第八話 そして俺は夢を見た
模擬戦が終わり、顔も覚えていない兵士達と挨拶を交わしながら部屋に戻る。
アイリが色々と世話を焼きたがっていたが、俺は遠慮しておいた。今は少し一人になりたかったのだ。
まだ半日も立っていないというのに、酷く疲れた。体が重い、頭も痛い、どうにかなりそうだ。
俺は布団に寝転がる。するとすぐに目蓋が重くなり、次第に…………。
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――――ふと違和感を感じる。
ここは何処だ。俺は布団に寝て、それから……。
俺は周りを見回してみる。真っ白い霧らしきものが漂っている。
――――夢の、中?
にしてはやけに現実的に動ける。一体何なのだろうか。
しばらくその場で立ち惚けていると、後ろから気配を感じた。
俺は後ろを振り向いた。そこには、なんだろうか。女性だと思われる形に霧が集まっていた。
「あ 、 げ い、 そ っ!」
何かを叫んでいるように見えるが、だめだ。全然聞き取ることができない。
それに気づいたらしい霧の女性らしき者は、寂しげな表情をするとそのまま景色と同化してしまった。
一体なんだったのだろうか、俺は少し考えようとした瞬間。
――――っ! 頭がっ!
急に今まで感じたことのない痛みを感じ、そのまま倒れてしまう。
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「 ゥリ様! ユーリ様!!」
なんだか呼ばれている気がする。
俺はおぼろげながらも周りを見回し、声が聞こえた方へ振り向く。
「よかったです、ユーリ様。扉を叩いても反応がなかったので、何かあったのではと思いいけない事ですが中に入ったらすごい汗を掻きながらうなされていたので」
どうやらアイリにすごい心配を掛けてしまったようだ。
俺は問題ないと伝える。実際何を感じていたのか、まったく覚えていないのだ。
「とてもそう見えなかったのですが」
アイリが心許ない表情で心配してくれる。
俺は首を振り、そもそも覚えてないことも伝えた。しかし先ほどまで感じていた頭痛等が消えたので結果良くなったとも伝える。
「そうですか。いえ、しつこく聞いてしまいすみません」
アイリは少し悩んだが、俺の言うことを信じてくれた。いや、信じたというより今は置いておく事にしたように見える。あまり心配をかけないようにしなくては。
俺は何しに来たのか、話を一旦切って聞いてみる。
「あぁそうです。お食事の準備が出来ましたのでお呼びに来た次第です」
アイリは扉へ向かいながら説明する。
俺は了解し、そのままアイリについていく。食堂の場所は覚えていないのだ。
部屋を出てまた長い廊下を歩いていく。まだ数回だが、正直げんなりする長さだ。
「食堂はこの道をまっすぐ歩き、最初の曲がり角を左に行ってすぐ右手の扉になります」
いや、そうは言うがさすがに覚えるのは時間が掛かりそうだ。
俺はふと疑問に思っていたことを聞いてみた。アイリは一体いくつなんだ?
するといきなり背中から冷や汗がで始めた。
――――なんだ、急に悪寒が。
「ユーリ様」
前からやけに低い声が聞こえる。
え、アイリか?
疑問に思っているとアイリが振り向いた。そして思った。俺はパンドラの箱を開けてしまったらしい。
ぶっちゃけ顔を見ることができない。やらかしてしまった。
俺は顔を見ないようにし、謝罪した。
「いきなり何を謝っているのですか?ユーリ様が何を言っているのか私には理解ができませんが」
冷たい空気の中、俺はすごい勢いで頭を下げる。さすがに怖すぎた。
これならまだザックと殺し合いでもしていた方が気が楽だ。そう感じるほどだった。
しばらくアイリは俺を見ていたが、暫くすると冷たい空気が四散した。どうやら治まっていったらしい。
俺はもう大丈夫かと思いアイリを見た。
「次はありません」
気のせいか、一瞬養豚場の豚を見るような目で見られていた気が………
――――気のせいだ。
うん、気のせいだな。俺はもう一度謝罪し、歩き始めていたアイリを追いかけていった
俺はなんとか、本当になんとか許されたようだ。
読んでいただき有難うございます