第二話 そして俺は説明を受けた
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――――長い説明をメイドさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら静かに聴いた。
アンナ様の説明はこの様な内容だった。
「ユーリはここで執事兼護衛をしていたが、突如何処かに攫われてしまった」
「ユーリは隣国であるメギストリアの勇者召喚により召喚されてしまい、メギストリアによって自我を操られ我国であるアスファルへメギストリアの使徒としてやって来た」
「ユーリは我国の中でも王国騎士団副団長と同等の強さがあった為、ここの領土では取り戻すために苦戦を強いられてしまった」
「アンナ様はこれ以上戦うと多くの損失を出すとし、ユーリに強制的に奴属させると言われる首輪を取り付けた」
「ユーリを治療すべく、治癒空間で休ませていた」
ということだった。中々どうして、自分の事ながら馬鹿をやったみたいだ。
そうなると俺は元々ここの騎士兼執事であり、運悪くその勇者召喚とやらで操られ戦を起こした。
「そうなります」
メイドさんが答える。そしてアンナ様が悲しそうな表情で俺へ振り向く。
「もちろん貴方が気に病むことはないわ、今回の件はどうしようもない事だったもの」
アンナ様が悔やんだ表情で言う。
確かに俺には記憶がないし、領主様に対して何か思うことはないはずのだが……。
罪悪感がひどい。
「とにかく、今は貴方に今の現状を知って欲しかったの。貴方は私達の家族、戻ってきてくれただけで私は嬉しいのよ」
領主様が目を潤わせながら俺に伝えてくれる。俺はとても大事にされていたみたいだ。
「アンナ様、私たち、ですよ?私も凄く嬉しいのですから」
メイドさんもそう俺に言うと、後ろから抱きしめられた。暖かさと柔らかさで安心してしまう俺がいる。俺は一体どうすれば良いのか解らなくなってしまったので、一つ疑問に思っていたことを俯きがちに質問してみる。
先ほど案内してくれた男は何者なんだと。
「あれは貴方の兄、コウランよ」
兄だったのか、そんな風には全く見えなかった。
「コウラン様は凄く心配しておられました、ユーリ様が倒れ癒されている間ずっと呪詛の様にメギストリアに対して文句不満を言っておりました」
俺に対してすごい素っ気なさそうに見えたんだが、どうやら違ったようだ。
「目を覚ましてすぐに呼び出してしまってごめんなさいね。」
気にしないで下さいと言う。俺は何もわからない状態だ。
今の現状を知り得たのは大事だし、貴女方が俺の家族ということもわかりましたし。
俺は頭を下げてお礼を言った。記憶が無いはずなのに何故だろう、嬉しさが込み上げてくる。
「そんな、ユーリ様が謝ることなど無いのです!」
「そうね、とにかく!貴方は自室でゆっくり休みなさい。覚えてないでしょうしアイリに案内させるわ」
アイリとは誰だろうか、恐らくこのメイドさんの事だとは思うが。メイドさんの方へ振り向いて見る
「私の事です、やはり覚えてはいなかったのですね」
メイドさんが悲しそうに俯いてしまった。
俺はすぐに謝罪した、さすがに罪悪感で俺まで泣きたくなってしまった。
読んでいただき有難うございます