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 それはあながち間違っていない。きっと、諒子とは昔から一緒にいることが多いのでいつからか俺の女子に対する行動の基準になってるんだよな。


「で、他の家の戦い方だっけ?」


 少し声のトーンを落とす、これだけ五月蝿くても誰かに聞こえたらヤバいだろうからな。


「へ?あ、はい」


 今一瞬、姫条が上の空だった気がするが……まぁ、気にすることないか。


「俺も詳しく知らないんだけどな、白野は主に遠距離武器を使うから、武器によって戦い方は違うと思うけど魔術とか体術はどの世代も同じような戦いをするはずだ」


 思ったよりみんな真剣に話を聞いてるな……聞き流してくれるかくらいだったんだけどな。一応戦い方も機密情報みたいなものである。ただ、赤城、白野に関しては付き合いが深いから本人たちから結構聞くことがあったりもする。


「次に、赤城。この家は槍や戟みたいなリーチが長い武器を使うらしい。その辺の扱い方はいろいろ型みたいなものがあるらしい……最後に蒼生だが――」


 ここで三人とも息を飲む、だからお前らどんだけ真面目に聞くんだよ。俺は人の戦い方をあまり気にするような向上心のある人間ではないのでコイツらの気持ちがあまり分からない。


「――これに関しては魔術をメインで使うってことしか知らないな」


 蒼生とはあんまり関わりがないからな。


 すると、三人は残念そうな顔で俺のことを見る。晃嘉に関してはため息までついてるし……


「なんだよ、キョウちゃん期待させておいて」


「お前らが勝手に期待しただけだろ」


「でも、意外と面白いことが聞けた気もするので良しとしますか」


 姫条、お前は何様だよ!と言いおうとしたところで晃嘉に話を切られてしまう。


「ちょっと俺とキョウちゃん内緒話があるから」


 と言って廊下に連れ出される。珍しく晃嘉の声からはいつもの軽さが消えていた。


「キョウちゃん、実は昨日の依頼のことなんだけどさ……」


「おっ!何か分かったのか?」


 俺は晃嘉に期待の眼差しを向けるが晃嘉はなかなか話そうとしない。


「なんだ、何も分からなかったのか?」


「いや、情報は入ったけど」


「それだったら教えてくれよ」


「実は――楽園からの使徒(モーヴェ・アンジュ)は学区に本拠地を張ってて戦力もかなりあるんだねぇ」


「学区内に本拠地?」


「うん、楽園からの使徒(モーヴェ・アンジュ)に勧誘された生徒からの情報なんよ」


「詳しい場所は分からないのか?」


「一応、場所が曖昧で今必死に特定してるけど……」


「そうか、何か分かったら報告してくれ」


 教室のドアが勢いよく開くと、そこから諒子が出てきた。


「矯平、クランの話なんて私聞いてないんだけど?」


「あぁ、そういえばお前の存在を忘れてたな……」


 そこで諒子は俺の顔を掴むと、俺の頭を潰さんという勢いで指に力を入れる。


「うぉぉぉぉぉ!俺が悪かった!だからやめろぉぉぉぉぉ!」


 さっきから頭蓋骨からおかしな音がしてるんですが!?


「はぁ、まったく……」


 俺の顔から手を離すと腕を組み、呆れる諒子。どうしてそこで呆れ顔になる?


「そうだ!どうせみんな暇だろうし、今日にでも集まって書類作成兼クラン結成パーティーでもやるか?後々になるとメンドイしな」


 先生に言えば申請用紙は貰えるだろうから、みんなで集まってるときに書類作成しておいた方がいいよな。


 きっとティア、ティトも暇だろうし……


「私はいいけど……」


「それじゃ、中にいる連中を呼んでくる」


 さっそく教室へ入り、女子に囲まれアタフタしている白雊を救出(?)し、匠、姫条も教室から連れ出す。


「それじゃ、俺らの寄宿舎でやるか」


「え……」


「諒子――片づけ放棄するなよ?」


 担任の草延先生から申請用紙を貰い、帰路を急ぐ。


「途中でなんか買わなくていいん?」


「そうだな……それじゃ、諒子頼んだぞ」


「なんで私なの?アンタが行けば――」


「そうか、お前がリビングの片づけをしてくれるのか」


「私が買ってくる!」


 諒子が快く買い物を引き受けてくれたのでそちらは任せて、俺らは真っ直ぐ家に向かう。


「キョウちゃんちに行くなんて何年ぶりだろ」


「そうだな、一年ぶりか?」


「意外とみなさん遊んだりしないんですか?」


「僕らは外で遊ぶことが多いんよ」


「外で遊ぶ?」


「シロちゃん、言っとくけど外って野原で野球とかやってるわけじゃないんよ?」


「それくらいわかってる――外で戦うんでしょ?」


「シロちゃん、それ明らかに勘違いだよ!?」


 後ろで会話している三人を尻目にティトにパーティーの詳細を載せたメールを送る。すぐにメールが返ってきた。


『了解、すぐ行く』


 二人は来れるのか……


 メールを見た後、川神さんに電話をする。


「川神さん、寄宿舎でクラン結成パーティーするんですけど――」


『クラン?あぁ、私が言ってたアレか……悪いな、今忙しくて手が離せん』


「そうですか……」


『私の記名も代わりにやっといてくれ』


「わかりました」


 通話を切ると、もう一件メールが入っているのに気づく。メールを見ると諒子からであった。


『何を買ってくればいい?』


 それくらい自分で考えろよ……小学生か?お前。いや、小学生でも何買ってくればいいかなんてわかりそうな気がするんだが。


『それくらい自分で考えろ……まぁ、オードブルとか寿司とかフライドチキンをボックスで買ってくればいいだろ?』


 メールを返す。


『了解』


 そうこうしているうちに寄宿舎に到着した。


 リビングへ三人を案内し、パーティーの準備に取り掛かる。


「白雊、ちょっと手伝ってくれ」


「わかった」


「お前らはその辺で勝手にくつろいでいてくれ」


 白雊を連れ二階の押入れにテーブルを取りに行く。


「重いからな気をつけろよ?」


 散らかっている物置の中からリビングにあるテーブルと同じものを探し出し、下へ運ぶ。


 ここは一応寄宿舎であったのでテーブルなどの備品はたくさんあったりする。そのまま買い取ったってだけあるな。


「うん」


 パーティーの準備が終わった頃、諒子がティア、ティトともに帰ってきた。


「それでは、新生クラン誕生を祝って、乾杯!」


 寿司やオードブルをみんなで囲み、談笑を始める。


「クランの名前って決まってるのか?」


「ま、まぁ」


「本当か?」


 ティトの目を凝視すると目が泳いでいた。


「決まってないんだな?」


「……うん」


「それなら候補が一つあるぞ?」


「候補?」

冬の大嵐(インヴェルノテンペスタ)とかどうだ?」


「インヴェルノ?」


「あぁ、イタリア語だよ」


 冬に来る大嵐、日本には普通、冬には嵐は来ない。それが現れるってことは自然の均衡が乱れるとき。俺らは冬の日本という名の学区の均衡を崩すようなクランって意味だな。


「まぁ、いいんじゃない?」


 軽く流されたが、否定されたわけではないのでクラン名の欄に『Inverno Tempesta』と記入する。


 賑やかに食事をするなか、白雊が席を立ったことに気が付き声をかける。


「どうしたんだ?」


「キョウ――」


 白雊は俺の声に反応し、顔を上げる。


「――みんなは暖かいんだね」


 目には涙を浮かべていたが、それ以上に笑顔であった。


「なんだよ……いきなり」


 白雊の心の切り替えの様なものについてゆけず戸惑う。


「この様子を見てればわかる。こんなに心地のいいのは初めて……」


「そうか」


「ここにいたい、ずっと」


 そこで白雊からは笑顔が消えてゆき顔色を曇らせる。


「だけど、わたしは――」


 白雊の言葉を遮るように頭に手を置き、微笑みかける。


「お前がここにいれるようにしてやるから……」


 右の小指を立てて白雊の目の前に差し出す。


「約束だ」


 白雊はゆっくりと白く細い指を俺の指と交差させる。


「うん、約束」



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