積込
「大丈夫だった? なんか襲われてた見たいだったから適当にフォロー入れたんだけど・・・」
哲哉は会話は苦にはならないタイプで、初対面の人とでも程々に話せたため、緊張感も無く話しかけていた。
「い、いえっ! 危ないところを助けて頂き、有難う御座いました」
構えていた細剣を収めると、可愛らしくペコリお辞儀をする。
キリっとした見た目と違って可愛らしい性格をしているのだろう。
「私はディルムッド王国、フィリアーナ騎士団所属、フィン=カラミティと申します」
「俺はコタニテ・・・いや、テツヤ=コタニ。テツヤって呼んでくれ」
姓名の順で自己紹介をしようとしたが、相手がファースト、ラストネームで自己紹介したので、ここはそんな国なのだろうと、相手に合わせて言い直した。
それと同時に挨拶がてら右手を差し出し握手を求めてみたが、首を傾げられてしまった。
どうやら握手で挨拶という習慣は無い様だ。
(・・・めっちゃ恥!!)
出しっぱなしは恥ずかしいので、ニギニギと手を動かし、さも意味有りげな感じを出しつつ、早々に手を引っ込めた。
――やっぱり恥ずかしかった。
「本当に助けて貰って助かりました。・・・随分変わった黒兜を被っていますが、人間族ですよね?」
強化外骨格が余程珍しいのか、訝しげにフィンは哲哉の顔をマジマジと見ていた。
凄い美形が画面に映し出される。
――まさに眼福である。
「あー・・・悪い」
そう言って、哲哉は小声で脱着と声を掛けると、フルフェイス型のマスクがオープンカーの如く襟足へとスライドして、一瞬で開いた。
実は食事を取るためにマスクの脱ぎ方を調べていて分かった事だが、マスクは脱着と装着を発声すると開閉が可能だった。
ちなみに脱着時は左腕に装着されている小型の球体から空中ディスプレイが投影出来、そこで地図やメニューなどが閲覧、操作出来る。
また、翻訳も継続して行われる様、左耳にスーツの襟元から取り外し可能なイヤホンを耳に嵌める。
これもヘルプ機能に書かれており、集音マイクの役割も果たす様だ。
「え? えっ?!」
フィンはかなり驚いた様子で、何が起きたのかと詰め寄ろうとしていたが、哲哉が気にするなと適当に誤魔化したため、はぁと呟いた後、言及することは無かった。
「このまま何かお礼をしたいのですが、ちょっとお時間頂けますか?」
「いや、お礼はいいんだけど、どうかした・・・ね・・・」
どうかしたのかと言いかけて察した。
フィンは苦笑いを浮かべながら、五つの遺体に駆け寄って行く。
荷馬車に載せるのだろう。
「・・・手伝おう」
「あ、ありがとうございます!」
ニ人して遺体を荷馬車へと運び、それぞれ視えない様に布を掛けた。
運び終えて、フィンは難しそうな顔をしながら哲哉に尋ねた。
「あのっ! 何から何まで手伝って頂いて有難う御座いました。ところでその狼はどうしましょうか。一緒に載せて王都まで行きます?」
「ワーグ?」
「はい、狼の毛皮は衣類のコートによく使われるので需要はありますし、肉も臭みはありますが、よく酒場などに卸されてます。それに魔石も回収しないとあまり高額で買取してもらえませんよ?」
(・・・やっぱり、魔石ってあるんだ。それなら魔道具とかもあるんだろうか)
もし魔道具があるのであれば、手に入れていて損は無いなと哲哉は思っていた。
「じゃあ、頼む」
「分かりました。では、運びましょう」
その言葉と同時に、二人で大型の狼を荷馬車に載せていく。
(ん? よく見たらこの狼、尻尾が二つあるじゃん・・それにこの馬も目が四つ付いてる。馬でいいのか・・・?)
色々と疑問に思いながらも積み込み作業していたが、終わる頃には遺体と死骸の積み重ねで、かなりの積載量になっていた。
フィンはそのまま御者台へ座り、準備をしつつ哲哉に向き直る。
「このまま何も無ければ出発しますが、大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。このまま並走してついて行くわ」
そう言って、哲哉はバイクに跨がり、左ハンドルにあるバイクの始動ボタンを押してバイクのエンジンをスタートさせた。
やっと会話出来た。
キャラまとまって良かった。