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「・・・白金貨ニ枚です」
「・・・はっ?」
先程のフィンの通貨の説明では、白金貨はまず見かけないのではないのか。しかし、老婆も何も言わない、価格に関して事実なのであろう。
「そのバックは、一人の冒険者がダンジョンの宝箱から必死で持ち帰ったそうなのじゃが、その冒険者は大金を手にして安心したのかダンジョンで受けた傷が元で亡くなったそうな。世界で三つしか存在しておらぬと言われているバッグがここにあるのもその為ですじゃ・・・フォッフォ」
(何故笑ったし・・・)
老婆の言っていることを考えると値段にしたら安いのかもしれないと哲哉は思った。
しかし、勿論の事、白金貨ニ枚など大金を持ち合わせていない。
だが、今後大いに役立つ、寧ろ必須道具になるであろう道具を見す見す逃す手はない。
(もしかしたら――)
哲哉は思考を凝らし一つの推測を思い至る。出来るかどうかは不明だが、試して見る価値はあるだろうと考えていた。
「フィンちょっとここで待ってて貰えるか?」
「えっ? どうかしたんですか?」
「ちょっと宿屋に戻ってからまた来る」
「それなら私も――」
「いや大丈夫だ。直ぐに戻る」
そう言い残し、早速、魔法道具屋から出て急いで宿屋に向かう。宿屋に着いてドアを潜り、自分の部屋へ駆け込んでいく。
途中でボブママが驚いた様な顔をしていたが、今は無視だ。
急いでスーツを装着し、再度、魔法道具屋へ。早速老婆へ話しかける。
「店員さん、そのマジックバックをちょっと見せてもらえますか?」
「えぇ、構いませんが、こちらも見させて貰いますよ。フォッフォ」
老婆は興味有り気に哲哉を見ていたが、高い物なので、監視する様だ。
まぁ当たり前と言えば当たり前だが。
気を取り直して、カウンターに置かれたマジックバックに右手をかざしスキャニングして見る。
すると、ログが高速に流れ始め、哲哉の推測通りの反応が返って来た。
>> 解析完了。
>> 対象構造解明。
>> システム再現可能。
>> 仮想空間構築ならびに対象ストレージ構築。
>> システムをアップデートしますか? Y/N
哲哉は口角を上げニヤリと笑う。
(早速試そう)
「定員さん、やっぱり持ち合わせじゃ買えそうにないから、諦めますよ」
「そうですか、それは残念ですじゃ」
そう言うと老婆は何も無かった事に興味を無くしたのか、早々にマジックバックを収納した。
「代わりと言っちゃあ何ですけど、そこの瓶を売ってくれますか?」
カウンターの近くに置いてあった魔法薬を一つ手に取りカウンターへ置いた。
「へぇ、銅貨一枚に鉄貨五枚ですじゃ」
言われた値段をそのままカウンターへ置き、毎度どうもの声と共に魔法道具屋から外へ出た。
「テツヤ様、何を為さってたんですか?」
事の顛末を黙って見守っていたフィンが興味有り気に話しかける。
「いや、ちょっと試したい事が有ってな」
そう言うと先程購入した魔法薬を手に持ったまま格納と発してみる。
すると、一瞬で手の上から消えた。
「えっ?」
フィンが驚いた表情をしていたが、気付かないフリをして、そのまま腕の小型ディスプレイのメニューで格納一覧を選択すると、魔法薬の名前と共に個数と能力内容が画像付きで一覧化されていた。
「っしゃ! 予想通り!」
急に大声を出したので、フィンがまた驚くが、笑って誤魔化し、スーツの可能性を新たに見出した事に興奮気味に街へと歩き出した。
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テツヤ=コタニ 27歳 男
職業:冒険者
階級︰G
適正:銃剣術
技能:演算処理
称号:黒鎧の騎士