情報
横幅六メートルはある街道を荷馬車と共にバイクが並走しているとうずうずした様子で、フィンが質問してきた。
「・・その乗り物って馬を必要としないんですね。どうやって動いてるんですか?」
「うーん、一言で言えば水素だな、マフラーはどうやらエネルギーになる大気中の成分を集めてるっぽいんだが・・・でも音は鳴ってるよな?」
正直哲哉も上手く説明出来ない。
何故なら強化外骨格の記録保存に、設計図が既に保存されており、バイクはそこから生成したものだからだ。
勿論、設計図には使用方法と図については書いてあるのだが、構造は詳しく記述されておらず、注意書きに補給不要『水素』、『大気中成分をエネルギーへ変換』とされているのみだった。
「ス、イソ? エネル、ギ? ・・・それは風魔法ですか?」
「・・・お、おぅ、魔法の様なもの、かな」
(十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかないって本に書いてあったし、嘘は言ってないよな)
哲哉は説明が面倒――もとい、まだ知り合って間もない相手に情報を開示するのは、まずいかもと考えを改め、適当に誤魔化した。
「それにしても魔法か、魔法ってやっぱり魔素とか魔力とか必要なんだろ?」
「はい、勿論そうですが、どうかしたのですか?」
(やっぱり、魔素とか魔力で合ってそうだな・・・)
「ん〜、実は俺、魔法が上手く使えないんだ。もし、知ってる事があったら復習がてら教えてくれないか?」
「えっ? ・・・でも風魔法は使って――」
「ほら、勘違いって事もあるだろ? だから自分の知識、間違ってないかなって思ってさ」
哲哉は勿論、この世界の魔法の知識など持ちあわせてはいない。
正確には漫画や小説、映画などの娯楽による知識は有しているつもりではあるが、現実世界に存在するであろう魔法に関してなど、知る由も無かった。
「そういう事でしたら――」
そう言うとフィンは魔法に関して説明をし始めた。
まず、この世界を構成する元素は火、水、土、風の四元素と考えられており、それら単一もしくは組合せる事によって魔法を顕現させる様だ。
大陸中のあらゆるモノには大なり小なりに魔素が宿っており、剣や杖などの魔力が通った物を媒介とする事で、より強力にする事が可能な為、魔素の高い物はその分価格も高いのだとか。
また、魔法以外にもそれとなく聞いて、色々と情報を得る事が出来た。
この世界はミティヌークと呼ばれており、大きく分けて三種類の人族が存在している。
人間族、獣人族、亜人族である。
獣人族は魔法は使えないが、身体能力が異常に高いらしく、亜人族は逆に魔法に長けている。
人間族は獣人族や亜人族の様な何かに秀でた能力は少ないが、道具の扱いにかけては他人族の追随を許さず、簡易魔法の創意工夫などでバランスで保っているようだ。
「――こんなところでしょうか」
「有難う、ためになったよ」
「それは良かったです。ところで・・・」
次は私の番とでも言いたげに、フィンが質問をする。
「テツヤ様は・・・黒髪で黒眼など、珍しいというか見た事無いのですが、異国から来られたのですか?」
「そうだな、遠い・・・かなり遠い所から来た」
「だから変な事を聞いてきたのですね! ――あっ! 申し訳ありません・・・」
得心が行ったと言わんばかりな表情をした後、フィンはしまったと言う表情に変わり下を向いた。
コロコロと表情が変わって哲哉は感情豊かな子だと感じていた。
「いや、いいんだ。俺も変な事を聞いてた自覚はある」
(本当に知らないから聞いたんだけどな)
「最後に一つ聞いてもいいか?」
「はい、なんでしょうか」
「俺の様な黒髪の人間は他に見なかったか?」
哲哉は諦めてはいたものの、念の為、他の逃げた人達に会っていないか確認をしてみた。
「いえ、黒髪の方は初めて拝見したので、会っていませんね」
「そっか、有難う」
「はい・・・あっ! 見えてきましたよ!」
そう言ってフィンは前方を指差し、哲哉に前を向く様に促した。
その動作に釣られ前を向くと、大きな街並が見えてきていた。
初めて見るヨーロピアン風の町並みにまだ距離があるにも関わらず、逸る気持ちが抑えられず、フツフツと興奮していくのを心地良く感じていた。
毎日更新出来なかった・・・
ついでだから、ここからちょっと書き方変えてみよう。
さーていよいよ街へ入れると思うよ。