第九話 そして俺は食事をした
アイリの案内のもと、大食堂に着いた。
「常にアンナ様とコウラン様は席についております」
どうやら遅れてしまいっていた。俺は頭を下げて謝る。
「まだ目覚めてから一日も立っていないのですから、仕方がありません」
俺は感謝を伝え、アイリが開けてくれた扉の中へ入る。
室内には長いダイニングテーブルと、部屋の隅と中央にはロウソクが置かれており、アイリの言った通り二人は常に席に着いていた。
俺は遅れたことを謝罪し、アイリが引いてくれた椅子に座った。
特に何かを話すこともなく無言のまま待っていると、シェフらしき人がゴンドラに料理を載せて運んできた。
無言のまま3人で夕食を食べている。アイリはアンナ様の後ろで待機しているので食べていない。
恐らくフルコース、なのだろう。順番に料理が運ばれは食べを繰り返す。最後のデザートを食べ終わった時にコウランから声がかかった。
「ユーリ、何か思い出したことはあるのか?」
俺は首を振る。確かに懐かしさや安心感を感じた覚えはあるが、残念ながら記憶を思い出す、ということはなかったはずだ。
それを聞いたコウランは、そうか。と一言だけぼやいた後そのまま退出していった。
コウランが出て行って直ぐに、今度はアンナ様から声がかかる。
「あの後訓練をしたみたいだけど、体は大丈夫なのかしら?」
俺は問題ないと頷いた。特に違和感などは感じない。逆に終わったあとはすっきりした感じだ。
アイリが紅茶のおかわりを入れてくれたので、カップを持ちそのまま一飲みする。アイリが満足げにしているのが印象的だ。
「アイリの淹れた紅茶は、ユーリは大分お気に入りだったのよ」
なるほど、実に美味しい。これはほとんどの人は評価するだろうと思いふけってみる。そういえば起きてからほぼずっと俺の傍にいたけれど、俺のお付だったのか?
俺はアイリに確認を取る。
「残念ながら、非常に残念ながら違います」
アイリが頭を下げながら言う。
そうか、違うのか。少し残念だ。
「もし良ければ別にお付にしてもいいわよ」
横からアンナ様が進めてきたので、俺はそれに助かりますと返事をした。中々不安ではあったのだ。
俺はアンナ様に感謝をしつつ、アイリを見てみる。
なんだかアンナ様を見ながら驚いた顔をしていた。何か驚く事でもあったのだろうか。
「私はメイド長です。私がお付になってしまうと統率などの問題が発生しますが大丈夫でしょうか」
メイド長だったみたいだ。
確かに長が抜けるのはまずいと思う。だがしかし、メイド長というには少し若すぎる気がするが。実は結構いっているのだろうか。そう思っていると一瞬睨みつけるようにアイリがこちらを見た。
先程もそうだが、女性とは何故こうも勘が良いのだろうか。
「ユーリ様、何か言いたい事でも?」
俺はすぐに首を振る。
おぉ怖い怖い。冷や汗が出てきてしまった。
「後任は私があとで決めておくわ。今はうちよりもユーリを優先してちょうだい」
アンナ様はそう言うとそのまま失礼すると言いながら食堂から出て行った。
食堂にはもう俺とアイリしかいない。
「それでは恐れながら、本日よりお付としてお側に居させてもらいます」
アイリが俺に頭を下げながら言う。
俺はこちらこそ、とこっちも頭を下げてお願いした。本当に助かるのだからお礼は言うべきだろう。
アイリも若干嬉しそうに見えるのは間違いではない、はずだ。
「それでは私も仕事に戻らせていただきますので、何かありましたらお部屋のベルでお呼び下さい。こちらの仕事が終わり次第ユーリ様のもとへ戻りますが」
アイリは頭を下げたあと、食べ終わった食器などを片付けつつ厨房の方へ向かっていった。
俺も部屋に戻るとしよう。アイリにお礼を言いつつ退席した。
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