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「キョウ……これ、どう?」


 ふと視線を上げると、制服に着替えた白雊。何だか制服姿がとても新鮮でつい見とれてしまう。


「……どこか変?」


「いや、別にそんなことないぞ」


「よかった」


 白雊が笑顔になる。


「あとは生活用品と夕食の食材だな」


 白雊と共に店を後にし、雑貨屋、スーパーに寄って家へ戻った。


「ただいま」


「お帰り……白雊の制服作ってきたんだ!白雊可愛いよ」


 諒子が白雊の制服姿を見てベタ褒めすると、白雊は恥ずかしそうに視線を下に落とす。


「さて、俺は夕食の準備をするか」


 真っ直ぐにキッチンに向かい料理の下準備を始める。まずはポリ袋を用意、そこに一口大に切った鶏肉、おろし生姜とおろしニンニク、酒、醤油、ごま油を加え少し揉んで冷蔵庫に入れる。三十分程度時間が空くので、米をといで炊飯器のスイッチオン。あと皿を洗ったり、味噌汁の具材を切ったりする。そしてあっという間に三十分近くたったので、さっきの袋にさらに卵を加え揉む。そして鶏肉の汁気を切って薄力粉、片栗粉ををまぶし油で二度揚げする。すべてあげ終わる頃にはちょうどご飯も炊き終わって、あとは味噌汁をパパッと作れば終わり。


「おーい二人とも、もうすぐ夕飯だぞ」


 二人を呼ぶと、すぐにリビングに入ってくる。


「はい、これ運んで」


 そして、出来た料理を運んでもらう、俺も疲れているのでこれくらいの手伝いはやってもらう。基本的にうちは一つの皿に盛り付けてあとは自分で取って食べるような盛り付けなので、細かく分けることがないだけ楽だな。


 すべてを運び終え席に着く、


「「「いただきます」」」


 唐揚げを一つとって口へ運ぶ。触感はカリッと、そしてジューシーな口当たり。唐揚げはやっぱり旨いな。


「矯平、マヨネーズ取って」


 近くにあったマヨネーズを諒子に渡す。マヨネーズってほとんど油みたいなものって誰かが言っていたようだったが、もしそうだったら、油ものに油かけて――いや、これ以上考えると食欲が失せそうだし、考えないようにするか。


「そういえば、白雊……」


「なに?」


「気になってたんだけどな――」


 そう、一つ引っかかっていることがあった。


「――お前、本当に覚えてるのって自分の名前だけか?」


 白雊はビクッと反応する……この分だと何か知ってるな。


「それは……」


 ここで白雊が箸を止め、しばらく沈黙が続いた。諒子はそんな状況を気にすることなく食事を続けている。


「いや、言えないなら無理に言わなくてもいい」


 実際のところ、言ってもらわないと困るがこういう雰囲気が苦手な俺は、ここで話を切ることにした。そこからは他愛のない話が続き空気も和んだ……ただ、俺の中のモヤモヤしたものが消えることはなかった……。


 夕食を食べ終わり、片づけしているときに朝、親父に言われたことを思い出した。そういえばまだ探してみてないな。


 後片付けもそこそこに二階に上がり、物置と化している空き部屋に入る。


「うわっ、意外と沢山あるな……」


 そこにおいてある段ボールの山を(あさ)る。うちにこんな量の文献があるなんて……ここに引っ越した時にやたら『保管』って書いてある段ボールの量がやけに多いと思っていたが、物置状態ってより、お蔵状態って感じだな。


「はぁ……」


 一冊ずつ適当に流し読みしてみる。大体二十冊近く読んだろうか、


「おっ!コレか?」


 手掛かりになりそうなものがあった。中身は黒木家の戦争の記録の様なものであったが、その中に気になる文章があった。


「なるほど、そういうことか……」


 ここに書いてあることが本当だったとしても白雊が追われるのかが全く理解できない。それに関してはやっぱり本人に訊くのが一番なんだろうが、さっきの反応を見ると簡単には話してくれなそうだな……


「矯平、お風呂空いたよ……ってアンタ何やってるの?」


「なんだ諒子かよ」


「なんだとはなに?」


 振り向くと諒子が少しブスくれる。頬をフグみたいに膨らませる顔はいつ見ても飽きないな。


「まぁ、ちょっと調べ物をな……」


「へぇ、頑張って」


 それだけ言うと諒子は自分の部屋に戻っていった。一人で黙ってやってたから踏み込んでくると思ったが、何も言ってこなかったな。


 そんなことを思いながら携帯である番号に電話をかける。情報量が足りないから何とかしてもらうしかないだろう。


『あー、もしもし?』


「晃嘉、ちょっと頼みがある」


『え?キョウちゃんいきなりどうしたん?』


「ちょっと情報が必要になった」


『どんな?』


「楽園からの使徒(モーヴェ・アンジュ)について調べてほしい」


『楽園からの使徒(モーヴェ・アンジュ)?なんで?』


「個人的な事情だよ」


『へぇ、詳しくは訊かんけど』


「悪いな」


『でも、楽園からの使徒(モーヴェ・アンジュ)か……結構キツイなぁ、頑張ってみるわ』


「よろしく頼んだぞ……」


 携帯を切り、今持っている本だけを持って、空き部屋から出る。


 ちなみに、この会話の通り、晃嘉は裏で情報屋まがいのものをやっているので、情報で困ったときはよく頼っている。ひとまず風呂が空いたという事なので風呂に入ることにした。今考えても仕方ないし、何とかなるだろう……


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