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泡沫人魚の嘆いた世界  作者: 朝梅雨
第一章・奇病
2/5

不幸の家庭

結局は怒られたり殴られちゃったりして結局は怒られたり殴られちゃったりして時間が潰れた。学校に行けるほどの体力は残ってないし、休んでしまおう。母様にはバレないように。

足早に廊下を進んで、自分の部屋に戻る。

扉に鍵をかけたら本棚から分厚い本を一冊づつ出して行く。

「えぇっと、あぁ?・・・んーあった!」

手探りで取ったこの本は、『人魚姫』何年間も頑張って母様から死守してきたこの一冊は私の宝物だ。

本を手に持ってくるくる回る。

コレを目にするとつい気分が上がる。

ベットに座ってページをめくり出すと、その世界に入った気がして集中する。悲しい時や辛い時によく読んでいた。

声を失っても王子様を愛する心の強さ。ハッピーエンドに胸ときめかせて笑顔になれた。

大好きなんだよね。この本。

この時間に過ぎないでと願う事しか、私にはできないのだけれど。

********

「ん・・・ふぅぁあぁ。ぁれ?今何時?」

気づいたら本に顔を埋めて寝てしまっていた。カーテンから漏れるオレンジ色の光から今が夕方頃と察せられる。

こんなにも長く寝てしまっていたのかと口から垂れそうになっていた涎を拭き取りながら考えた。起きなければと体を起こそうとすれば足に激痛が走った。

「痛っ・・・。寝違えたのかな?」

激痛と言えども歩けない訳じゃないので、普通に立ち上がる。

よし。生まれたての子鹿程じゃないみたい。

少しフラつく程度だった。

扉に向かって足を進めて行くと、下の方に紙が挟んであることに気づいた。鍵がかかっているので、使用人の誰かが置いたのだろう。書いてある内容によっては部屋に籠るつもりだけど・・・。


『我が愛しき子へ。この手紙を見ているなら庭の丘においで』


この筆跡は父様のものだ。

私の父様は多忙で家に帰って来ることが少ないので、帰って来てもあまり一緒に遊べなかった。けれどお土産をいっぱい買って来てくれて、中には幼い私が喜ぶであろう沢山のおもちゃが詰め込まれていた。

私の大好きな父様。

窓を開けて身を乗り出す。

早く、早く丘へ向かわなければ!

靴は室内用だが、気にしない。

今は早く父様に会いたい。

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