがったのかこの女。


「これで終わりッスよ。業火よ罪人を――」


 少女は俺から少し距離を取ると、魔術の詠唱を始めた。刀は使えないし、しょうがないこっちも魔術を当てて相殺させるしか……


「――その螺旋の炎で焼き尽くせ! 回転する深紅の炎(クリムゾンスパイラル)


 これって間に合わなくないか?さすがに上級魔術を下級魔術で打ち消すのは辛いだろ。そのとき、あることを思い出す。急いでブレザーの間から手を入れそれを取り出し、構えるモーションを取る間に素早く(クロス)、そして引き金を引く。


「アンタも銃持ってるんじゃないッスか」


 目の前でうまく魔術を相殺させて爆発の規模を小さくするよう調節で来た為、ダメージを受けずにすんだ……今のは本当にヒヤヒヤしたぞ。USPの存在に気が付かなかったらどうなっていたか。


 足元に銃を乱射し木の根っこの様なものを取り払う。何発か足に当たった気がするが……気にしなくていいか。


「やっぱり、アンタは凄いッスね」


「これくらいはできないと生き残れないからな」


 刀を拾い上げ再び少女見ると、少女は切っ先をこちらへ向ける。


「名乗っていいッスよ」


「は?」


 初めてこんなこと言われた気がするぞ……


「私は強いやつを見つけたら名乗ってもらうポリシーがあるッス」


 はぁ……それは珍しいポリシーで。でも、変なところは律儀なんだな、どこまでも突っ込みどころがある女だな、コイツ。


「ただの一般学生、黒木矯平だ」


 USPのセフティをかけ左胸のホルスターの中にしまう。案外、名乗るのっみると恥ずかしいんだな。


「一応私も名乗っておくッスよ、私は火野(ひの)孰菜(いずな)楽園からの使徒(モーヴェ・アンジュ)の第二隊体長ッス!」


 ここまで名前、格好、言動の三つが全くシンクロしてないやつもいるんだな。


 でも、今のでかなり興ざめした……一瞬にして闘争心みたいなもんが吹き飛んだぞ。


「はぁ、ヤル気が一気に吹っ飛んだ、もう一撃で終わらせるよ隊長さん」


 かなり強いけど、これくらいだったら()()を使えば一撃で叩きのめせるだろう。あんまり使うなって言われてるんだけどな。


 精神力と体の丈夫さなどで耐えられるダメージの量が違かったりするのだが、どこにでも一撃必殺があるんだよな。


「なっ!」


 刀を地面に垂直に突き刺し詠唱を始める。


「その代り、いいモノ見せてやるよ」


 まぁ、親父もあとから必要になるだろうと言ってこの黒巫女を送って来たんだ、使っても文句は言われないだろう。


――――――


「逃げただと!探せっ!」


「了解しました!」


 白雊は自力の脱出を試みたが、監視が多すぎてなかなか脱出できずにいた。


「……助けてよ、キョウ」


 白雊は小さくつぶやいた。


 頭の中には矯平の姿が浮かんでくる。あの時、あの部屋で目覚めたとき彼には何か安心できるようなものを感じた、彼ならなんとかしてくれるそんな気持ちでいっぱいだった。


「おい、いたぞ!」


 彼が来るまでは自分で何とかしてみようと思った。


「ウェイク、栄光の刃を持つ(グローリーブレイド)


 少女に体の大きさに不釣り合いな、金色に輝く大剣が姿を現す。少女はそれを持つと敵に斬りかかる。


 そう、私は……戦鬼であるのだから。


――――――


「なぁ、面白いもの見れただろ?」


 返答の帰ってこない質問を隊長さんへ投げかける。


「それにしても、この刀がここまで発揮させることが出来るとは思わなかったな」


 刀を収めて歩みを進めると、少し開けた場所にある、異様に明るい一つの建物にたどり着く。敵の本拠地ってのはここか?


 木々の間から偵察してみるが入口付近には人がいない。


「異様に守りが薄いな」


 その時建物の上階で轟音が鳴り響く。確認しようと上を見上げてみると、楽園からの使徒(モーヴェ・アンジュ)の連中が瓦礫に交じって落下してきた。目を見張るような光景に思わず大声を上げそうになるが何とか声を抑える。


 これは中に入って確認する必要があるな。


 周りを確認して建物の入口へ向かい、建物の中へ侵入する。


『矯平、聞こえるか?』


「なんですか、川神さん」


『あと五分後に作戦を決行する、それまでに目的の廃墟を見つけ出せ』


「あぁ、それならもう入りましたよ」


『そうか』


「それじゃ、切りますよ」


 ここからはなるべく交戦を控えて、白雊の元へ向かうか……耳から通信機を外し、持っていた刀を刀袋にしまって背負う。


 助かったのは廃墟と化しているおかげで隠れる場所が多い事だな。


 気配に気を配りながら、慎重に建物の奥へと進んでいく。


「おい、外は大丈夫なのか?」


 近くの通路で男の声がしたので急いで物陰に隠れる。しゃがみ込む際に後ろの刀が地面にぶつかって、小さな音を出す。


 幸い、向こうは話に夢中で聞こえていなかったようで、こちらには気が付かなかったようだ。でも、隠密に刀ってのは本当に向かないな、本物の忍者に隠密行動の手ほどきを受けたいもんだな。


「大丈夫だろ」


「何か手が打ってあるのか?」


「あぁ、ボスが別働隊を引き連れてくるらしい、その軍とここで挟み撃ちにするらしいぞ」


 おい、それって……かなり、ヤバい状況じゃないか?


 ひとまず音をたてないように後退し、入口まで戻る。


「川神さん、ヤバいことになりましたよ!」


『落ち着け、なにがヤバいんだ?』


「別働隊がここに進軍してきているらしいです。しかも俺らを挟みうちにする気ですよ!」


『そうか、それならを作戦変更する必要があるな』


「作戦変更?」


『あの策の罠を使って違う作戦を展開する』


「それじゃ、そっちは任せて大丈夫なんですか?」


『あぁ、お前はその建物を占拠しろ』


「わかりました」


 刀を抜いて、フロア内を走る。


「なんだ、てめぇは?」


 そしてばったり会った敵を殲滅(せんめつ)していく。しかも、建物ないで声が響くおかげで悲鳴を聞きつけ向こうから姿を現すから楽だな。


「応援を呼べ!」


「三階のアレはどうするんですか!」


「しょうがない、二人ともいっぺんに潰すぞ、二階に誘い込め」


 そんな大声でやり取りしてどうするんだ、企みがバレバレだぞ……


 敵が二階に後退してしまったので、二階へ向かう階段を探す。意外と入り組んでて分かりずらいな。


 しばらく彷徨っていると、階段を発見した。


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