換金
「どうした?」
ドアも開けずに前に突っ立って居たフィンに何か用事かと訪ねてみた。
「えっと、テツヤ様に言われていた狼の買取こちらでやっておきましたので、そのお知らせと、後、これが買取金額になります」
そう言ってフィンは革袋を渡してきた。
「おー有難う・・・結構有るね」
「はい、狼一体に付き銀貨一枚と魔石一個、銅貨五枚で合計銀貨二十枚になりました!」
物はついでと貨幣の価値についてフィンに訪ねてみた。
この世界では鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白銀貨、白金貨と六種類の貨幣が存在し、それぞれが百円、千円、一万円、十万円、百万円、一千万円相当になる。
市場で見かける貨幣については鉄貨、銅貨、銀貨が一般的で商人の仕入など大きな取引の際には金貨なども使用される。だが、白銀貨、白金貨についてはまず一般人は見かける事は無い。
「あれ? そうなると計算合わないよな。 合計銀貨十八枚じゃないの?」
「それはですね、買取屋の方がこんなに良い状態で持ってきてくれたから気持ち上乗せしとくよって言われていたので、それでだと思います」
「そういう事か有難う」
(たった数分、動いただけで二十万円相当か、冒険者――ぼろいな)
命の危険は有るとは言え、たった数分間で新人サラリーマンの一ヶ月分とほぼ同等の金額が手に入った事にホクホク顔になっていると、フィンが首を傾げながら訪ねてきた。
「えっと、テツヤ様はこれからお時間はありますか?」
「ああ、今からは特に用も無いし、しいて言うなら宿屋の飯待ちって所かな」
「それなら・・・分からない事が多いでしょうし、街を案内しましょうか?」
「いいのか?」
「はい、私も仕事は終わりですし、明日も・・今日の事で休みになりましたので」
そう言ってフィンは苦笑いを浮かべた。
「・・・いいね! それならお願いしようかね」
哲哉は敢えて突っ込まず、その提案に乗ることにした。
そのまま部屋に鍵をして、ニ人で一階に降りる。ボブママに夕方には帰ると伝え宿屋出た。
「どこか行きたい場所はありますか?」
「そうだな。喉が渇いたから何か飲みたいんだが」
「それなら向こうの通りに市場があるのでそちらに行きましょう」
「おぉ、任せる」
しばらく王城へと続く表通りの大通りを抜け、開けた広場に出る。
露店の様な市場が広がりを見せ、所狭しと並んでいる様を見た時には、東南アジアの闇市を思わせた。
良い匂いが漂ってくる。
林檎をすり潰した様なジュースが売られていたので、早速ニつ購入する。
その内の一つをフィンに渡すが、そんな悪いですと遠慮された。
だが、再度勧めると、今度は嬉しそうに受け取った。
自分の分は一気に飲み干したが、普通に美味しかったので再度追加で一つ購入した。
次はどこに行きたいかとまた聞かれたので、あるかどうかは分からなかったが、魔法道具が置いてある店に行きたいと伝えるとすぐ近くにありますとの事だった。
――やっぱりあるのか。
いかにもな雰囲気のある店の前に着き、早速扉を開け、中に入る。
何か怪しげな道具の数々に興味津々になるが、目的はそれだけではない。
異世界で魔法道具屋と言えば、そうっあれだ、万能道具、マジックバック。
何でもいくらでも入るチート御用足の破格アイテムだ。
「すいません、ちょっと聞きたいんですけど」
「はいはい、なんでございましょう」
奥から出てきたのはまた如何にもな魔法使い風の老婆だった。
黒いローブを身に纏い、時折見せる欠けた歯が何とも言えない怪しい雰囲気を放っていた。
「マジックバックって置いてます?」
「えぇ〜ございますとも」
「えっ! あるの?」
「はい、昨日入荷したばかりのものでしてね・・・」
値段を確認してみると・・・読めないのでフィンに訪ねてみる。
「本当に聞きますか?」
値段をフィンに尋ねると珍しく引きつった表情を作っていたので、どうしたんだろうと思いながらも再度確認してみると、驚愕する数字が言い渡された。
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テツヤ=コタニ 27歳 男
職業:冒険者
階級︰G
適正:銃剣術
技能:演算処理
称号:黒鎧の騎士