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幼少の頃のキレやすい性格をしていた哲哉は、大人になるにつれ精神的に成熟していき、今ではちょっと茶目っ気があるだけの常識と冷静さをもつ所謂どこにでもいる社会人をしていた。
だが、痛みや過度なストレスを受けすぎると自分を守る為なのか、開き直り、度胸が据わる。
会社の飲み会の時に至っては、性根の腐った上司に強引に酒を薦められ、最初は懇切丁寧にお断りをしていたが、あまりの執拗さにイラッとして大吟醸を口に突っ込み、無理矢理ラッパ飲みさせて潰した過去もある。
「・・・はぁ〜くそ、何なんだよこいつらは」
小鬼との死闘を制し、安堵感に浸りながらも自身のやらなければいけない事を整理していく。
(まずは傷の手当からだ。自分に余裕がない状態で人助けなんて出来ないからな・・・)
再度、外の状態を意識しつつ、医療品を探し始める。CAの近くに無いかと彼女らが居た作業場の棚の中を物色して要ると直ぐに見つける事が出来た。
早速、医療箱から消毒薬を取り出し、適当に腕にぶっかける。
痛さでまた感情が昂ぶるが、ぶつける対象はもういない。
ガーゼを当てて包帯を巻き、簡単な応急処置を済ませた後、外の様子を伺う。
(・・・あれ?・・外、かなり静かじゃね?)
窓に近づき、硝子越しに外を覗くと、散々とあった死体は無くなっており、小鬼も居無くなっていた。
機内に人間および小鬼の死体は在ったので、夢ではない事は確かだ。
外に出て、キョロキョロと視線を動かすが人の気配が無い。
索敵範囲を広げようと、歩き出そうとしたが、ふと思い留まる。
(何か武器になるものが無いと、また小鬼が何匹も襲ってきたら対処出来ないな)
再度、機内に戻って武器になりそうな物を探し始める。
医療品を見つけた箇所に戻り、棚を物色していると、機内食を発見した。
恐らくファーストクラス用なのだろう。
綺麗な形で残っていたので、一つを食す。
食べながら、これらはかなり重要だと思い至り、その辺に転がっていた大型のショルダーバッグを拝借して食料品、医療品、飲料水をバッグへ入れていく。
(・・・よし、ここでは目ぼしい物は手に入れたな、貨物室へ行くか)
哲哉が次に向かったのは貨物室だ。
何か大型の武器になる様な物が無いかと探していると、自身のキャリーバッグを見つけた。
しかし、変えの着替え位しか入っておらず、武器になりそうな物は勿論無い。
お目当てな物が無いかと、他の物を探し始める。
持ち主に許可無く物色している自分に罪悪感を感じつつも、生きるために仕方ない事と割り切って。
「――あっ! あった! 予想以上だ!!」
見つけたのは散弾銃『モスバーグ M590』とライフル銃『ブローニング BAR MKII ボス仕様(ブラックモデル:スコープ付)』恐らく、猟銃だろうが、かなりの良品を手に入れた。
弾も結構入っていたが、中に詰め物が入っていた為、取り外す。
銃や軍事格闘術が好きな哲哉は、海外に仕事だろうが、旅行だろうが、訪問した際には必ず射撃場や体験訓練を受けに行く程で、現地で引退した元軍人の方と仲良くなり、本格的な指導を行ってもらった。
その結果最低限の動きは問題なしとのお墨付きをもらえる程の本格派だった。
ーー冷静ならば、だが。
(やばい、二本とも抜群にいい状態だな。これなら何とか・・・ん?)
貨物室から出ようとした時、車輪と貨物室の間に、鉄製箱が隠れる様に置いて有った。
明らかに怪しく、飛行機を内部から取り外さなければ見つける事が不可能な位置にそれは有る。
訝しげながらも、興味本位で近づくと、箱の表面には手の平サイズの液晶、画面が付随されており、緊急と言う文字が書かれてある。
軽く触れてみると、鉄箱がプシュ!という音と共にスライドし、開いていく。
「・・・ま、まさかこれ・・・パワー・・ド、スーツ・・?」
開いた中から現れたのは黒色の容姿をした、フルフェイス型の強化外骨格だった。