遭遇
朝日が上り目を覚ますと、目の前には特に変わった様子も無く、やはり夢ではないんだなと自覚しつつも、昨日決めた事を頭で整理しながら、朝食を食べる為、鞄から食料を取り出す。
昨日と同じ食料だが、文句は言ってられないので、黙って飲料水と弁当を平らげる。
飛行機残骸の余りはインゴットに変造し、食料、飲料水、衣類などと共にバイクへ詰めていく。
インゴットについては設計図新規作成の項目があったので、手書きで行った。
「よしっ! 出発するか!」
準備も整い、バイクに跨って、エンジンを始動する。
ブルゥン!っと唸るエンジン音と共に、森にある獣道を進んだ。
しばらく地図を眺めながら運転していたが、特に赤点は無い為、そのまま道なりに進んでいく。
四十分ほど進んだ所で森が拓けて街道に出た。
どこかの街に行けば少しは情報が有るかも知れないと、北と南で何方に行くか地図越しに確認して要ると、南西の方角に一時行けば街が有ることが分かった為、哲哉は南に進路を取る事にした。
(もう足跡を辿るのは絶望的かも知れないな。非情に思われるかもしれんけど、正直そこまでする義理もないし、それに・・・)
ふと、空を見上げる。
(太陽っぽい物が2つ・・・か)
日が差す太陽の様な物が大、小と二つ並んでいた。
それらを眺めて要ると小さな影が見えたので、画面越しに拡大し、何なのか確認してみる。
推定全長二十メートルはあろうかという巨体に大きな翼、赤い鱗で覆われた巨大な飛行物体が空を飛んでいた。
飛行機ではない。
――竜だ。
大きな翼を羽ばたかせ、巨体を翼で揺らしながら北の山岳方面へと飛んでいった。
「・・・やっぱり、幻想世界に来たんだろうな」
改めて、そんな事を考えていると、ふと不審な音が聞こえてきた。
「$+@$*%&#!」
「$@@*+#$%&!!!」
集音マイクが街道の先にある音を拾っていた。
音のする方へ拡大で状況を確認すると、馬車らしき物が何かに囲まれていた。
(あれは・・・狼か?)
馬車は見た目狼の様な獣によって、襲われていた。
数は十二、銃がある今ならこの距離からでも問題ない。
(よう分からんが、助けた方が良さそうだな)
バイクを止め、『BAR MKII』を取り出す。
照準器上に覗き見ながら、狼に照準を合わせ、銃を構える。
強化外骨格の画面機能と照準器の接続機能により、拡大機能は標的を目の前へと映し出す。
外す要素は全く無い。
哲哉は躊躇うこと無く、引き金を引いた。
――パンッ!! パンッ!! パパン!!!
弾倉は四発、全弾撃ち尽くし、弾丸は全て狼の眉間に吸い込まれる。
刹那の間に四匹の後頭部は吹き飛び、次々と倒れて行く。
流石に残りの狼が哲哉の存在に気づいて向かって行くが、距離はまだまだ遠い。
冷静に装填、素早く全弾補足、順番に打ち倒していく。
敵数は残り四、更に装填し、一発も外すこと無く、狼を全て撃ち倒した。
(・・・出来過ぎか?)
全て撃ち尽くした弾倉を装填し直し、鞄へ仕舞う。
それから再度、馬車へと向かってバイクを走らせた。
到着してみると、護衛だったのか、鎧を着た兵士らしき遺体が五つ転がっていた。
御者台の前には銀髪の女性が細剣を構えて立っていた。
ギリシャ彫刻から切り取った様な整った顔立ち、足元の銀のグリーブからスラリとのびる脚線美。
銀の胸当てへと押し付ける小振りだが魅力的な胸、綺麗以外の言葉が見つからないほど、北欧美女だった。
「#$&’%%#$@@?」
不意に女性が何か話しかけてくるが全く何を言っているか分からない。
「大丈夫か?・・悪いけど、何を言っているか全然分からないんだけど・・・」
実際に困っている事をそのまま伝えてみるが、理解しているようには見えない。
細剣の構えを解いてくれない。
(さて、どうしたもんかね。話せない事には状況が分からないんだけども・・・ん?)
翻訳機能と書かれた文字が画面の右側に高速に履歴を出力し、完了と出ていた。
(・・・と言うことは)
「俺が何喋ってるか分かる? 通じてる?」
「えっ?! えぇ、分かります!」
どうやら翻訳機能は相手の言語をそのまま、日本語へ翻訳し、自分が発言した内容は強化外骨格を通して、現地語に変換される様だ。
――相変わらず便利すぎる。
初めての情報源、ここは時間をかけて話をするかと、内心で呟きながら相手を見据えた。
やっと現地人登場。
時間かかるわー。
今日ちゃんと見たらブックマークしてもらってました!
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