表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界戦機  作者: 虎徹
第一章
4/27

会敵

(仮装パーティではないよな、明らかに・・)


次から次へと訪れる非日常の状況について行けず、映画でも見ている様な感覚に落ち入り始めていると、更に驚愕する光景が視界に入る。


(って、おいおい!! 死体を喰ってやがる!)


窓に張り付きながら外の光景を呆然と見ていると、小鬼(ゴブリン)が人間の死体を貪り喰い始めていた。


ギャギャッギャギャッと美味しいと言ってるかの様に騒ぎながら、ニヤリとさせた醜悪な笑みを浮かべ、口から鮮血の血を流している。


その光景を目の当たりにしてようやく恐怖心が哲哉を襲う。


恐怖を意識した途端、ガタガタと体が震え、目の前の光景が現実(リアル)なモノだと強制的に認識させられる。


(どう、したらいいんだ・・死にたくない・・けど、このまま隠れてたら、他の人たちは・・・)


どうにかしなければと、考えようとするが、怖いというよりも死にたくないという感情が強すぎて、思考が定まらない。


兎に角、死にたくない、生きたいと何度も何度も頭を巡り、頭部を抱えそうになった瞬間、選択の時が訪れた。


「・・・ギギャ?」


一匹の小鬼(ゴブリン)が機内に入ってきたのだ。


「う、うわぁああああああああああああ!!」


突然の出来事で大声で叫んでしまった。


その絶叫を聞いてか、小鬼(ゴブリン)はこちらに顔を向けニヤリと楽しそうに気持ち悪い笑みを浮かべこちらへ小走りに向かってきた。


「来るな! 来るなぁああああ」


慌てて、機内の後部席方面へ向かおうと体を動かすが、自分の意識通りに体は動いてくれず、足がもたついてその場にあった死体に足を取られ、尻餅を着くような形で後ろへ倒れてしまった。


その好機(チャンス)小鬼(ゴブリン)は見逃すはずも無く、持っていた錆びた短剣(ダガー)を振りかざし、哲哉に襲いかかった。


振りかざされた短剣(ダガー)は哲哉の顔を捉えた。


「ひっ!!」


哲哉は恐怖心から咄嗟に顔面を覆った瞬間、短剣(ダガー)が左腕に突き刺さり、落雷に打たれた様な激痛が体を駆け巡る。


「いってええええええ! くそがあああああ!! いでぇぇええええええ!」


先ほどの痛さの比では無い、恐怖と激痛と異臭と痛さへの激怒とが入り混り、混沌とした感情の渦が支配し、思考が高速に回り始める。


(――痛い)


(――なんだよこれ!)


(――死にたくない)


(――なんで人助けしようってこんな目にっ)


(――痛い)


(――逃げようとしたから?)


(――死にたくない)


(――隠れようとしたから?)


(――痛い)


(――なんでこんなに痛いんだ?!)


(―――死にたくない)


(――こい・・つ・・・か?)


(――痛い)


(――・・・なに・・笑ってやがる・・・)


(―――死にたくない)


((・・・・・なら()られる前に()ればいい))


思考は一つの結論を導き出す。


そう、痛い思いをさせられている理不尽な存在に同等の苦痛を与えよう。


明らかに殺そうとしてきている者へ仕返しを行うのに、何が悪いのかと。


――正当防衛万歳。


結論を出してからの行動は早かった。


ギギギャッギャ?!と何か喋りながら短剣(ダガー)についた血をペロリと舐め、ニヤ〜と気持ちの悪い笑み浮かべた小鬼(ゴブリン)の顔面を全力で蹴り飛ばす。


蹴り飛ばされた小鬼(ゴブリン)は三座席分、吹っ飛び、仰向けに倒れた。


「〜〜大体なんで小学生並の体躯の奴にビビってんだよっ!」


自身への悪態をつきながら、徐ろに立ち上がり、男物のスーツを着ている死体の胸ポケットにある、ボールペンを右手で拝借し、倒れてる小鬼(ゴブリン)へと駆ける。


「気持ち悪いんだよ! 死ねや! クソ化物がっ!!」


起き上がろうとしている小鬼(ゴブリン)を再度蹴り倒し、痛みなど忘れた左手で頭を抑え、右手のボールペンを力の限り振りかざし眼球へと突き刺す。


「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!」


耳障りな絶叫が機内を反響し、痛みのためか、暴れる小鬼(ゴブリン)から飛び退く様に離れたところを短剣(ダガー)が掠める。


「てめぇが俺にやろうとした事だろうが」


そう呟いたと同時に、小鬼(ゴブリン)はギャギャャと声が段々と小さくなり、完全に動かなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ