第六話 そして俺は模擬戦をしてみた
「副隊長が来たぞ!皆、整列!」
「「「はい!」」」
ザザッ!!
兵士達が綺麗に整列している。
すごいな、統率力が高いみたいだ。
「ユーリ、挨拶を頼む」
コウランが呼んでいる。
挨拶か、一体どんなことを話せばいいのやら。
「ユーリ様、とにかく復帰したことは伝えたほうがよろしいかと」
確かに、俺はコウランのもとへ進みでた。
俺は兵士達の前まで行き、今の現状を伝える。
「ユーリの言う通りまだ記憶に障害があるようだ。皆それを踏まえた上での対応を頼む」
コウランがそう締めくくる。
「今日の訓練は以上とする。各自好きにするといい」
コウランはそう言うと俺に声をかけた。
「ユーリ、俺は先に家帰るからお前は交友を深めておくと良い。なに、お前は慕われていたからな。そんなに不安げな顔をするな」
コウランはそのまま出口の方へ歩いてい行く。
「ユーリ副隊長、よろしいでしょうか」
兵士の一人が声をかけてきた。
俺は申し訳なさそうに謝った、誰だかわからないのだ。
「本当に記憶を無くしてしまわれたのですね」
兵士はそう言うと自己紹介をしてくれた。
「私は第一小隊隊長のザックです。そして後ろにいるのが第二小隊隊長のフェインです」
ザックがそう言うと後ろに居た少年程の背丈の男の子が前に出た。
「今紹介されたフェインです。副隊長を受け止められず申し訳ありません」
フェインが頭を下げて謝ってきた。
俺は覚えていないし、謝罪は受け取るが気にしないで欲しいという。
きっと受け取らないと常に気にしてそうに見えたのだ。
「そう言っていただけるとすこしは気が楽になります」
フェインはそう言うと後ろに下がっていった。
「フェインは大分気にしていましたからね。それはそうと副隊長、もしよければ一戦していきませんか?」
ザックが試合をしようと言ってきた。
俺は困惑し、そもそも戦えるかわからないと伝える。
「いえ、大丈夫なはずですよ。確かに最初は体が動かないと思いますし、軽くやるつもりです。ですが技術とは体が覚えているはずです。少しずつ感覚を取り戻していきましょう」
ザックは兵士たちに中央を開けるよう指示を出し始めた。
「ユーリ様、ザック小隊長の言うことも一理あります。少しだけやってみてはいかがでしょうか」
アイリス納得したような顔で言ってきた。
仕方ない、腹をくくるとしよう。
しかし俺はどんな武器を使っていたんだろうか、部屋には色々あった為わからない。
「ユーリ様の思ったことが正しいですよ、ユーリ様は様々な武器を使っておりました。常に同じ武器が戦場にある事はないとおっしゃっていましたよ」
なるほど。
俺は近くに準備されていた槍を持って、ザックが待っている場所へと向かった。
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